上州座繰り染織家・中野紘子さん
(2018年04月30日)
伝統技術を継承し 独自のモノづくりに挑む
かつて群馬の養蚕農家の女性たちが担った繭から糸を挽く上州座繰り。お湯で煮た繭から引き出した数十本の糸を目的の太さに合わせて座繰り器で巻き取っていく。ゆっくりとハンドルを回し空気を含んだ糸は、機械で生産された糸には無いしなやかな風合いがある。
繭1粒から取れる糸の長さは約1300m。着物一反には3000粒ほどの繭が必要になる。鍋の中の繭は糸を巻き取られて徐々に蛹(さなぎ)の姿が現れる。指先で糸の太さを感じながら髪の毛の1/10ほどの繭糸をホウキに絡ませながら数千メートルの糸を挽いていく。
「生産農家や蚕期によって品質が異なる繭をニーズに合わせた糸にするには高い集中力が必要」と言う中野さん。時代と共に遠い記憶になりかけた上州座繰りの後継者として糸づくりを学び、2003年に工房を開設した。全国の染織工芸家に生糸を提供する傍ら、糸に草木染めを施し、手織りでストールなどの作品を作っている。
草木染の材料を自ら山に採りに行くこともあり、自然に触れる機会も増えた。同じ染料でも、育った環境や染める時季、水質等の違いで染め上がりの色が異なる。「自然からいただく色なので、それも楽しみなところ。どんな色の組み合わせも、しっくり調和します」と草木染の魅力を話す。
昨年、プロダクト『SIHAKU―絲帛』を発表。座繰りから巻き取ったままの綾状に重なる繭糸の繊細さと、草木染の自然な風合いが見事にマッチした見たこともない作品だ。中野さんは伝統技術に独自の感性をプラスした自由なモノづくりを展開する。
canoan(カノアン)
住所:高崎市新町915-2
TEL:0274-37-1687
高崎商工会議所『商工たかさき』たかさき 2018年4月号