救急救命士の処置範囲拡大で人命救助率の拡大期待
(2015年6月1日)
高崎市等広域消防局 6月1日より運用開始
「救急救命法施行規則の一部を改正する省令」が昨年1月に公布され、同年4月より救急救命士の行う救命処置として2点の行為が新たに追加可能となった。これは、阪神淡路大震災やJR福知山線脱線事故などで体の一部を挟まれるなどした人が、助け出した直後に症状を悪化させ、死に至る例が相次ぎ、クラッシュシンドロームが指摘されたことを受けて改正に至った経緯がある。
クラッシュシンドロームとは、身体の一部、特に四肢が長時間圧迫されると、筋肉が損傷を受け、組織の一部が壊死し、その後、圧迫された状態から解放されると壊死した筋細胞からカリウムなどが血液中に大量に漏出。それによって様々な症状を引き起こし、心停止から死に至ることもある。
今回の規則の一部改正により、救急救命士は心肺停止前の人に対して、医師の指示の下、①静脈路確保、及び輸液(静脈に点滴をとり、乳酸リンゲル液の投与)と血糖値測定、②低血糖発作へのブドウ糖溶液の投与を行うことが可能となった。それまでは心停止の状態での処置のみ可能だった行為が、心停止前の処置も可能となったことで、より人命救助率が高まることが期待される。
高崎市等広域消防組合では、今年6月1日より3名が認定救命士として運用開始となったため、同日、交通救助現場を想定した連携訓練を行った。訓練は「20代の女性の運転する車が電柱に衝突した単独事故で、運転手の左大腿部がハンドルに挟まれている」場面を想定。発症時間から処置拡大行為実施認定救急救命士により、救出前に静脈路確保及び急速輸液を実施、救出活動を行った。同消防局では、今年更に3名の認定救急救命士が増える予定で今後の活躍が一層期待されている。