志尾 睦子の映画づくし 6
『ロード・オブ・ザ・リング』三部作
志尾 睦子
監督:ピーター・ジャクソン
出演:イライジャ・ウッド/イアン・マッケラン/ヴィゴ・モーテンセン
製作国:ニュージーランド/アメリカ
人生の旅を重ねてみる
今年の高崎まつりは8月の最終週でしたので、「祭りのあと」の少し物悲しい気分がそのまま秋へと連れ出してくれた感がありましたね。カレンダーの月が変わると同時に、空は秋の顔に変わり、そこに吹く風の涼しさが心地よく肌に馴染みました。残暑が厳しい例年に比べると、本格的な秋も早そうです。
私は秋になるとどうも冒険物が見たくなります。アクション色の強いものは夏の定番のような気もしますが、目的のために長く険しい道を進み、人類の道を拓こうとする大スペクタクルなものは、この季節にこそ、どっぷり浸かりながら観るのがオススメです。今回ご紹介するのは三部作。秋の夜長に、時間をかけてじっくりご覧いただけたら嬉しいです。
原作となるのはイギリスの作家ジョン・ロナルド・ルーエン・トールキンが1937年から1949年にかけて少しずつ書き溜めていったという壮大な物語で、1954年から1955年にかけて3巻本で出版されています。その後世界中で愛されその名を轟かせてきたこのファンタジー小説は、2000年代初頭に3部作として映画化されました。原作小説は3部作ではなく、一つの物語として編み出された大長編を製本の都合で3巻にした訳ですが、映画では三部作という表現を使っているものの、この点は作り手もきちんと理解して製作しています。というのも、第1部を作り、ヒットを受けた上で次という作り方ではなく、最初から3本を一気に撮影しているのです。製作のスタイルからして原作本へのリスペクトが強く感じられます。この規模の作品にありがちな、時代の変化で生じる技術的な挑戦が作数を重ねるごとに入ってくる、ようなこともありません。この部分は実は大きな特徴の一つと言えます。
主人公は小さな村に住むホビット族のフロド・バギンズ。養父と静かで穏やかな暮らしをしていたフロドはある日、一つの指輪を渡されます。それは、数千年前闇の冥王サウロンが世界を破滅させる力を封じ込めたものでした。サウロンはこの指輪の力を取り戻そうとしている。それを阻止するには、モルドール国の滅びの山の火口にこの指輪を捨てるしかない。フロドはその使命を受け、仲間たちと一路モルドール国へと向かいます。当然簡単な旅ではなく、行く先々で彼らはさまざまな困難と危険、そして邪悪な力と対峙することになるのです。
過去からつながる今、そして今から始まる未来を壮大なスケールで、見事に描き上げた傑作ファンタジーをご堪能あれ。
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