第35回高崎映画祭 最優秀作品賞・最優秀監督賞
(2022年01月17日)
偶然と想像 ©2021 NEOPA / fictive
いとみち©2021「いとみち」製作委員会
由宇子の天秤 ©️2020 映画工房春組合同会社
最優秀作品賞
『偶然と想像』濱口竜介監督
◇高崎映画祭受賞歴
第33回(2019年)最優秀監督賞『寝ても覚めても』
◇受賞理由
朗らかな余韻の残る、芳しい作品だ。偶然の出来事が、次の瞬間その人の人生の必然となる。それはなんと輝しい奇跡なのかと思わせる。言葉は人生を肯定し、明日への一歩を踏み出す力となり、登場人物たちの時間を鮮やかに彩っていく。素晴らしく幸福で、美しい作品にただただ、魅了された。ミニマムな体制であれ、空間であれ、それをどこまでも広がる世界の入り口にしてしまうのが映画だと、言わんばかりの豊かさに満ちていた。コロナ禍の中、方法論を模索し生み出されたこの作品は、一筋の光だ。その点も特筆しておきたい。
最優秀監督賞
横浜聡子監督『いとみち』
◇受賞理由
津軽地方に住む少女の成長を、リズミカルに快活に物語っていく。土地の息づかいが伝わってくる繊細さと、伝統と風土が育んできた人の逞しさが伝わってくる人物描写が見事だ。小さなコミュニティから移動距離を伸ばすことで経験値を上げていく十代の少女の瑞々しさ、地に足を付けそのコミュニティを作り上げてきた大人たちの誠実さが胸に響く。日本の地方都市に散らばる継承と進化が、独特の感性と絶妙なバランス感覚で描きこまれており、その演出手腕が高く評価された。
春本雄二郎監督『由宇子の天秤』
◇高崎映画祭受賞歴
第33回(2019年)新進監督グランプリ『かぞくへ』
◇受賞理由
嘘と真は表裏一体だ。その危うさを人の感情の視点からだけではなく、社会構造から切り込み、物事の本質に迫ろうとした力作である。登場人物たちそれぞれが巻き込まれていく社会構造には、現代日本の実態が見て取れる。鋭い洞察力で掘り下げられた社会的背景は、確かな手触りを持って真に迫ってくる。巧妙な脚本と隙のない画面、緻密な構成力に舌を巻く。ジャーナリズムと作家性、そして映画的魅力に満ちた作品世界が高く評価された。
【写真提供】高崎映画祭
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