平成27年度高崎市予算と高崎の都市づくり
産業経済活動や企業の支援に重点

高崎の新しいステージに大きな弾み

 高崎市の大型プロジェクトとなる新体育館と高崎文化芸術センターの建設、高崎スマートIC産業団地の造成が着実に進んでいる。これまでを高崎を大きく発展させるための構想段階、準備段階とするならば、平成27年度は高崎の都市構想を実現する実施段階へ本格的に突入する年度と言えそうだ。

「商工たかさき」 2015/4号より

■高崎の企業の活性化と新ビジネス創出めざす商工予算

●地元企業の経済活動が高崎の基盤

 平成27年度高崎市予算の総額は2,640億円で、前年度に比べ105億円(4.1%)増、一般会計は1,590億6千万円で前年度比2.6%増となった。
 高崎の大型プロジェクトが脚光を浴びる中で、平成27年度予算について富岡賢治市長は次のように説明した。
 「地元企業を中心とした経済活動を活発化させ、雇用を確保することで高崎市の財政基盤強化を図り、福祉・教育・子育て支援を充実させていく。平成27年度は高崎市独自のビジネス活性化策を実施しながら、市民福祉の向上にさらに重点を置いた予算編成となった」
 富岡市長は、「都市間競争に対応するため本市の持つ交通拠点性を生かした成長戦略」、「本市の企業が全国や世界を相手にした企業活動ができるようにしていく」、「新しいビジネスや産業をつくりだし様々な業務が集積し雇用を生み出し、多くの人々が集まる都市づくりを進める」を本年度の産業振興の柱としている。
 一つひとつの施策が効果を広げるよう、教育、福祉、文化などと産業振興、都市の活性化を複合的に結びつけている。

■多彩な施策が都市力の増大につながる予算

●好評の助成金制度の継続と高崎ブランドの対外展開に新機軸 

外国人観光客用観光案内板システム 中央銀座アーケードの再整備(イメージ図)

 商工施策では、地元中小企業の支援、企業誘致やビジネス活性化に重点が置かれており、多くの市民、商店が利用している「まちなか商店リニューアル助成」、「住環境改善助成」を継続する。
 新規事業では、大雪で崩落した中央銀座アーケードを昭和ムードあふれる横丁に再整備する事業に着手し、本年度は設計等を行う。首都圏におけるシティプロモーションと企業の海外展開支援、観光施策では新機軸が打ち出され、ビジネスへの波及効果と交流人口の増大をめざした取り組みが展開される。
 外国人観光客の誘客を促進するため、設置済みの観光案内板システムに加え外国人観光客から要望の高い公衆無線LANを高崎駅周辺に構築する。高崎を訪れた人が手軽に情報収集できる環境を整え利便性の高い観光都市づくりを進める。

■市民の安心安全に直結した公共事業

●市内業者への発注で地域経済を活性化 

 数年前まで全国水準よりも遅れていた学校施設の耐震化を、富岡市長は緊急な重点事業として優先させて一気に進め、長期を要すると考えられていた市内の学校耐震化率100%が、平成27年度に達成できる見込みとなった。学校耐震化は、子どもたちの生命に関わる課題であるとともに災害時には学校が避難所となることから、市民の安心安全に直結した事業となっている。本年度は小学校13校、中学校6校の校舎耐震補強工事、体育館照明やバスケットゴールの落下防止対策工事などを予定し24億円(前年度予算額4億円)を計上した。
 富岡市長は「市内企業の技術レベルは高い」とし、市の公共工事は全て市内業者に発注し、安定した企業経営を図ってもらう考え方を徹底している。市長によれば就任からこれまで市が発注した約1,300件の公共工事のうち、市外に発注したのは極めて特化した3件だけという。また、高崎市は公共工事の表彰制度を見直して平成27年度に新たな表彰制度を創設。建設技術者の意欲向上や建設業の社会的評価を高め産業発展につなげていく。

●市民待望の新斎場の建設 平成28年4月にオープン予定 

新斎場(外観イメージ)

