高崎新風土記「私の心の風景」
橋の風景から21 ―堰口橋―
吉永哲郎
市町村合併によって市の範囲は広がり、甘楽町と接するようになりました。その境に白倉川が流れています。その流れに架かる一つに堰口橋があります。上信線の新屋駅から北へ鏑川沿いの小棚地区、吉井大橋、坂口温泉へと通じる道に架かる橋です。この道はところどころ狭く、旧道の面影を残しています。堰口橋付近は、現在建設中の国道254の富岡バイパスの一部が通り、以前の景観とは随分と変わったと感じます。でも、橋から白川沿いの堤の風景は、都市化の波をかぶらず、以前のままの自然のたたずまいがあります。この橋は、幼い頃、父に連れられ鏑川へ魚釣りに行く時、何度も渡った思い出の橋。昭和10年代の鏑川は、川底が見えるほどの清流で、川原には青く白い線のある縞のある美しい石が、沢山見かけました。橋下を流れる白川は多胡の嶺の連山の一つ天狗山に源をもち、延長9キロほどの川です。下流の沿岸地区の水田を潤している大切な水資源。なお水源近くに白倉神社が鎮座し、中世の神々の物語『神道集』に記述がある古い社。ここには人身御供の伝承があり、白川がヤマトノオロチの肥の川と重なり、スサノオノミコトとクシナダヒメとの出会いを彷彿とさせます。なお、京都東山山中から流れでて、祇園の巽橋下から鴨川へと入る白川とを思い重ねますと神々の古代ロマンと都の雅な女性の姿が浮かんできて、しばし、幻想世界に漂います。
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