石碑之路散歩風景24

吉永哲郎

前回で「石碑之路」の石碑の揮毫者の書、刻された歌の鑑賞をしてきました。季節ごとに歩きますと、同じ歌碑でも印象が違い、発見があります。木々の葉が茂る前や落葉して明るくなった季節に歩くのがよいのではと、私は思います。特に落葉を踏みながら歩くのが私は一番好きです。
 近年、石碑のある里山に、猪や鹿などが姿を見せることがあると聞きますので、歩く際には山路の環境を考え、最低限の服装装備を怠らないようにしたいものです。

石碑之路には万葉集の歌碑が多くありました。万葉歌碑に関しては、高崎市には他に幾つかあります。万葉散歩を少し広げて上信線を利用しての万葉歌碑散歩を紹介しましょう。

最初に馬庭駅前の北側に鎮座する飯玉神社境内の歌碑を訪れます。かなの書家で歌人・国文学者尾上八郎の書で、「たこのねによせつなはへてよすれともあにくやしつしそのかほよきに(万葉巻14)」の歌が刻されています。歌の鑑賞は次回で。

 一般に「多胡の嶺」は吉井町西南の山なみをいい、特に牛伏山(490メートル)と言われていますが、私は土地の人が「多胡美人」と呼称する朝日岳ではないかと考えています。この山は春に女性が籠もる聖なる山で、山麓の東谷渓谷から流れ出た清澄な川原は、聖女の禊ぎの場ではと想像できるからです。そして歌垣で盛り上がった男女の心情表現が、この歌に詠みこまれています。

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