人々に「ときめき」を与える「ひらめき」で勝負
(2016年07月26日)
株式会社大和屋
●どこにもない珈琲の世界へ
今年の5月19日に大和屋高崎本店で、同社の新商品『クラシック珈琲』のお披露目会が100名近い関係者を招いて行われた。
構想から5年。大谷石を用いた石蔵造りから始め、温度の低い石蔵の中で群馬交響楽団のモーツァルトの楽曲を聴かせてゆっくりと時間をかけてコーヒーの生豆を熟成させている。コーヒーの生豆は仕入れたらすぐに焙煎して使うのが一般的で、コーヒーを熟成させるというのは全国でもあまり類を見ない。しかも音楽を聴かせて熟成させるという手法ははじめての試みで世界的にも例がなく、まさに「大和屋だけのコーヒー」ともいえる。高崎市が群響誕生の地でありクラシック音楽と縁が深いことや、コーヒーと音楽の文化的なつながりなどをヒントに得た。
こだわりの珈琲に、「クラシック音楽のようにまろやかなで深みのある味わいに仕上がった。音楽を聴きながら楽しんで頂ければ」と、珈琲鑑定士の平湯聡常務は自信を込める。
現在日本ではコンビニコーヒーをきっかけに、異業種からの参入などもありコーヒーが大きく注目されている。大和屋では他にはないオンリーワンのコーヒーづくりを進めて、新たな領域に挑戦していく。
●「世界の珈琲 日本のやきもの」
絆を結んで現在全国に46店舗展開
「世界の珈琲 日本のやきもの」を看板に掲げる大和屋のコーヒーの考え方は、「日本人になじみやすい珈琲づくり」。端的に言えば片仮名の「コーヒー」ではなく、漢字で書く「珈琲」をかたちにしていきたいということ。その考えをベースに珈琲の味づくりから店内イメージ、パッケージデザインなどを表現している。
もととなるコーヒー原料はブラジル、インドネシア、コロンビア、グアテマラなどの契約農園をはじめ、世界各国から選りすぐりのコーヒー豆を仕入れている。
大和屋のこだわりの一つが、木炭を使ってコーヒーを焙煎するということ。きっかけは「お肉も魚もガスで焼くより炭で焼いた方が美味しいでしょ。だからコーヒーも炭で焼いた方が美味しいんじゃないかと思って」と平湯社長。通常はガスを使って焙煎するのが一般的で、木炭での焙煎はコストもかかり、より繊細な技術も必要となる。木炭で焙煎することにより他にはない独特の香りと味わいが感じられる。そうした味づくりのこだわりとして、創業当時から手間を惜しまず木炭焙煎を続けている。自社焙煎工場で熟練した職人が丁寧に焙煎して仕上げ、新鮮なまま店舗に送られる。
また、北海道から沖縄まで全国各地の窯元や作家のやきもの約1万点を一堂に集めているのも魅力の一つ。コーヒーカップやお茶碗にお皿など、暮らしを豊かに彩る食器等を豊富に取り揃える。
直営店は、高崎本店と高崎吉井店、赤城ハウス(前橋)、北海道の札幌月寒店の4店舗で、グループ店は全国に42店舗。ネット販売でも商品の要望に応じている。
グループ店の開業については全て、「大和屋の珈琲が好きだから」、「大和屋のようなお店を始めたい」という顧客からの問合せに端を発している。同社では店舗運営の相談やアドバイス、商品の安定供給などの側面から経営支援を行なっている。
●7坪から始まった夢のカタチ
創業は1980年10月。かつて大手のコーヒー製造メーカーの支店長として高崎に赴任してきた平湯社長は、結婚を機に高崎に定住することを決め、はじめは古物商として事業をスタートさせた。自宅の7・25坪のスペースを店舗に改装し、以前から趣味で収集していた骨董品のやきものやアンティーク小物などを並べると、徐々に人が訪れるようになった。サラリーマン時代に身に付けたコーヒーの知識や焙煎技術も役立ち、来てくれた人にお茶の代わりにコーヒーをふるまった。そうすると「和の器にコーヒーを入れて出したら喜ばれ、その器を欲しがる人もいたり、コーヒーがおいしいから譲ってくれと言われたり、要望に応じていくと、お店もだんだん忙しくなってきてね」と、平湯社長は当時を振りかえる。こうしてコーヒー豆とやきものを扱う大和屋の原型ができた。
●高崎本店がオープン
商売の手応えを感じて1990年11月に筑縄町のハナミズキ通り沿いに古民家風の建物を新築、本店としてオープンすると、たちまち多くの客が訪れる人気店となった。
珈琲の豊かな香りが広がる店内で味わってもらう“お試し珈琲”は創業以来、お客様に納得して珈琲を購入してほしいと実施してきた。
1996年10月には、本店に陶芸館を新設。もともとあった2階のスペースと併せて、ギャラリーとして貸し出すと、衣や染色、陶芸、木工、金工、ガラスなどの手作り作家たちが利用するようになった。
買い物ついでに寄ったり、催事のついでに買い物をしたりと、店と催事の客層が一致することも手伝って、売上増という良い流れが生まれた。催事が定着すると、ギャラリーは手作り作家の情報発信拠点として認知されるようになり、“もっと心和む暮らしを届けたい”という同社のテーマがより色濃く一般に浸透するようになった。
●珈琲に合うスイーツを
コーヒーの粉をチョコレートに練り込んだヒット商品の『カフェチョコ』など、コーヒーを引き立たせるオリジナルスイーツの商品開発も大きな事業の柱になっている。2015年6月には赤城山麓に「赤城スウィーツ工房」を稼働させ、自社でのスイーツの製造にも乗り出した。第一の商品としてバウムクーヘンを製品の安定供給に力を注ぎ、「珈琲×スイーツ」という組み合わせでコーヒーとの相乗効果をより一層強くしていく。
そして、事業の基本となるコーヒーに関しては、一年半にわたるブラジル修行で「サントス商工会認定コーヒー鑑定士」の資格を取得した平湯聡常務が中心となり、大和屋のコーヒーの品質管理を徹底していく。
最後に「商売には、人にときめきを与えるひらめきが大切」と秘訣を話す平湯正信社長は、立派な後継者の存在に安心感もあって、「数千点にのぼるコーヒー関連のコレクションを展示して〝コーヒーミュージアム〟をつくりたい」と、一つの夢を披露した。 (H)
平湯さん
大和屋スタートの地(上並榎町)
代表取締役 平湯正信
高崎市筑縄町66-22
TEL:027-370-2700