繊維専門から多角化へ
（2021年09月30日）
株式会社 速水
高級呉服卸のノウハウ「手芸用正絹ちりめん」
株式会社速水は、速水幹雄常務取締役の祖父の代から85年続く老舗の呉服卸商社だ。現在も高級呉服や繊維製品、和装小物等を、群馬をはじめ長野、埼玉、東京、京都などの呉服店に卸販売しており、この事業が同社の主軸になっている。長年かけて顧客先との強固な信頼関係を築いてきた。
今日では、和装は晴れの日や特別な席に限られる印象が強いだけに、呉服業界は「外出自粛のコロナ禍では苦戦しています」と速水常務は話す。
近年、小学校の卒業式で袴姿が見られるようになったり、成人式の振袖や浴衣を着る若者が増えたり、ユーズドの絹の羽織をコートのように好んで着用する外国人がいたりと、優れた伝統技術から生まれる日本固有の和装の味わいが見直されていただけに、残念な状況だ。
一方、同社が10年ほど前から手掛けるようになったオリジナルの手芸用正絹ちりめん生地の売上が緩やかな拡大傾向にある。ちりめん細工作家から「満足のいく古布がない」と相談を受けたことをきっかけに、京都の染屋と丹後の織元の協力を得て5年の歳月を費やし、古布のような風合いと伸縮性に富んだ生地を開発した。
「人形のサイズに合わせ生地の柄を小さくしています。全国的に見ても競合の極めて少ない隙間ビジネスです」と言う。古典的な小紋柄や古布再生柄、ぼかしなど全柄全色約２５０種類に、ちりめん細工キット等もあり、展示会などでは愛好者に大人気。ネット販売も行っており、全国に顧客が広がっている。
先端技術で「消臭剤」や「マスクフィルター」
近年、同社は繊維製品の卸売業という枠を超え、異なる分野の商材の取扱いが目立っている。商材の新たな知識を蓄え、それまで関わりのなかった業界を開拓する過程は、大きな可能性とやりがいに満ちている。
取扱商品の一つが、香りでごまかさない本物の消臭剤『１５０（イチゴ―マル）』。先端化学技術のグラフト重合法で悪臭成分を悪臭のない別の成分に素早く変える消臭能力がある。その能力は、活性炭の１５０倍、スピードは20倍という画期的なもので、これを小売販売しているドラッグストアでは、従業員のリピート率№１の一押し消臭剤となっている。
一般家庭はもちろん、ペットショップ、病院や介護福祉施設、ホテル・旅館、清掃工場などで使用され好評だ。
また、コロナ禍でより注目度が増した商品に高機能『クリニック・マスク・フィルター』がある。これも先端化学技術のグラフト重合法によって開発された。
「うがい薬の主成分となる“ポビドンヨード”の分子を化学的に結合させた不織布フィルター」で、マスクの内側に装着して使用する。ウイルスを不活化し感染力を弱める作用が認められている（公的検査機関検証済み）。
群馬県歯科医師会で採用されており、口コミなどで他県の歯科医師等にも使用者が増えている。
豊富なミネラルに着目。自社採掘「海底海洋土」
そしてもう一つが、人々の健康的な体づくりに貢献する『ミネラルを豊富に含む海底海洋土』の供給だ。
同社では、採掘場を整備し古代に海底が隆起してできたミネラルを豊富に含む地層から海洋土を掘り出し、製品化して販売している。
ミネラルとは、体の機能の維持・調節に欠かせない栄養素のこと。例えばカリウムには血圧の上昇を抑えたり、亜鉛は味覚や嗅覚を正常にしたりするはたらきがある。体内で作ることができないため、野菜などの食べ物から摂取する必要があるが、農薬や化学肥料の使用でミネラル分をあまり含まなくなった土地が増えたため、野菜の成分が変化し、そのことが、現代人のミネラル不足の原因になっている。
同社では、このミネラル豊富な海洋土と併せて活性酵素を使用する『ＮＨ農法』を、土壌改良と植物活性力の向上が期待できるとして推奨している。
「有害物質とされる硝酸イオンが大幅に減少し、野菜の糖度が味覚で確認できるほど向上します。そのうえ、本来野菜などの植物に含まれる高抗酸化成分のファイトケミカルも大幅にアップします」と、速水常務は検査機関の分析結果を示しながら熱く語る。
また、家畜等には海洋土を飼料に混ぜて与えたり、海洋土を浸した水を飲ませたりとミネラルを与えることで、ウズラ卵や食肉等の品質や生産量が向上し、大幅な収益アップにつながっているという。
「製品には自信がありますが、取扱うのが呉服の卸商社という点で、ファーストタッチのハードルが高く、今はツテを頼って営業活動を展開しています」と歯がゆい部分もある。
同社は、伝統技術が息づく呉服分野を主軸に、優れた商材を見つけ、必要とするところへ届けるという卸商社の真骨頂を追求する。そしてコツコツと実績を積み上げることで活路を拓いていく。
速水常務
株式会社 速 水
常務取締役 速水 幹雄さん
高崎市問屋町1丁目6-5
TEL：027-361-2678
高崎商工会議所「商工たかさき」２０２１年３月号
