高崎で多角展開する木本製菓
旅がらす・錦山荘
洋菓子メーカー「ドンレミー」や立体駐車場「ココパルク800」を系列に持つ木本製菓株式会社(本社:東京都足立区)は、2年前に高崎駅東口に新しいコンセプトのビジネスホテル「ココ・グラン高崎」をオープンさせた。
木本製菓は東京に本社を置きながら、高崎での事業に特に力を入れている。今年5月に観音山の「錦山荘」の経営権を取得、群馬銘菓「旅がらす」でおなじみの株式会社旅がらす本舗清月堂(本社:前橋市)の経営を9月にドンレミーが継承し、新たな事業展開を進めている。
「商工たかさき」 2014/11号より
■■和と洋で多面展開をねらう■■
●旅がらすと錦山荘で相乗効果
㈱ドンレミー 専務取締役
㈱旅がらす本舗清月堂
代表取締役 糸井 義一さん
木本製菓は、かりんとうや飴菓子の製造業として戦後の東京の下町で創業した和菓子店。洋菓子のドンレミーは別法人として昭和59年に設立され、榛名工場(高崎市保渡田町)が平成12年に操業開始した。平成25年5月には岡山工場を稼働させている。
木本製菓の現在の事業は、ホテル経営・不動産賃貸・駐車場経営となっており、昭和63年にホテル事業部を設けて、高崎近郊にホテルを開業したことで、この地域での事業展開が始まった。近年は本格的なホテル事業に乗り出し、平成20年にホテルココ・グラン北千住、22年に同・上野不忍、24年に同・高崎を開業させている。
ココ・グランの各ホテルと岡山工場にはドンレミーのアウトレットショップが併設され人気店となっている。
ドンレミー専務で清月堂の代表取締役に就いた糸井義一社長と、木本製菓ホテル事業部の木本貴丸専務は「和と洋の両面で事業を広げていくのが目的」と、今回の清月堂、錦山荘の取得について説明している。洋菓子のドンレミーと和菓子の清月堂、ホテルのココ・グランと温泉旅館の錦山荘、それぞれ和洋を組み合わせた新展開を狙っている。また清月堂、錦山荘ともに経営的な立て直しを必要とする側面もあり、木本製菓グループの戦略が注目されるところだ。
■■「旅がらす」を買えるのは群馬だけ■■
●営業を強化し店舗縮小をカバー
清月堂は昭和2年創業の前橋市の老舗和菓子店で、昭和33年に発売した「旅がらす」は大ヒットし、群馬のお土産の代表格となった。幅広い世代に喜ばれるお菓子で、群馬県民であれば食べたことが無い人はいないだろう。
清月堂は県内にテナントを含め30店舗を展開しているが、時代とともに売り上げが鈍り、ドンレミーの100%子会社となった。新社長にはドンレミーの糸井専務が就任し、工場・社員をそのまま引き継いだ。直売店の多くは賃貸物件であったため、高崎小鳥店を残して他は閉鎖し、経営負担を軽減するとともに、卸部門を強化していく。スーパー・コンビニエンスストアなど県内での販売チャネルを拡大して身近で買える環境を整え、店舗の閉鎖をカバーしていく。
●群馬銘菓「旅がらす」の復権めざす
発売から50年を超え、県民に浸透した「旅がらす」のブランド力は大きい。糸井社長は「旅がらす」を群馬の銘菓・お土産としてブランドの再スタートをはかっていく考えだ。
独自性を打ち出し「群馬でなければ買えないお菓子」として、県外での販売は行わない。贈答用の箱入りだけでなく、簡易包装の5枚入り、3枚入りなども投入し、茶の間での需要増も新たな営業戦略だ。その他の清月堂の和菓子については、ドンレミーの流通ルートで販路を全国に拡大し、グループとして洋菓子、和菓子の二刀流で展開していきたいという。
群馬で生まれ育った糸井社長は「旅がらす」ブランドへの思いも強い。「清月堂は根がしっかりした群馬の老舗。幹をしっかりと太くしていきたい」と意欲を見せる。糸井社長は警察出身者で高崎警察署長・刑事部長を歴任し、在職中に在メキシコ日本国大使館(二等書記官)に勤務経験を持つ個性派だ。ドンレミーの木本髙一朗社長と旧知であったことから県警退職後、同社専務に就き、岡山新工場の建設・稼働を指揮した。経営は現場主義・お客様感覚が第一で、特に女性・主婦の目線を重視しているそうだ。
■■高崎の奥座敷「錦山荘」■■
●外国人集客も狙う「まちなかの秘湯」
木本製菓㈱専務 木本貴丸さん
観音山の木々に囲まれ、ひっそりと佇む錦山荘の築百年の風格は「高崎にいながら違った世界にいるような趣を堪能できる」と木本専務。眼下に広がる高崎の夜景も美しい。
都内のホテルでは外国人客が増加しており、趣のある観光先などを紹介してほしいと要望されることが多いという。「高崎の錦山荘は東京にも近く、日本文化の和風建築と温泉を楽しんでもらうにはぴったりだ」と語る。現在も県外客の利用は多く、錦山荘の魅力と木本製菓グループのネットワークで県外客、外国人客を更に高崎に引きつけたいと考えている。
●食やアメニティを強化し魅力アップ
錦山荘の名物料理は群馬の味「おっきりこみ」で、木本専務は郷土料理のおいしさを大切にしていきたいと考えている。また、高崎や群馬の地場産食材を取り入れたり、「パスタのまち高崎」を生かしたメニューづくりも進めている。錦山荘周囲の竹林をライトアップして情緒たっぷりの雰囲気を醸し出し、季節には竹林のタケノコの刺身を味わってもらう。
ココ・グランのノウハウを生かしてアメニティも見直し、施設のバリアフリー化も進めていきたい考えだ。
●観音山一帯の魅力アップも
築百年の建物は補修を必要とする箇所もあり、木本専務は「営業を止めずに3年から5年かけて進めていきたい」と考えている。その中で浮上しているのが温泉の湯量の強化だ。「温泉宿として魅力的な風呂づくりをしたい。温泉掘削も検討している」と計画着手への気持ちが強い。
また、隣接する洞窟観音から山頂の白衣大観音まで含めた観音山周遊観光の一角として貢献できるよう、地域との連携を深めていきたいと考えている。市内企業の宴会にも便利であり、市民に親しんでもらえる施設づくりを進めていく。
木本専務は「初めての温泉旅館で試行錯誤もあるが、人とのつながりの大切さを高崎で実感している。創業の地は東京だが、高崎は私たち木本の原点だと考えている」と話している。
木本製菓グループの高崎、群馬への思い入れは強く、地域企業としての存在感も高めている。旅がらす、錦山荘ともに地域の魅力としての潜在力が高く、木本製菓グループの経営資源とネットワークを投入した展開が注目される。
●高崎を拠点とする木本製菓グループ
・㈱ココパルク800(本社:東町)
・木本製菓㈱ホテル事業部(本拠地は高崎)
・ ㈱ドンレミー榛名工場
・㈱ドンレミーアウトレット高崎店(第1号店) など
(商工たかさき・平成26年11月号)