万葉花木散歩

8・紅(くれない)(べにばな)

吉永哲郎

 山形の花笠音頭の一節に「逢いにござれと紅花いれてよ 尾花沢から文がきた」という歌詞があります。この「紅花」を万葉人は「くれない」といっていました。中国の呉(くれ)の藍(あい)」の意味です。紅花はエジプトが原産で、シルクロードを経て中国・日本へ渡ってきました。エジプトのミイラを包んだ布に、法隆寺近くの藤ノ木遺跡で発掘された絹の断片に、紅染があります。
 紅花はアザミに似て、葉にとげがあります。夏に鮮やかな黄色の花が咲き、やがて朱色になります。この花が紅色の染料や口紅になります。花は茎の上の方から咲き始めるのを摘みますので、別名「末摘花」といいます。源氏物語の末摘花の巻に、花のあかい姫君が登場します。
 万葉人は、鮮やかに染められた紅色の着物に魅力を感じ、何度も何度も染を繰り返し色濃い紅色の布を染めながら、つのる恋心を重ねた思いの歌が多くあります。
 立ちて思い居てもぞ思ふ紅の赤裳裾引きいにし姿を(立っても座っていても、あなたの紅染の赤裳を引きながら歩む姿を、思われてなりません。)
 紅色染めの布は、観音山の染料植物園の展示室に足を運ばれると、見られます。万葉人の花は植物園を散歩すると出会います。涼しい秋風に吹かれながら、是非訪れてほしいと思います。

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