石碑之路 散歩風景1
吉永哲郎
「万葉集」が研究者や専門家のものではなく、日本人の心のよりどころだと、一般の人に語っておられたのは、故・犬養孝先生です。万葉ゆかりの旅をされている途中、東歌に多く詠まれている佐野の地に関心をもたれ、高崎を歩かれる時、ご案内をしたことがありました。その時に「東歌は土地の人の感性が大切なのだよ」と言われ、「だからこの地の東歌の世界を、君がこの地の匂いがするように案内してくれよな」とも言われました。
今回から高崎を中心に上野の万葉東歌の散歩のご案内をしたいと思います。用意していただきたいのは、万葉集のテキスト。各社の文庫本からお好きなものをどうぞ。
高崎自然歩道「石碑之路(いしぶみのみち)」には、多くの万葉歌碑、山上碑・金井沢碑などの文化財があります。上信線山名駅から山名八幡宮が見えますが、大鳥居の下に手島右京卿書の「石碑之路」と刻された大きな石碑があります。まずは散歩の始めはここからということに。
「石碑之路」はこの地に住んでおられた信澤克己さんが万葉東歌に詠まれている「佐野山(佐野丘陵)」を都市開発からなんとか保存したいとの強い思いから、東歌ゆかりの万葉歌碑約30基を設置してできた、万葉人と散策するロマンの路です。歌だけでなく、書の鑑賞を楽しめる路です。
では次回から、万葉人と歩きます。
- [次回:石碑之路 散歩風景2]