 高崎市が平成22年度から進めてきた新斎場建設工事が平成27年度に完了し、平成28年4月から供用開始になる予定だ。現在の斎場は昭和53年に建設され、30年以上が経過していることに加えバリアフリーや会葬者の動線など施設の利用面でも課題も抱えている。
 本体工事は、平成27年12月までに全棟が完成し火葬炉の試運転も開始される。植栽や駐車場の整備を行い平成28年4月に開館を予定している。
 施設概要は、式場が大式場(約200人規模)、小式場(約100人規模)、告別小式場(約10人規模)。親族控室、通夜室を配置し、簡易の宿泊が可能。火葬炉は12基で、高度な排ガス対策と炉の内部が直接見えない台車式火葬炉。待合室は12室、キッズルーム、赤ちゃんルーム、ラウンジなどを設置し最後のお別れの場として親族・会葬者が落ち着いて過ごせるように配慮した施設づくりとなっている。

●高崎文化芸術センターの建設に着手 

高崎文化芸術センター(外観イメージ)

 高崎文化芸術センター(仮称)の建設計画では、平成27年度は実施設計を行う。用地となる栄町駐車場は3月末で閉鎖され、本年度は駐車場の解体費、文化財発掘経費などが盛り込まれた。新体育館は平成28年度中の完成に向け、建設工事を進め、両施設の文化事業、国際大会の企画、誘致活動を継続する。
 高崎駅西口は駅エスカレーターを改修し、平成28年開業予定のイオンモール高崎駅前(仮称)に接続するペデストリアンデッキを整備する。また、高崎駅東口のペデストリアンデッキも延伸し高崎文化芸術センターに接続する計画となっている。高崎文化芸術センターに隣接する商業ゾーンについても協議が進められる。高崎文化芸術センターに伴う駐車場確保については、市長はセンター周辺に分散させる考えで現在、協議を行っていると見られ、「相手のあることなので具体的に固めてから発表したい」と含みを持った発言にとどめている。

■高崎スマートIC産業団地の整備が本格始動

●2年後のオープンをめざして 国内最大級の物産センターを整備

 高崎スマートIC産業団地は、平成26年度に進出を希望する企業のエントリー募集を行い、高崎市は34社の応募を受付した。今後、造成、分譲に向け事業を進めていく。
 本年度はスマートIC周辺整備が大きく動き始めそうだ。東京に近い立地を生かし、首都圏防災に貢献できる防災バックアップセンターをスマートIC周辺に設置する計画で、本年度に準備委員会が組織される。高崎は食品工業が多いことから、各社の在庫を首都圏災害の備蓄として活用していく。
 スマートICの立地を生かした集客施設として農産物・海産物の販売拠点整備を計画し、高崎市は夏ごろまでをメドに事業者を公募する考えだ。2年程度で整備し国内最大級の物産センターをオープンさせていく計画だ。

●新しい観光集客事業やまちなかイベントの展開強化 

昨年の高崎光のページェント

 高崎市の観光資源を掘り起こし集客力と回遊性を高める事業として、中山道を散策する観光客の休憩と情報提供を図る「倉賀野古商家おもてなし館」が開館となる。同館はなまこ壁が歴史を感じさせる建物で、地域住民によって施設運営され中山道倉賀野宿の魅力を発信する。
 昨年、高崎駅西口通りを中心に開催された「高崎光のページェント」は、エリアを拡大し、お堀端から柳川町入口あたりまで延伸される。
 新規イベントでは、まちなかに全天候型の室内遊び場を設置し、たくさんの子どもたちに楽しい時間と空間を提供する「たかさきこどもまつり」を9月頃に予定している他に、全国レベルの大規模な音楽オーディション「全国アマチュアミュージシャンフェスティバル」が計画されている。

●プレミアム付商品券で個人消費を喚起

 個人消費を喚起し高崎市の商業を活性化させるプレミアム付商品券が、平成27年度の目玉事業の一つとして注目される。高崎市は販売方法などを4月1日に発表し、市民への周知を図った。
 高崎市のプレミアム付商品券は500円券26枚綴り13,000円分を10,000円で販売する。プレミアム率30%、発行数は10万セット、総額13億円となる。
 高崎市は、市内全ての店舗・飲食店でこの商品券を使えるようにしたいと考えており、参加店舗を募集している。
 一般的に、こうした商品券は大型店で利用されるケースが多いため、大型店と一般商店で使える商品券を分けて販売する自治体もあるが、高崎市は分けずに一本化した。消費者の立場からすると大型店、一般商店の区別なくどちらでも使える商品券が便利で消費者の利便性を重視した。
 高崎市全体の小売販売額は年間3,769億円(平成24年経済センサス)で、このプレミアム付商品券の13億円によって、約0.3%の消費増を見込める。プレミアム付商品券が個人消費を喚起し発行金額の13億円以上の効果を生み出せるかも注目されるところだ。
 こうしたプレミアム付商品券の効果として、平成22年に11億円を発行した佐世保市の例では、スーパーを含む飲食料品と百貨店・総合スーパーで前年比約15%、家電で約3%の売り上げ増となった。
 このプレミアム付商品券は、国が景気刺激策として創設した「地域住民生活等緊急支援のための交付金」を活用するもので、平成26年度補正予算で措置された。13億円のうちプレミアム分となる3億円はこの交付金で充当する。



