高崎新風土記「私の心の風景」
橋の風景から⑥ ―我峰橋―
吉永哲郎
白川は相馬山麓を水源に、箕郷町松之沢地内で大沢川、西明屋の西方で東川と合流し、沖町地内で烏川に流れ入ります。中流の箕郷町富岡に人口湖鳴沢湖があり、農業用水として重要な意味をもっています。白川は普段は水量が少ないので目立ちませんが、上流に大雨が降りますと、その増水の速さに驚かされます。この川に架かる橋はいくつもありますが、我峰橋をとりあげます。
名の示すように我峰町地内の白川に架かる橋です。旧室田街道には里見廻りと本郷廻りがありますが、この橋は後者の道筋で沖町の商店街を避けて作られたバイパスの橋です。車で通過することが多いので、橋上からの風景を眺める機会は少ないのですが、烏川と合流する下流への風景の中に、こんもりとした鎮守の森があります。我峰八幡神社の森で、地元では「鮭(シャケ)の森」と呼称しています。境内にその由来を示した碑があります。それによりますと、昔、烏川の流れはこの森の下でつき当たり、深い淵ができていたといわれます。この淵に鮭が群がり、ここから上流には上がらなかったので、このことから「鮭の森」というようになったと記されています。
車で当たり前に通過する我峰橋上からの風景に、この地の人々のいとなみの時間の厚さや歴史の存在に、気付かされました。春です。白川沿いの道を歩きながら、しばし時空を超えた世界に遊びたいものです。