ビジネスパーソンにお薦めするこの1本 No.45

サンタクロースになった少年

志尾 睦子

2007年 フィンランド
監督:ヨハ・ウリオキ
出演:ハヌ・ペッカ・ビョルクマン/ カリ・ヴァーナネン/ミナ・ハップキラ

世界中に広がった願いの物語に想いを馳せる

 もういくつ寝るとお正月、年末がいよいよ迫ってきました。何かにつけ気忙しくなる季節ですが、今年は更にコロナウイルス感染症の発生で全世界のこれまでの日常が大きく変わり、落ち着く暇のない一年でした。これまで出来ていたことが出来なくなる中で、どうやったら落ち着いた日常を過ごせるのか、新しい生活のあり方を模索することは、まだしばらく続きそうです。どんなことがあっても、時間は進み、人生も止まりませんから、それを受け入れ、自らのなすべきことを見つけていくのが、世の常人の常なのだろうと思う今日この頃です。

 さて今回お勧めする作品は、そんな風にして自らのなすべきことを見つけた少年の物語です。

 舞台は電気もガスもまだ通っていない時代のフィンランド。雪の降り積もるクリスマスの夜、眠っていたニコラスは両親に起こされます。生まれたばかりの妹アーダが熱を出してしまったので今からお医者様に連れて行くと言うのです。一人お留守番をするニコラスが寂しくないように、母親は妹へのクリスマスプレゼントを作って待っているようにと言い聞かせました。手先が器用なニコラスは、木彫りのおもちゃを作って帰りを待ちましたが、両親たちが戻ることはありませんでした。医者へ行く途中で3人は氷の中に落ち命を落としてしまったのです。

 孤児となったニコラスを巡り、村人たちは集会を開きます。誰もが苦しい生活をしていたので、どこかの一家が引き取るのは難しい。そこで、一年ごとに預かる家庭を変え、村人たち皆でニコラスを育てることになりました。小さな漁村のこの村に住む家族は6世帯。クリスマスが来るごとにニコラスの住む家は変わりました。彼は一年の感謝の気持ちを木彫りのおもちゃに込め、世話になった家の子どもに配るようになります。そして6年目が終わる頃、自然災害が村を襲い、村人たちの暮らしは今まで以上に大変な状態になっていました。もはやニコラスを預かれる家がなくなったのです。

 そんな時、隣町の商売人イーサッキが村にやってきます。彼は器用なニコラスが働き手になると踏んでニコラスを引き取ることにします。偏屈で気難しいイーサッキに怯えながらもニコラスは、生きるためにそれを受け入れます。そうしてまたクリスマスがやって来るのでした。

 人々の幸せを願い、感謝を持って生きることで道を切り開いた少年の生き方が世界中の人たちの人生を明るく照らしてきたと思うと素敵ですね。年末に是非ご鑑賞いただきたい一作です。

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。

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