■■■平成27年度の主な商工関連事業■■■

■好評の地元企業支援を継続

■事業所税の助成金

 中小企業の経営基盤安定化を図るため、経営状況に応じて事業所税の納付額に対する助成を行う。(8億4千万円)

■まちなか商店リニューアル助成金

 市内の商店の魅力を高め、集客力の向上を図るため店舗のリニューアル費用の一部を助成する。補助率1/2、補助上限額100万円。(3億5千万円)

■住環境改善助成金 

 居住環境の改善と市民生活の向上、あわせて市内中小企業の支援と市民経済の活性化を図るため、対象となる住宅の改修、修繕、模様替え等の工事費の一部を助成する。(1億円)

■事業者用の太陽光発電設備導入支援

 市内事業所に太陽光発電設備を導入しようとする事業者に対し、経費の一部を助成する。対象設備=最大出力合計値10KW以上の太陽光発電設備。対象経費=対象設備を構成する機器購入費(対象設備に係る配線器具等購入費や取付け費。対象設備の設置工事に係る経費)。補助率1/3、補助上限額500万円。(1億円)

■ビジネス誘致・情報発信施策の推進

■渋谷でシティプロモーション

 都内のイベント会場にて、高崎市の産業、文化、観光等を広く発信することにより本市の知名度やブランドカを向上させビジネス誘致につなげていく。本年度は渋谷ヒカリエで9月中旬に開催予定。(3,000万円)。あわせて「山田かまち企画展」を行い高崎の文化資産を全国に発信する。(500万円)

■企業誘致で手厚い奨励金を継続

 市内への企業誘致の促進や、市内企業の定着を推進するため、各種奨励金を交付する。ビジネス立地奨励金を、ビジネス立地重点促進区域である高崎操車場跡地に立地した企業に対し奨励金を交付する。産業立地振興奨励金を、市内全域(ビジネス立地奨励金の対象区域を除く)を対象に建替えや増築などを行う企業に対し奨励金を交付する。(5億円)

■新たなビジネス拠点スマー卜IC周辺を整備

 スマートIC周辺地域の橋りょうを整備する。(3億2,887万円)

■東欧で高崎ものづくり海外フェア

インド国際産業&技術フェア

 海外において本市の産業を紹介する展示会や交流セミナーを開催し、高い技術を持つ高崎のものづくりPRやビジネスを通じた交流を図るなど、市内のものづくり事業者を支援する。チェコ、ポーランドで開催予定。(5,000万円)
 姉妹都市であるチェコ共和国プルゼニ市で開催される文化イベント「欧州文化首都」に日本文化を紹介する講師を派遣する。(200万円)

■高崎駅東西で都市集客施設の基盤整備

■高崎駅西ロペデストリアンデッキ整備

 平成28年度開業予定のイオンモール高崎駅前(仮称)ヘの接続を見据え、高崎駅西ロペデストリアンデッキ(歩行者回廊)の拡充整備を図る。(1億3,616万円)

■国際大会や大規模イベントの誘致推進

 高崎文化芸術センター(仮称)・新体育館で開催される国際大会、イベント等の誘致を推進する。(1,800万円)

■高崎文化芸術センター(仮称)建設

 上信越と首都圏を結ぶ中心都市として、また「音楽のある街高崎」の新しいシンボルとして、多様なジャンルの音楽や舞台芸術を「鑑賞・創造・情報発信」する拠点となる高崎文化芸術センターを整備する。(6億7,679万円)

■新体育館建設

 市民スポーツの振興と中心市街地の回遊性の向上による賑わい創出を図るため、全国規模のスポーツ大会。国際試合の誘致等、集客施設としての機能を持つ新体育館を整備する。(44億558万円)

■「高崎育ち」の6次化と首都圏PR

■農業者の新ビジネスを支援 (地方創生先行型交付金対象事業)

