観音様の恩恵を伝える全力のおもてなし
(2015年08月19日)
観音茶屋 中川一美さん
店長・中川一美さん
観音山丘陵の山頂にたたずむ白衣大観音像。その参道にひと際響く「いらっしゃいませ〜」「いってらっしゃいませ〜」の元気な声の主は、『観音茶屋』を切り盛りする中川一美さん。一瞬も気を抜かない精一杯の接客ぶりに、“高崎随一”の太鼓判を押したくなる。
白衣大観音像は昭和11(1936)年に高崎の実業家井上保三郎翁により建立され、御年79歳。その誕生当初から観音様の足元で土産・休憩所を営んでいたのが保三郎翁の友人で中央銀座にある和菓子屋『観音屋』の初代だった。
ところが、開眼供養の際に守るお寺がなければ観音像はただの見世物になってしまうと、昭和16(1941)年に高野山より別格本山として慈眼院が勧請されることが決まると、観音屋の主人は場所を譲り、少し下った現在の所に店舗を移した。
一方、一美さんがこの地に縁を持ったのは、NPOの一員として慈眼院の境内で行う“奉納結婚式”にかかわったことがきっかけとなった。そして、観音屋の3代目店主と出会い、5年ほど前に結婚。再婚同士の熟年カップルだ。山あり谷ありの互いの人生を理解し労わり合える最高の伴侶に出会えたことも、一美さんの言葉を借りると観音様のご慈悲となる。
「私は、人一倍いろいろなことを経験しないと、わからないことが多かったのだと思います。幼かったわが子をおいて旅立たねばならないと覚悟するほどの大病も患いました」。でも、今は生かされている。生きている間に何ができるか。一美さんの心にはこの想いがある。
茶屋にいると、人の悩み事に耳を貸したり、励ましの言葉をおくったり、逆に元気をもらったりと、日々素敵な出会いがある。コンプレックスだった声を、いい声だね! とお客様に褒めてもらったことで、気持ちよく元気な声が出せるようになったのもその一つだ。
お店には、オリジナルの観音様の姿を模した「観音最中」がある。登録商標となっているだけでなく“観音様からお預かりしているお菓子”という想いも強く、一美さんは「自分の治したい部分から先に食べてください。観音様を身に入れて守っていただくという気持ちで。私にとっては商品というより、観音様がくださる夢と希望のようなものです」と微笑む。
観音様を詣でる人は、全盛期からすると随分減った。それでも店を盛りたて、いつかやる気のある人にバトンを渡すまでは全速力で走りぬく覚悟という。
■観音茶屋
高崎市石原町2709
電話:027-323-7700
営業時間:10:00〜16:00
定休日:水曜