ビジネスパーソンにお薦めするこの1本 No.29

リトル・ランボーズ

志尾 睦子

2007年 イギリス=フランス 96分
監督:ガース・ジェニングス
出演:ビル・ミルナー/ウィル・ポールター


子どもの頃の素直な好奇心と想像力を思い出してみる

 学校の夏休みも残すところあとわずかとなりました。大人にとっても夏休みという響きはなんだか特別な時間を連れてきてくれるようなところがありますね。童心に返って自分の中の好奇心や冒険心に目を向けるのもたまには良いものです。今回はそんな一助になる一本をご紹介します。大人になると、何かを始めるのはもう遅いとか、無鉄砲に何かを好きになるということにブレーキをかけてしまいがちですが、そのもったいなさを彼らの姿を見て思い出せたら新しい時間が生まれるかもしれません。
 舞台は80年代初頭のイギリスです。父親のいない11歳のウィルは、教会活動に熱心な母親に育てられました。母親との生活は、厳格な規律に沿って行われます。同年代の子たちが興味を持つ音楽もテレビもウィルの生活にはありません。同級生とも馴染めないウィルはいつも一人ぼっちで、妄想にふけってはノートに絵を書き留めていました。ある日、ウィルは学校一の問題児カーターに出会います。なんでもやりたい放題で破天荒に見えるカーターでしたが、実は彼にも父親がいなく、母も留守がちで横暴な兄と二人で暮らしているという背景がありました。引っ込み思案でおとなしいウィルと活発で問題ばかり起こすカーター。性格は対照的だけれど互いにないものを補うように二人は仲良くなります。
 老人ホームを営むカーターの家には隠れ家のような広い小屋があり、ウィルはそこで、たまたま映画『ランボー』のビデオを目撃します。シルベスター・スタローン演じるランボーに人生初めての衝撃を受けたウィルは、すっかりランボーに魅了されてしまいます。映画の世界に行きたい、そしてランボーのように強くなりたい! ウィルの中で何かが目覚めた瞬間でした。かくしてウィルとカーターは映画作りを始めるのでした。
 妄想から生まれたパラパラ漫画は自分一人で作れるけれど、映画は一人では作れません。誰かと一緒に何かを作り上げる喜びを知るウィルはどんどん変わっていきます。一方、家庭環境から大人にならざるを得なかった少年カーターがウィルといることで子どもらしさを取り戻していく姿もまた、大事なことを伝えてくれる気がします。二人が居る場所はとても狭い生活圏なのに、想像力が二人をどこまでも広い世界へ連れて行ってくれるのです。
 幾つになっても、どこにいても好奇心と想像力、そして行動で世界はいくらでも広がることをもう一度気づかせてくれる一作です。

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。

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