 新品種、新商品の開発、市内産農畜産物「高崎そだち」の普及宣伝活動、6次産業化、商工業者との連携など、農業分野で挑戦する市民を総合的に支援する。(1億円)

■「高崎育ち」を首都圏で強化

 安心・安全な「高崎そだち」の素晴らしさを積極的にアピールし、地元消費の促進、首都圏など他地域での消費拡大を更に推進する、戦略的な広報宣伝活動を引き続き実施する。本年度は首都圏における広報活動を強化し、「高崎そだち」のPRと本市への誘客活動を図っていく。(5,930万円)

■首都圏協力店に奨励金

 首都圏での「高崎そだち」の消費拡大を推進するため、首都圏の小売業者が「高崎そだち」を販売した際の売上高の5%を、奨励金として交付する。上限額:100万円/1団体。(1,000万円)

■まちなかの賑わいづくりと活性化

■高崎光のページェントのエリア拡大

 開催範囲を拡大し、回遊性を持たせるとともに、まちなかのさらなる活性化につなげる。(3,100万円)

■全国からアマチュアミュージシャン

 全国レベルで新人アマチュアミュージシャンを発掘するため開催される大規模なオーディションに補助を行い若者の集客を向上させる。(3,000万円)

■子育て世代をまちなか回遊

 乳幼児を抱える保護者の子育てを支援するため、授乳やおむつ交換等ができる施設や店舗等を「赤ちゃんの駅」として登録し、子育て応援サイト「ちゃいたか」等で周知する。(40万円)

■高崎の魅力を内外に発信し集客力を増大

■倉賀野古商家を観光拠点

 中山道沿いにあるナマコ壁をみせる明治期の蔵造り商家を復活。中山道を散策する観光客の休憩と情報提供を図ることを目的に「倉賀野古商家おもてなし館(仮称)」を開館する。(634万円)

■外国人客の利便性で駅周辺に公衆無線LAN  (地方創生先行型交付金対象事業)

 高崎駅周辺に公衆無線LANを構築することにより、気軽に情報を収集できる環境を整え、本市での外国人観光客等の利便性を向上。(900万円)

■高崎の観光情報を海外発信

 高崎観光大使から発信される情報の中から海外向けの有益な情報を抽出し、本市の魅力を海外へ発信する。(300万円)

■町内の旧跡を新たな名所に

 各町内会に点在する様々な名所、旧跡などに住民目線のわかりやすい案内板を設置し、観光資源の再発見と地域振興を図る。(1,000万円)

■中央銀座アーケードを再整備

 平成26年2月の大雪により崩落した中央銀座アーケードで新たな賑わいを創出するために再整備を行う。本年度は設計及び地質調査を行う。(2,390万円)

■高崎の食ブランド「開運たかさき食堂」

 県外で開催される食のイベント等に出展、本市の魅力や特色を積極的にPRし、高崎ブランドづくりを引き続き推進する。主な事業は「ふるさと祭り東京2016」、高崎ブランドPRイベント出展者支援、開運たかさき食堂イベント開催。(3,200万円)

■上野三碑を世界記憶遺産に

 上野三碑の世界記憶遺産登録実現に向けて知名度の向上を図るPR活動等。(700万円)

■カッパピア跡地の公園整備

 市民が身近に自然に触れ合える重要な環境資源として、カッパピア跡地を中心に保全と活用整備を図る。(5億8,880万円)

■安心・安全な市民生活を守る地域社会づくり

■夜間の医薬品販売体制の整備
(地方創生先行型交付金対象事業)

 市内で24時間365日の医薬品販売体制を整備するため、夜間の薬局の開設及び運営を委託する。(1,800万円)

■防犯カメラ等設置

 全市的な犯罪抑止とごみの適正排出を目的として地域からの要望に応じ、小学校区ごとに防犯カメラ(上限5台)と、ごみステーション見守リカメラを設置する。町内会防犯カメラ290台。ごみステーション見守リカメラ68台分。(1,757万円)

■空き家緊急総合対策を継続

 年々増加する市内の空き家への総合的な対策として老朽化した空き家の解体費助成や、利用可能な空き家を改修し、高齢者や子育て世代など地域住民が気軽に利用できるサロンとして活用する場合の改修費や家賃への助成などを引続き実施する。(1億円)



(商工たかさき・平成27年4月号)