挑戦する老舗企業(1)糀屋
(2017年08月8日)
大手ドラッグストアでこだわりの甘酒を販売
●受け継がれる「藤平」の決断力
今年2月からドラッグストアチェーン「マルエドラッグ」で糀屋の甘酒が発売され、売上を伸ばしている。現在、月間6千本を生産しているが需要の拡大により、設備の増強をめざしている。
糀屋は、今から450年ほど前、永禄6年(1563)に元紺屋町で創業し、当主は代々「藤平」を襲名し、現在で22代目。味噌、たまり漬けを製造販売し、高崎における老舗の中の老舗である。また醸造工程で必要な断熱材を開発し、昭和36年に関東ロックウールを高関町で創業、業界の発展に貢献している。高崎問屋町の造成に伴って食品卸の拠点を設け、新しい物流時代に対応した。本業の伝統を守りながら、時代の流れを的確につかんできた。現当主の22代飯島藤平さんは「藤平とは決断する者が名乗る名前」と語る。
●甘酒は飲料ではなく食べ物
本物志向、自然志向、健康志向の高まりの中で、日本の伝統的な食文化を伝える糀屋のブランド力が一層高まってきている。近頃、甘酒が「飲む点滴」というキャッチコピーで注目を集めているが、糀屋は戦後まもなくから甘酒を製造販売してきた。甘酒には酒粕から作ったものと、米麹から作ったものがあり、糀屋の甘酒は「米麹の甘酒」。
最初に販売した甘酒はビン詰で、賞味期間は1週間ほどで短かった。甘酒には米の粒々が含まれ、液体の中に固体が浮遊しているため、滅菌が難しい。過熱すると変色し風味も落ちてしまう。多くのメーカーが、この壁に突き当たり、現在でも粒々の甘酒は賞味期間の短い商品が多い。糀屋は昭和30年代に、賞味期間を延ばすために粒々を濾した「こうじのしずく」を開発し、粒々の入ったビン詰めから転換した。粒々のない甘酒は、食感が物足りないと熱愛者から旧来の製品を求める声もあった。
「甘酒は飲料ではなく食べ物」と考える藤平さんは、昔ながらの粒々の入っている本物の甘酒を復活させたいと考えていた。そんな折、マルエドラッグから商品開発の依頼を受けたが、当初は技術的に困難と判断し、一旦は話を断ったという。
●昔の甘酒が掘り起こした新需要
金融機関を通じて、商品提携の話が再燃し、藤平さんは自分が納得できる甘酒の商品化に向けて研究に取り組んだ。粒々の入った甘酒の色合いや風味を落とさず滅菌処理するのは非常に困難だったが、異分野から技術を見つけ出して応用することに成功。この技術は企業秘密という。
さらに、最もおいしい甘酒に仕上げるため、米のブレンドを調整するなど、試作を重ね、テイスティングだけでも100人以上、6回の調査を行い、3年を費やした。
商品のラベルには大正時代の店舗と「糀屋藤平」をデザインし、老舗の風格を醸し出している。今年2月、藤平さんの長年の思いを込めた甘酒がマルエドラッグの店舗に並んだ。売れ行きが好調で、甘酒の新需要を創り出している。月産7千5百本の生産能力を2倍に増強し、来年夏をめどに月産本数を現在の4倍まで伸ばしていきたいと藤平さんは考えている。
●高崎に育ててもらった450年の力
糀屋は群馬県内でも有数の老舗。家訓を守りながら、高崎に育ててもらったことに感謝し、未来につなげたいと22代目は語る。手作りみそ教室も好評で、市民に伝統食への関心を高めてもらい、子どもたちの食育にも貢献していきたいと考えている。
代表取締役 飯島 藤平さん
株式会社 糀屋
創業:永禄6年(1563)
問屋町店:高崎市問屋町2-10-4
元紺屋町店:高崎市元紺屋町13