第33回高崎映画祭~受賞理由(2)

(2019年01月11日)

『鈴木家の嘘』
『生きているだけで、愛。』
『漸、』

最優秀主演女優賞・最優秀主演男優賞

最優秀主演女優賞

原日出子『鈴木家の嘘』

引きこもりの長男がある日突然死んでしまう。その事実を受け止められず、その記憶をなくしてしまう母親・悠子を演じる。物語の中枢を担う非常に重要な役どころである.息子、娘、夫、そして弟から見た悠子の役割と関係性は、それぞれに少しずつ違う。そのリアルさがまた人間としての愛しさを感じさせる。そしてそれぞれの人生を、確かなものとして包み込んだのは、紛れもない慈愛と包容力に満ちた母性であつた.豊かな表現力はもちろんのこと、人間力盗れる存在感に賞賛の声が集まった。

 

最優秀主演女優賞

趣里『生きているだけで、愛。』

自身の感情をコントロール出来ず、鬱状態から過眠に陥っている寧子を演じる。動き出したいけれど体も心も言うことを効かないジレンマに喘ぐ彼女の姿は痛々しいが、一方で全身からほとばしる愛への渇望には生の連めきが宿る。愛されたい、そして自分を愛したい。純真に誠実にそれを叫び続ける凄まじきは観るものの心を提えて離さない。

全身全霊で役と向き合い、孤高な輝きを放つキャラクターに昇華させた演技力と表現力に脱帽である。

 

最優秀主演男優賞

池松壮亮『漸、』

侍の本分を知りながら刀を抜くことにためらいを持つ主人公杢之進を演じる。恐れが怒りヘ、怒りが憎しみへと増幅しついには人の命を奪い精神を崩壊させていくこの物語の本質は、一人の侍に凝縮されていく。己がそれを手にすることで何が起こるかを知っている人間の苦悩は、おびただしい熱量を内側に押し込める。一人の侍の話であるが、現代に通じる普遍的な人物像がそこにあり、その奥深い表現力に唸るより他ない。研ぎ澄まされた感性とその気迫でこそ体現できる世界観であった。

高崎の都市力 最新記事

  • 株式会社環境浄化研究所
  • シネマテークたかさき
  • ラジオ高崎
  • 高崎市
  • 広告掲載募集中