印刷愛×2で転換期を乗り切る
(2023年10月5日)
杉浦印刷株式会社
「弊社の創業者は私の父、杉浦廸治です。高崎で江戸時代より続く紙問屋の次男として生まれ、紙に関連する仕事がしたいと、職人を雇って印刷業を始めました。当時は寿司と印刷の職人は羽振りがよく、独立して事業を始める人が多かった。高度経済成長期は設備投資をしても十分な利益があり、弊社の売上も毎年30%の伸び率を記録しました」と話す杉浦隆一会長。2021年7月14日に長男・杉浦慧さんの社長就任と併せて会長に就任した。
杉浦印刷株式会社の歴史をさかのぼると、戦前から甘楽町小幡で障子紙や手すき和紙の製造販売を営んできた事業者に当たる。その後、杉浦廸治氏が昭和30年に設立した玉川和紙工業㈱が前身となり、昭和38年に杉浦印刷紙工㈱と商号変更を経て、昭和56年に現在の杉浦印刷㈱としてスタートした。紙卸商のスギウラ㈱とパッケージ印刷製函の杉浦紙工㈱と共に杉浦グループを構成し、紙という素材をベースにしたサービスの提供を行っている。
印刷業に専念し、仕事の面白さに夢中になった隆一会長は、お客様の印刷への多様なニーズに迅速、確実に応えられるよう、従業員と共に努力を重ね、設備の充実を図りながら印刷技術の向上とノウハウの蓄積に努めてきた。「印刷業は地域に根差したクリエイティブな仕事。お客様の業種を選ばず幅広く営業展開できるのがいいところ」と話す。
そんな父の背中を見て育った慧社長も、「聖書や紙幣がよい例で、社会に役立っている印刷の仕事に誇りを持っています。子どもの頃は母が読み聞かせてくれた絵本の匂いが好きでした」と印刷業への想いを話す。
しかし今、インターネットによる情報通信革命やタブレット・スマートフォンの普及、低価格とスピードを売りにするネット印刷の台頭などで、印刷業界は転換期にある。「どの業界でも、いままであったニーズが突然消えることがある。印刷のニーズは消えるのだろうか?」という問いが慧社長の頭の中を巡り、“…最も変化に対応できるものが生き残る”というダーウィンの言葉が真に迫る。「企画・デザイン・編集力の強化や特殊印刷への傾倒、マーケットのリサーチ等々、今後戦略を練る必要を感じています」と襟をただす。
新旧の経営者が一体化することで、過去の事例を活かし、新しい状況に適応しやすくなる。「二人あわせて“温故知新”だね」と印刷業一本で実績を重ねてきた隆一会長はポジティブな笑顔を見せる。実は共通点の多い父子で、大きな印刷愛をパワーに未来を切り拓いていく。
高崎商工会議所「商工たかさき」2021年10月号