「驚き、感動、励みになる」と山田監督が絶賛
(2016年02月15日)
プレ映画祭のゲスト山田洋次監督。聞き手は国立近代美術館フィルムセンターの冨田美香さん。
パネルディスカッション「映写で映画が完成する」
プレ映画祭で下町映画と講演
第30回高崎映画祭のプレ映画祭として14日に、電気館で山田洋次監督をゲストに招いた映画上映会が行われ、大勢の映画ファンが山田監督の映画と講演を堪能した。
この催しは、映画業界でデジタル化が進み、膨大に蓄積されたフィルム映画の上映環境が失われつつあることを考えさせるもの。全国各地域で映画上映に取り組んでいる人たちにより、フィルム映画の情報サイト「Fシネマップ」が開設された記念イベント。
この上映会では、山田監督の2作目で1963年の作品「下町の太陽」が上映され、上映後に登壇した山田監督は「50年前に返ったような気がします」と、感慨深く思いを語った。
山田監督は、この「下町の太陽」から「男はつらいよ」が誕生するまでのエピソードや、最新作の「家族はつらいよ」につながる映画づくりについて語るとともに、フィルムで映画を作り続ける意義について「高価なフィルムをカメラに装てんし、ヨーイ、ガチンコで一秒いくらのフィルムが回り出す。何十年もフィルムで映画を作ってきたので、変えられない。ライティングや露出など、一コマ一コマを撮影する手順があり、百何十年をかけて築いた現場の技術が無くなってしまうことは耐えられない」などと話した。またフィルムで映画を上映することの魅力についても述べ、「論理的には説明できない」とデジタル上映との感性的な違いを強調した。
昭和の風情を残した電気館での上映会に、山田監督は「文化財のような映画館で上映され、驚き、感動し、うらやましい。こういうことが僕たちにとって、どんなに励みになることか」と、今回の上映会を絶賛した。
午後にはフィルム映画と映写活動をテーマにしたシンポジウムが行われ、映画の多様性や映画を鑑賞する場づくりについて、東京国立近代美術館フィルムセンターのとちぎあきらさん、神田麻美さん、アテネ・フランセ文化センター製作室の堀三郎さん、各地で映画上映を行う鈴木直己さんが、高崎映画祭プロデューサーの志尾睦子さんの司会で話し合った。
映画の保存やフィルム映写機の保守・上映技術に関する課題について意見交換した。フィルムセンターが所蔵する35ミリフィルムの「高崎での話」も上映された。また、現在のデジタル映画は、ハードディスクやDVD、ブルーレイによってデータで提供されるが、記録媒体の寿命が30年と言われ、将来にわたってデジタル映画を保存する仕組みが映画業界で確立されていないことも警鐘された。
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