ビジネスパーソンにお薦めするこの1本 No.25
アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜
志尾 睦子
2013年 2時間4分 イギリス
監督:リチャード・カーティス
何気ない時間をどう感じるかで人生は大きく変わる
平成最後の年も早3ヶ月が過ぎました。新元号の発表もあり、今年はいつにも増して、年度始めの切り替えとともに時代の移り変わりを強く感じます。時間の進みの中で忙しい毎日は流れていきがちですが、見方を少し変えるだけで流れる時間が積み重ねられた時間として自分の中に大切にしまわれていったら素敵ですね。今回は、そんなことを気づかせてくれる素敵な一作をご紹介します。
イギリス南西部の海辺の町で、両親と妹、そして叔父と暮らしている青年ティムが主人公です。21歳の誕生日、ティムは父親から一族の男子だけが授かるというある秘密を打ち明けられます。それはタイムトラベルの能力があるということ。やり方は簡単。暗がりで拳を握り、いきたい時間を強く念じるだけ。内気でドジなところがあるティムは、小さな失敗や失態をするたびに、ちょっと過去に戻ってやり直しを始めます。同じ時をもう一度やり直すのですから次は余裕を持って毅然と振る舞えるというわけです。スマートに物事が進むこともありますが、もちろん全てが思い通りにいくわけでもありません。そこにはご縁や運命、そして自分の生きる姿勢というものが付いて回るのも事実。そうしてティムは失敗とやり直しを繰り返しながら、理想的な恋を実らせることに成功しました。
最愛の妻と家庭を築き子どもも生まれたティムは幸せな日々を過ごします。しかし、その一方でティムには長年気がかりなことがありました。奔放で少し風変わりな妹・キットカットのことです。ある日その妹に大きな災難が降りかかります。大切な妹を救うため、ティムはキットカットを連れて過去に行くことにしました。そこで、その不幸の原因を断ち切ることが出来、新しく平穏な時間を取り戻したかに見えたのですが、それは元の時間に大きな変化をもたらしてしまうことでもありました。さかのぼってはいけない時間があることに気がついたティムは、再び過去に戻り今の現実を受け入れることにします。一族が持つ能力は過去にしか適用しません。未来を変えるのは今どう過ごすか、しかないのです。そして過去を変えられたとしても、絶対的に阻止できないこともある。そうしてティムは、いくつかの大切なことをタイムトラベルで獲得していきます。
何気ない一日を、この一瞬の時間をどう感じるか。その受け止め方の違いだけで、人生はより豊かに輝いたものになると素直に感じられる一作です。
高崎商工会議所『商工たかさき』2019年4月号
- [次回:三度目の殺人]