第33回高崎映画祭~受賞理由(3)

(2019年01月11日)

『菊とギロチン』
木竜麻生 『鈴木家の嘘』
『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』

最優秀助演女優賞・最優秀助演男優賞・最優秀新進女優賞・最優秀新進男優賞・最優秀新人女優賞

最優秀助演女優賞

韓英恵 『菊とギロチン』

女相撲力士の十勝川を演じる。様々な理由で女相撲の扉を叩きそこにのめり込んでいく力士たちの中でも、どこか冷静に時代と自分を見つめ続ける女性である。遊女であつたという艶やかさも、朝鮮出身ゆえの苦労も、自身の人生として受け止め静かにしたたかに生きる女性像は、物語において屹立した存在として描かれる。立ち位置を見据えた役作りと抑制の効いた演技力が高く評価された。

 

最優秀助演男優賞

東出昌大 『菊とギロチン』

大正時代を駆け抜けた詩人であり無政府主義者の中濱鐵を演じる.世の中を変えようとする血気盛んな青年の姿は、時代に抗い挑むというよりもむしろその変革に触れることを楽しむかのように映る。彼が進む未来が自由で明るいと思わせる説得力がなければ成立しない世界を、見事に底支えしている。

獰猛で、思慮深く、多面性を備えたエネルギッシュなリーダーに誰もが魅了された。

 

最優秀新進女優賞

木竜麻生 『鈴木家の嘘』

鈴木家の長女・富美を演じる。富美は終始戸惑いと小さな怒りがないまぜになった表情でその場にいる。その姿が誠実で美しい。この世にいない兄・浩―をめぐる家族の物語において、兄妹の関係性でしかぶつけられない怒りと悲しみを湛えた富美の役割は大きい。不在者の存在を浮かび上がらせるからだ。

鈴木家のしあわせを肯定する非常に繊細で奥深いキヤラタターを、みずみずしい感性と豊かな表現力で演じあげ、高く評価された。

 

最優秀新進男優賞

寛一郎 『菊とギロチン』

ギロチン社のメンパー・古田大次郎を演じる。理想に燃え、世の中を変えようと弾ける同志たちと走り出すこの青年には、何かを抱え、何かに怯えている影が見え隠れする。繊細ゆえの迷いや優柔不断きは、ギロチン社にとっても大事な良心として映る。それは誠実な人間性が成しうる役得なのかもしれない。

等身大の自分で時代の荒波に飛び込んだ青年の姿は、鮮烈な印象を残した。

 

最優秀新人女優賞

南沙良 『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』

言葉がうまく出てこない吃普症の志乃を演じる。ひとりぼっちの高校生活を変えてくれる友達との出会いは、彼女の生活を一変させる。それは同時に自分と向き合うことでもあり、彼女は自分の足で歩き出そうと懸命にもがく。溢れ出る純真さ、日覚めていく自我のエネルギーは観客を圧倒する。

思春期の揺らぎを煌めかせ、輝きを放つ存在感に称賛の声が集まった.

 

 

蒔田彩珠 『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』

クラスの友人たちから距離を保ちクールにに決めこむ女子高生・加代を演じる。志乃の心を開く彼女は、一方で自分の心をうまく開くことができない不器用さがある。大人の冷静さと子どもの無邪気さの振り幅を大きく持つ加代のキャラクターはともすると散漫になりかねないが、抑制の効いた演技力で演じ上げている。魅力的な人物像をつくりあげたその存在感が高く評価された。

 

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