教育研修や顧客サービスに バス活用術を提案
(2020年03月31日)
美山観光バス株式会社
セイフティバスマークへの取り組み
「昔はバス旅行というと、子ども心にきれいなバスガイドのお姉さんを楽しみにしたものですが、現代では乗車前にドライバーの顔色や健康そうであるかをチェックするお客様が増えています」と話す美山観光バス株式会社の清水正郎社長。2016(平成28)年に軽井沢で起こったスキーバス事故をきっかけに、安全なバスの運行について乗客から厳しい目が向けられるようになった。
「私が知る35年間は、人身事故は一度もありません」と清水社長が胸を張るように、同社では自主規制の中で安全への態勢づくりに努めてきた。
さらに、安全対策にきちんと取り組んでいるかどうかを「見える化」する対策の一つとして2011年(平成23)から始まった「貸切バス事業者安全性評価認定制度」にも意欲的に取り組んでいる。これは、国土交通省、公益社団法人日本バス協会、学識経験者、有識者で構成する委員会に申請し、安全性や安全確保のための自社の取り組み状況を評価してもらう制度で、優良と認められると「セイフティバスマーク」に星が付く。たゆまぬ努力を続けるバス会社の証である。
ドライバーの安全運転+先端技術のアシスト
同社では、ドライバーの健康診断や65歳以上のバス運転手に求められる適性検査、大型2種免許の更新などの実施はもちろん、乗車前の点呼チェックや十分な休憩時間の確保、乗客への笑顔の対応などを日常のルールとしている。
また、ドライブレコーダーを装備し、万一の事故発生時の状況把握や原因究明はもちろん、事故防止対策、安全教育などへの活用を可能にする。
さらに、ドライバーの安全運転を支援するシステムを搭載する「先進安全自動車(ASV:Advanced Saftey Vehicle)」への取り組みとして、「ドライバー異常時対応システム」を導入。これは、ドライバーの異常を自動検知するか、乗客が気づいて非常停止ボタンを押すことで自動制御がかかり運転を停止。ハザードランプの点灯やアナウンスなどで周囲に異常が起きていることを知らせるシステムとなっている。
同社では、ドライバーの安全運行への意識の向上や良好な健康状態を確保したうえで、先進技術によるアシスト態勢を強化している。
戦後のレジャー産業に着目 時代と共に変化するニーズに対応
同社の創業は1947年(昭和22)。当時、材木商で土木・建築業も請け負っていた株式会社研屋の3代目・清水一郎社長が終戦後、「これからはレジャー産業が伸びる」と新たに着目したのが貸切バス事業だった。その読みは当たり、県内でも観光地に向かうバスの運行が頻繁になり、事業は予想以上の活況を極めた。しかし、マイカーの普及と伴に、バスの需要は縮小傾向をたどることになった。
「時代と共に、余暇の過ごし方への意識や行動が多様化しています。今では若者を中心にネットを利用できる環境の確保は欠かせません」と、バスの車内にフリーWi-Fiや携帯電話の充電環境を整えている。
「乗車中のバスの走行ルートを携帯でチェックし、気になる建物などがあると自分で検索されるお客様もいらっしゃいますね」と話す清水社長。バス旅行の楽しみ方は人それぞれで、時代の変化に目を凝らせば新たなビジネスチャンスにつながりそうだ。
多様化するニーズにきめ細かに対応 提案型で利便性をアピール
同社では、社員旅行や部活動での遠征、冠婚葬祭、飛行場への送迎、ゴルフや研修など、様々な顧客ニーズに対応しながら、旅行に伴う宿泊施設や食事処、宴会会場の手配までも行っている。
代表的なものに“ソフトボールシティ高崎”を牽引する太陽誘電ソフトボールチームの専属バスの運行がある。九州合宿や北海道への遠征などにも、選手たちをドア・ツー・ドアで送迎する。
また、“映画のまち高崎”らしく、ロケ地にエキストラを送迎する機会も増え、ときにはバスが映像の中に登場することもある。こうした映画への協力は、エンドロールに社名が紹介されるという楽しみもある。どちらの場合も、高崎らしい活動の後押しとなり、社員を誇らしい気持ちにさせている。
グループ会社の研屋でも、協力会社の職人さんたちを対象に成田山新勝寺への初詣バスツアーを実施。また、箕輪城の支城でマニアに人気の鷹留城跡(下室田町)を整備するボランティア活動も行っており、送迎はバスの出番となっている。
「乗り換えなしで目的地まで行ける。車内ではリラックスしながら過ごすことができる。ツアーの目的に合せて移動時間を多様に活用することも可能」とバスを利用するメリットは多い。
社員旅行を行う企業が減る一方で、社員研修や顧客サービスなどを強化する企業もあり、バスを利用する利便性などを訴求する提案型営業に期待がかかる。
会社概要
代表取締役社長 清水 正郎さん
高崎市大橋町178
TEL:027-384-4050