志尾 睦子の映画づくし 12

最高の人生の見つけ方

志尾 睦子

2007年 アメリカ 1時間37分 
監督:ロブ・ライナー   
出演:ジャック・ニコルソン/モーガン・フリーマン

思い立ったら動いてみる

 春めいてきたなと思ったら、3月になって高崎の平野部に雪が積もりました。豪雪に見舞われて大変な方々を思うと胸が痛みますが、薄く積もった雪景色を見ていたら、子どもの頃や学生時代の雪と共にした思い出がなんとなく蘇ってきました。ああだった、こうだったと思い返す時間は楽しくもありますが、そんなふうに物思いに耽っている自分を冷静に判断するに、歳を取ったのだなあとも思います。積み重ねてきた時間全ての出来事が事実としてあっても、思い出せるのはほんの少しなんだと思うと、ちょっと切なくなったりしました。

 そしてふと、人生の終わりを描いた素敵な映画を思い出したのでご紹介したいと思います。

 自動車整備工として長年実直に働いてきたカーターは家族にも恵まれ、慎ましく幸せな日々を過ごしていました。そんなカーターを病魔が襲います。治療のために入院した病院で同室になったのがエドワードでした。彼はこの病院に出資もする大富豪らしく、秘書が付き添う以外は誰1人として見舞いに訪れる人はいません。ブツクサと常に文句を言っているエドワードと、常に静かに本を読み、クイズ番組を見ながら先に正解を回答する博学のカーターは、それぞれ全く反りの合わない相手が同室になったと思っていました。2人は同じくらいの年齢ですが、全く違う生き方をしてきたわけで、これまでの人生では出会うことのなかった相手でした。自分たちの命が後少ししかないことを知っている彼らはそれぞれに、思いを巡らせていました。

 そんな中で、棺桶に入る前にやっておきたいことを書き出すバケットリストの存在が急速に2人の距離を縮めていきます。何しろエドワードは大富豪、お金はいくらでもあるのです。やりたいことを実現しようと2人は旅を計画します。無論、夫の安静を願うカーターの妻は猛反対するのですが、カーターは突き動かされる様にエドワードとの旅を選択するのでした。

 孤独なエドワードと、家族に囲まれているカーターとは対照的に見えますが、互いを尊重し思い合う心は一緒です。旅をする中で見えてくるそれぞれの人生観は、生き急ぐ中でちょっと立ち止まるヒントをくれるものにも思えました。どんなタイミングでも、今が一番大事と思える時間があるのは素敵なことですね。そんなことを教えてくれる一作でした。

 ハリウッドの重鎮ジャック・ニコルソンとモーガンフリーマン、名優2人の素晴らしい共演も見どころです。

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。

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