群響コンサートレビュー(2)
(2020年03月3日)
第554回定期演奏会
2020年1月25日(日)午後3時
高崎芸術劇場大劇場
ブラームス ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
ブラームス 交響曲 第2番 ニ長調 作品73
指揮/飯守泰次郎、ヴァイオリン/ 竹澤恭子
(2020年1月24日(土)第48回東毛定期演奏会・太田市民会館で同内容の公演)
群馬交響楽団の元評議員の堤志行さん、群響定期会員のAさん、Tさん、Fさんに群響コンサート後に感想を語り合ってもらった。
客席のお互いの気持ちが伝わるホール
F:今日の定演はブラームスのヴァイオリン協奏曲と交響曲第2番の組み合わせでしたが、ブラームスのヴァイオリン協奏曲は、群響はここ数年やっていないですよね。
堤:ちゃんと弾けるヴァイオリニストがあまりいないと思います。
F:交響曲第2番も余りやっていないですよね。両方とも楽しみでした。
T:私も竹澤恭子さんはデビューした頃から聞いています。ふくよかで艶やかな音ですよね。深みがあって遠くまで通る音で、今日も後ろの方の席でしたが、細かい音まで艶やかでした。ホールの響きもいいのでしょう。ストラディヴァリウスの響きもすばらしい。
F:今日の演奏は気合が入っていたように思います。
A:カデンツア(即興的独奏)も長かったのではないでしょうか。旋律がどんどん出てきて本人も気持ちいいのでしょうね。観客が自分の音楽をわかってくれているということが伝わってきた。演奏者と観客、ホールが音楽を二乗、三乗していく感じです。
堤:竹澤さんはヴァイオリニストとして円熟の境地という感じですね。演奏の質が高まる、熟すというのでしょうか。アンコール曲の「ラルゴ(バッハ)」も気持ちよく弾いていたように見えました。
A:ホルンもいい音でした。群響のメンバーも芸術劇場に慣れてきて、音の出し方も良くなってきているのかもしれません。ホルンは音が後ろに向かっているので、反射する響きがいい。
T:木管も良かった。
A:開演してオーケストラ、指揮者が舞台に入ってきて拍手を受ける時に、観客の注目度っていうのか、聞きたいという気持ちを感じているんじゃないかと思います。指揮者って、たぶん、一番敏感に感じ取っていると思います。
1月に上田で「のだめカンタービレ」をテーマにした群響のコンサートがありました。客層が違って、若い女性が圧倒的に多い。音楽に対する興味も高くて、聞きたいと言う気持ちが出ている。オーケストラもそれがわかるんです。後ろにスクリーンがあって映像が映ったり、演奏しているパートがわかったり、のだめの音大と同じような感覚になってきます。「ベートーヴェンって交響曲を何曲書いたか、みなさんご存知ですか」と聞かれるとほとんどが知らない。だけど、のだめの漫画は知っていて、使われた曲を聞きたいという気持ちはすごい。とても良い企画です。全国でやっていて、高崎でもやってほしい。
ホールで生で聴くからおもしろい
堤:ブラームスの交響曲第2番は、私が中学1年の時にピエール・モントゥー・ロンドン交響楽団による演奏を大阪まで行って聞いて衝撃を受けた思い出深い曲です。久しぶりに群響で聴きました。飯守さんの指揮にオーケストラも応えていて、気持ちが伝わってきました。群響のブラームスでは最高のできばえでした。
T:今日のブラームスはお客さんの期待も大きかったと思います。
F:今日は指揮者の飯守さんの自前のスコアを使ったそうですね。スコアはかなり手が入っているそうです。ホルンはブレスが多いので演奏しやすいそうです。ブレスまではわかりませんでしたが。
堤:フルートやファゴット、クラリネットのバランスも良かったです。
A:このホールになって安心して聞けるようになりました。
T: 実は、今日のブラームスは、私のイメージとはちょっと違っていたんです。海外の指揮者はもっとぐいんと掘り下げるような音を求めることもあります。私はもっと、えぐるような感じでもよかった。
F:飯守さんは以前、どんな音を出したいかを考えてほしいと群響に言っていたそうです。音は合っていなくてはならいないのですが、合わせることよりもどんな音なのかを優先した。
堤:いわゆる「縦がそろっている」かと言えば、そうだったとは言えないけれど、群響の音楽性はまちがいなく上がっていると実感できた。演奏力が上がってきて、以前だったら崩壊していたんじゃないかと思うことが、今は聞かせてくれるようになっている。
A:前は空中分解していたことが成立している。一番奏者の演奏力や音楽への理解力を感じます。
F:生で聴くから良いんです。CDで聴いちゃだめです。この臨場感がいいいんです。
堤:例えばチェロの正規楽団員はプログラムには4人ですが、今日のステージは8人いました。この4人は「トラ(エキストラ)」と呼ばれていますが、この4人の名前もプログラムに入れるべきだと思います。
A:演奏者もプライドを持って演奏しているのですから、ぜひ載せるべきでしょうね。
堤:来月のN響によるパーヴォのラフマニノフで皆さん、またお会いしましょう。
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