心の傷もカバーするエピテーゼ
(2020年09月29日)
萩原歯研エピテーゼ製作室
エピテーゼ製作技術者(歯科技工士)
萩原 圭子 さん
「エピテーゼを知る人はまだまだ少数派で、必要とする人たちに情報がしっかり届いていないのが現状です」。知ってもらえる機会になればと、取材等に意欲的に応じる萩原圭子さん。国内屈指の技術力をもつエピテーゼの製作技術者だ。
エピテーゼとは、医療を目的としたアピアランスケア用具として体の表面に取り付ける人工身体パーツのこと。局所的な病巣部の切除や乳がんによる乳房の切除、事故による手足指の欠損といった場合、欠損部に装着して見た目をカバーすることで、患者さんの精神的ダメージを和らげる。
使用する素材や道具に共通点が多いため、歯科技工士が製作を担うケースが多いが、それ以外にも優れた技術者は少なくない。
エピテーゼの製作は、無料で行われる相談をきっかけに、十分な「カウンセリング」後に欠損部の「型どり」を行い、蝋や粘土で成形した模型を「仮合わせ」し、体へのフィット感をチェックする。型が決まったらシリコーン素材で成形し装着して肌の質感や色合いに合うよう「着色」する。素肌と違和感のない自然な色に仕上げるのが一番難しいという。また、接着剤や磁石で身体に直接装着するので、かぶれや衛生面には細心の注意を払う。エピテーゼを納品後も1年間は無料で修理やメンテナンスに対応する。
萩原さんのもとには、難しい対応が必要で他所で受け入れを断られた人が、最後の頼みの綱とすがる思いで訪ねてくることが少なくない。「たまには心おきなく外食を楽しみたい。温泉に行きたい。そんなささやかな欲求も、あきらめてきた人たちだから、なんとしても力になりたい」。強い思いが先に立ち、自身の持てる力の精一杯で萩原さんは問題解決に挑んでいる。
萩原さんは、エピテーゼの技術力強化と認知度の向上をめざし、全国組織の「全日本エピテーゼ連盟」を立ち上げ理事を務めている。また、技術者を養成する学校を開校し、後進の育成にも熱心に取り組むなど、業界を牽引するリーダーとして活躍中だ。
株式会社萩原歯研
エピテーゼ製作室 メディカルラボK
住所:高崎市片岡町3丁目25-5
TEL:027-384-4084
高崎商工会議所「商工たかさき」2020年9月号