ビジネスパーソンにお薦めするこの1本 No.53

ロード・オブ・ドッグタウン

志尾 睦子

2005 アメリカ=ドイツ 1時間47分
監督:キャサリン・ハードウィック出演:ジョン・ロビンソン/エミール・
ハーシュ/ヴィクター・ラサック/ヒース・レジャー

タフな心と情熱が時代を拓く

 コロナ禍中の二度目の夏、皆さんはどんな日々をお過ごしでしょうか。生活様式も変わり、仕事の仕方も休暇の過ごし方もだいぶ変わったかもしれません。それでも青々とした空や海、暑い日差しと拭う汗は、変わらない夏を連れてきてくれますね。暑い夏こそ、体の中に眠っている熱い思いを叩き起こして、エネルギーチャージといきたいものです。

 さて、今回は夏にこそ見たい、くすぶる思いに火をつけてくれるエネルギッシュな一作をご紹介したいと思います。

 舞台は1975年、カリフォルニア州ベニスビーチ周辺の小さな町。低所得者が暮らす貧しい町・通称ドッグタウンで生まれ育ったジェイ、ステイシー、トニー、シドは10代半ばの幼馴染みで、サーフィンとスケボーに明け暮れる毎日を過ごしています。サーフショップ「ゼファー」をいとなむ20代のスキップは彼らの兄貴分で、少年たちを揶揄しながらも何かと面倒を見ています。ある時スキップは、ジェイらを束ねてチームを作り、スケボーで一儲けしようと思いつきます。揃いのTシャツで連帯感を増す少年たちは、どんどんスケボーにのめり込んでいきました。バカンスで留守になった豪邸に忍び込み、水不足のおかげで空になっているプールで技術を磨く日々。悪さし放題な一方で、スケボーへの情熱は誰一人失うことなく、彼らは瞬く間に、スケボー界の立役者となり、スターダムへと登っていきます。

 マスコミに取り上げられ、スケボーでお金を稼ぐことができることを知った少年たちの日常は少しずつ変わっていきます。スキップの店もスケボーの生産が追い付かないほどに繁盛していくのですが、ただサーフィンやスケボーを楽しみたかった仕事仲間たちは考え方の相違からスキップの元を去っていきます。そして少年たちも、それぞれの道を歩み始めます。

 一人取り残され酒に溺れていくスキップ。時代の寵児となり華やかな世界に呑み込まれていくトニーとステイシー、他方ジェイとシドは地元に残りそれぞれの立ち位置でスケボーに向き合う生活を続けていました。4人が再び大会で顔を合わせた時、人生の荒波がまた一つ押し寄せてくるのでした。

 栄光と挫折、と一言で片付けられない生々しい人生模様が、ドッグタウンから浮かび上がってきます。遊びを仕事に昇華させた彼らが辿った苦節と輝きが見事に詰まっていました。仕事とは何か、金を稼ぐとはどういうことか、そして自分を見失わないためには何が必要か。作品世界に没頭しながらそんなことが胸の内に滑り込んできた逸品でした。

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。

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