ビジネスパーソンにお薦めするこの1本 No.6
きっと、うまくいく
志尾 睦子
監督:ラージクマール・ヒラリ
出演:アーミル・カーン/カリーナ・カプール
いつかの夢のために、「うまくいくさ」と叫んでみる
9月に入った途端に、涼しい風ですっかり秋ですね。下半期のラストスパートにエンジンがかかってくる頃でもあります。1年の事業計画を見渡して、なんだか焦り始めてきた、のは私だけではないはず。一つ一つやるしかないとわかっていても、焦燥感が募ると、すべき事柄を頭の整理棚に入れいくことすらおぼつかなくなり、頭上で大量の出来事が滑っていってしまう感覚に捉われます。焦る時こそ無理矢理にでも足を止めて心の声に耳を傾ける、のが遠いようで近道だとこの所感じています。
映画を観ることは、そんな時の足止め効果と心のリフレッシュに抜群です。秋の夜長ですので、敢えて長尺の映画を選んで観るというのも一手です。加えて楽しく明日への活力をくれたら更にいいですね。今回はそうした観点から『きっと、うまくいく』をご紹介します。
ランチョー、ファルハーン、ラージュの3人は、インドの名門難関工科大学の同級生で親友同士。卒業して10年が経っているのですが、ランチョーが卒業式の翌日に突然姿を消してしまい、以来行方知れずになっていました。ランチョーを探していた2人は、やっと彼の居場所を探し当て、会いに行こうとします。ランチョーはなぜ、突然いなくなったのか。そして彼は今何をしているのか。
そんな現在と、彼ら大学時代の回想とで物語は進んでいきます。
学生時代の彼らはそれぞれがとても個性的で、大学では有名な「3バカトリオ」で通っていました。何かと騒動を巻き起こしては、学長の大目玉を食らうこともしばしばです。特にリーダー格のランチョーは、学力最優先の学長に楯突くことも多く、目の敵にされています。ですが、ランチョーはいつだって「うまくいくさ」と明るく歌い、前向きに、青春を謳歌しています。
ランチョーは、自分の心に素直に耳を傾けます。彼は自身の情熱が、強い力になることを知っているのです。『成功を求めて勉強してはいけない』と彼は言います。まず学びを楽しむこと。そして成功の背中を追うのではなく、美徳に従えば成功は自ずとついてくると友人たちに話すのです。いつか実現したい夢のために、今の行動を楽しんで前向きに進めてみる。大きなアクションでなくても、「うまくいく」と大声で叫ぶだけでも、自分の人生を引っ張っていくことができるのかもと思わされます。
終盤明らかになるランチョー失踪の真実にもまた人生の奥深さが詰まっています。歌って踊るインド映画の特級品、是非一緒に体を動かし楽しんでみてください。(2017年9月:商工たかさき)
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