世界唯一の技術で産業を変える
メイドイン高崎が福島第一原発を除染
(2017年02月27日)
株式会社環境浄化研究所
●産業プラントへの応用が本格化
「原研(日本原子力研究所)」の呼び名で高崎市民に馴染み深い「日本原子力研究開発機構・高崎量子応用研究所」の技術を産業面に利用し、消臭剤や抗菌マスクなどのヒット商品を次々に世に送り出している株式会社環境浄化研究所。同社が開発した商品は、優れた機能性を備え、新たなマーケットを創出してきた。大手メーカーと同社が組んで発売された商品はテレビCMでもお馴染みで、消臭製品の代名詞ともなっている。
消費者向け生活用品の実績を基盤に、同社の技術や製品は、福島第一原発の除染やごみ処理施設など大規模プラントでの利用が進んでいる。
環境浄化研究所は、1999年、須郷高信社長が原研の研究者時代に、研究成果を社会に役立てようと立ち上げられたベンチャー企業。須郷社長はラジオ高崎の番組に出演しているなど、科学をわかりやすく、楽しく教えてくれる科学者としても活躍し、多くの人に知られている。「今では研究成果を商品として実用化し、多くの人にその有用性をわかってもらうことに力を置いている。当社の技術が認められ、産業として本格的に動き出している」と須郷社長は語る。
●福島第一原発の除染に参画
東日本大震災に伴う福島第一原発事故は社会に大きな衝撃を与え、震災後すぐに須郷社長と社員は一丸となって除染材料の開発に取り組んだ。優れた除染能力を持つ製品を早期に完成させたが、大企業が中心となっている原子力産業の中で、地方の小さな企業である環境浄化研究所が認められるまでには、相当の時間と努力を要したという。
福島第一原発の汚染水処理の問題は、トラブルが繰り返し報道されてきたが、2年ほど前から環境浄化研究所の技術が採用され、昨年4月に同社の除染材料を使った汚染水処理施設が本格稼働した。放射性物質を吸着させる繊維を編み上げて巻いたフィルターで汚染水を浄化するシステムで、それまで欧米の大手企業が行ってきた処理の400倍の性能を持ち、高崎の技術が世界を凌駕した。
最近、汚染水処理の問題が報道されなくなったのは、同社の技術で除染処理が順調に進んでいるからだろう。
福島第一原発内に大量の汚染水がタンクに貯蔵され、保管場所がなくなると心配されているが、タンク内の汚染水処理に環境浄化研究所の技術が使われる予定という。福島の復興に向けて、同社の技術が不可欠となり、これからの展開にも注目が集まっている。除染処理の成果により、環境浄化研究所は平成28年度の「環境貢献特別賞(中小企業振興財団主催)」を受賞した。
●ごみ処理施設を無臭化した先進施設
須郷社長が福岡県で講演した時に、ごみ処理施設の悪臭対策について相談があり、環境浄化研究所の技術の導入が図れた。このごみ処理施設は、生ごみからバイオマス燃料を製造しているが、周辺住民に対する悪臭対策が課題になっていた。
ごみが投入される巨大なピットに同社の消臭剤を噴霧することにより、問題となっていた悪臭が無くなり、製造されたバイオマス燃料も無臭で、環境問題の解決とリサイクルの推進に貢献できたという。「ごみ処理施設のイメージを変えることができた」と須郷社長は語る。
こうした産業プラントや放射能除染処理施設に向けた製品が急成長しており、同社の売上の約7割を占めるようになっているという。
●重金属や希少金属を回収
環境浄化研究所の技術は、狙いを定めた物質を高効率に吸着するもので、媒体も繊維、液体、固体など用途に合わせることができるのも優れた特徴だ。
海中に含まれるコバルト、チタンなどの希少金属を回収し、小資源国日本の鉱山にしようと、須郷社長は取り組んでおり、海洋実証試験に着手している。また、電気自動車のモーターに欠かせない希少金属を廃棄物から分離濃縮することにも同社だけが唯一成功し、日本の未来を拓こうとしている。
この分離技術の応用により鉱山廃水や工業廃水に含まれるカドミウムやクロム・鉛・水銀など、有害重金属の除去にも力を発揮し、環境保全にも大きく貢献できる。
●高崎が新しい繊維の都市に
同社の製品は幅広く枚挙にいとまが無い。中には常識を覆すような須郷社長のアイデアで誕生した製品もある。消臭紙おむつは既に商品化されているが、消臭効果を持った若者向けのおしゃれな紙パンツを売り出していきたいと張り切っている。
須郷社長は、自社の独自技術を誇りに、理念を共有できる企業を選択して提携していきたいと考えている。「会社の大きさではなくて技術で対等になれる」と語る。
福島第一原発で使われる除染フィルターは、同社の技術で生まれた繊維をもとに室田工場で生産している。「高崎はかつて繊維のまちだった。新しい科学技術の繊維を高崎から世界へ届けていきたい」と須郷社長は話す。環境浄化研究所は、高崎発の世界オンリーワン企業である。
須郷さん
福島の除染装置と内部フィルタ
(ワインドフィルタユニットセット)
生ごみ処理施設 ※消臭装置(消臭剤噴霧)
消臭剤などの同社の消臭製品
社屋(ウエストワンビル4F)
株式会社環境浄化研究所
代表取締役社長 須郷高信
群馬県高崎市八島町58-1
TEL:027-322-1911
http://www.kjk-jp.com/