自動制御のソリューションカンパニー

(2021年11月29日)

株式会社アドテックス

 

産学官連携プロジェクトに参画 ME分野に参入

人体の痛みの大きさを数値化した痛覚測定システムや加圧光センサー技術による末梢血管血液流動性測定システム、食道冷却システムなど、世界初の技術も盛り込まれたME(メディカル・エレクトロニクス)機器。株式会社アドテックスは、こうした新しい「新医療機」(薬機法)と呼ばれる医療機器の開発を国立大学等の研究機関と連携して手がけてきた。約40名の研究者全員体制で臨む研究開発型企業として存在感を放っている。

 

同社は、2010年(平成22)にISO13485(医療機器品質マネジメントシステム)、薬事法医療機器製造業許可を取得。同年に福島県立医大が中心に進めてきた『福島次世代医療産業集積プロジェクト』に参画。高難易度と言われていた非侵襲非観血の血液成分分析装置の開発や回診支援ロボット「Terapio」、治療の優先順位を決定するトリアージ装置を開発した。

 

2013年(平成25)には「群馬がん治療技術地域活性化総合特区地域協議会」に参画し、バイオと半導体技術を活用した超高感度がんセンサーの開発プロジェクトメンバーとして、「モーター蛋白と半導体技術」でガン由来の物質を抗原抗体反応を活用し、がんを初期の段階で発見する「超高感度ガンセンサー」の開発を産学官で行ってきた。

 

翌2014年(平成26)に医療機器等法で定められている「第一種医療機器製造販売業許可」を取得。以来、クラスⅢと言う最もヒトの命に近い「人工呼吸器や心房細動手術用機器、アブレーション機器(焼灼用電気メス)」等々を開発している。

同社は、産学連携など外部の研究者と積極的にかかわることで、限られた自社資源を最大限に活用し、製品開発力を強化してきた。

 

 

 

半導体機器関連・FA機器分野で高シェア獲得の製品が誕生

同社の設立は1988年(昭和64)。エレクトロニクス機器分野の将来性に着目した佐藤弘男社長が脱サラし、友人の技術者たちに呼びかけスタートした。

 

当初は設計委託業務を営みながら生産子会社を設立。半導体関連機器・FA(ファクトリーオートメーション)機器の開発、製造を行ってきた。わずか数年の間に高精度温度制御装置やLEDプリンター用高速光量補正装置、核分裂データ収集装置などを開発していった。なかでも工作機械用高精度温度制御装置はOEM(相手先商標製品)ながら、市場シェアは50%近くに達し、他の追従を許さない製品に育った。

 

当時、バブル経済の崩壊で金融機関の貸し渋りがあったものの、同社はOEM生産で得た利潤を投入し、製品開発を次々に行い販路を拡大した。

 

飛躍のきっかけになった高精度自動制御技術の確立

「1997年(平成9)にベンチャー育成制度『群馬県創造的中小企業創出支援事業』の第一号に認定され、各種の公的支援を受けることで、新しい制御方法の開発を進めることが出来た。当社にとって、ここがターニングポイントといえます」と佐藤社長は振り返る。

 

その対象となった技術について「20年前、まだPID制御と呼ばれる手法が主流だった頃、当社は新たな制御方法に取り組みました。これは、高精度・髙応答性を備えながら破綻してしまい、まだ実用化に至っていないモデル規範制御(MRAS)という自動制御技術をベースに開発したもので、“制御値を予測して操作値を決定する”、まさに自己学習機能を備えたエッジコンピューティング(AI)そのものでした。まだ、AIという言葉すらない時代に、特許4件を取得しました」と話す。

 

わずか2年で実用可能な自動制御技術を「NACS制御」として確立し、国際特許の出願も行った。この技術は、(社)中小企業研究センターの「技術開発奨励賞」(現グッドカンパニー賞)をはじめ、群馬県優良企業表彰「大賞」など各方面から注目されるようになった。

さらに、1998年(平成10)に大手ベンチャーキャピタルから投資を受けると、高精度自動制御技術を活用した製品開発が圧倒的に増えた。その中には、半導体製造用ウェハー冷却装置、工作機械用スピンドル温度コントローラやレーザーダイオード駆動用電源装置などがある。

 

ニッチトップをめざし地方の活性化を牽引

「私たちは、自動制御・微小信号処理・パワーエレクトロニクスの3つのコア技術を用いて、医療機器・FA機器・半導体関連分野で、他社にまねのできない“自動制御のソリューションビジネス”を展開していきます」と話す佐藤社長。

 

例えば、自動制御技術と微小信号技術を用いて、ヒトの痛みの大きさを0~999段階で表示する「痛覚測定装置」やアブレーションという焼灼用電気メス、人工呼吸器といった人の生命を守る医療機器。自動制御技術とパワーエレクトロニクス技術を用いて、IPMモーター用DCインバーターや墜落防止機能(特許)を搭載したドローン用ESC(スピードコントローラ)等を開発してきた。

 

今後、FA分野と半導体関連分野で付加価値の高い製品を供給し、小さな市場で大きなシェアを獲得する“ニッチトップ企業”をめざしていく。そして、“最先端のその先を”をテーマに、人間中心の豊かな社会(Society 5.0)にふさわしい研究開発型企業として新医療機の開発に注力する。

同社は経済産業省の「地域未来牽引企業」に選定されており、新しい価値を創造し地方の活性化を後押しする役割も期待されている。

 

株式会社アドテックス

代表取締役社長  佐藤  弘男さん

高崎市倉賀野町2454-1

TEL:027-320-2800

 

高崎商工会議所「商工たかさき」9月号

 

 

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