古典花木散歩

8・朝顔 (その一)

吉永哲郎

夏を代表する花の一つに朝顔があります。東京上野の入谷の鬼子母神で毎年の7月8,9 日に開かれる「朝顔市」は、朝顔に寄せた江戸の人の時間の厚みを感じさせる行事です。さてこの朝顔のことですが、万葉人は今の「桔梗(ききょう)」をさしていました。万葉時代、朝顔は 「薬牛子くけんぎゅうし」。「木(むくげ)」、「ひるがお」、「便」の四つをさしました。 牽牛子は、平安時代の薬物辞典「本草和名』、漢和辞典 「和名抄」には、中国渡来の薬草として記述され、木様はアオイ科の落葉低木で、「植化一朝の夢」(華麗な様の花は朝咲いて一日でしぼむ)と漢詩に詠まれ、牽牛子や木槿は平安時代になって中国から伝来した渡来植物です。万葉人は朝顔を桔梗といい。山上憶良の秋の七草を詠んだ「萩の花尾花募花なでしこの花女郎花また 朝顔の花」の歌からも推し量れます。そして「言(こと)に出ていはばゆゆしみ朝顔の穂には咲き出でぬ恋もするかも」(言葉にだしてしまったら大変なことになるので、人目につく朝顔の花のようにはならないように、控えめな恋をすることよ)と詠まれているように、朝顔 (ききょう)は、はっきりした気持ちを表す比喩としてもちいられています。 青くすっきりと野に咲く桔梗は、万葉人の恋心のシンボルです。

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