志尾 睦子の映画づくし 5

クール・ランニング

志尾 睦子

1993年 アメリカ 98分
監督:ジョン・タートルトープ  
出演:レオン/ダグ・E・ダグ/ロール・D・ルイス

夢を追うにはクールでいられない?!

 猛暑に加え記録的な豪雨も続き、不安要素の多い夏になりました。甚大な被害につながることも多く心配は後を立ちませんが、誰もが安心して暮らせるように、自分も気を配って生活しなければと思います。体と心と環境をもしもの時に備えながら、日常を豊かに過ごすことができたら、それが一番ですね。

 さて、今夏はオリンピックも沸きました。寝苦しい夜はそのまま起きてテレビをつけ、スポーツマンシップの真髄に触れる時間となりました。寝不足にはなりましたが、エネルギーチャージをしたように思います。さまざまな場面で語られる、「絶対諦めない」気持ちの強さに何度も涙しました。ということで今回は、オリンピックを背景に描かれた忘れ難い快作をご紹介したいと思います。

 1987年、南国・ジャマイカでは、翌年のソウルオリンピック出場をかけた陸上男子100m走選考会が開かれていました。オリンピアンである父親の背中を追いかけ陸上選手になったデリースは、自他共に認める実力で、優勝候補。オリンピックへの切符を手に入れるべくスタートラインに立つのですが、なんとレース中、他選手のアクシデントに巻き込まれ転倒。そして夏季オリンピックは夢と散ってしまうのでした。

 結果が出たとは言え諦めきれないデリースは、委員会へレースのやり直しを訴えますが、当然取り合ってもらえません。うな垂れるデリースでしたが、その時一枚の写真が目に留まりました。そこに写っていたのは金メダルを首にかけた自分の父親と、一人の白人男性。その人は当時ボブスレーで金メダルを取ったアメリカ人選手で、今はこの町に住んでいるアービングでした。そこでデリースは、夏がダメなら冬のオリンピックに出ればいいのだ!と思いつき、ボブスレーに挑戦しようと決意します。

 探し出したアービングは、昔の面影は微塵もなく太っちょのギャンブラーと化していたのですが、とにかく彼をコーチに迎え入れ、チームメイトを募り、デリースの挑戦が始まるのでした。

 気候風土が180度全く違うところで生まれた新たな種目への転向、しかも短期間でそれを習得しようとするデリースの思いの強さにまず驚きますが、紆余曲折、七転八倒、大騒ぎしながらも、彼は絶対に諦めずひたすらオリンピックという大舞台を目指します。その力が自分を変え、周囲を動かし、多くの人の夢となるのです。頑張ることの美しさと楽しさに満ち溢れた一作をどうぞご堪能ください。

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。

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