百年の時が刻んだ蔵を求めて下北沢から高崎へ
佐々木洋品店
(2015年3月)
「100年ほど前の服といえば、家庭で布を織って裁断し縫製して作られました。機能的で丈夫、破れれば何度でも繕って長く大切に着ました。当時の人々の一着への思いは今では想像もつかないほど。ビンテージもののジャケットや作業着などは、繕ったところも味になり、風合いといい存在感といい魅了されます。服にまつわるストーリーが好きで、お客様に夢中で話してしまうこともあります」と笑う店主の貢さん。
5年前に下北沢でアメリカのビンテージ古着を扱う店舗としてオープンしていたが、自分たちの志向の変化から、3年前にヨーロッパのビンテージの古着を扱うスタイルに転換。以前主に20代男性だった顧客層は、幅広い年代の女性にまで拡大した。
アンティークリネンや日本の古布を使ったオリジナルブランド「佐々木印」の服や布小物作りと販売を手がけ、ネット通販も行っている。
「フランスの服のリペア(修繕)に大いに影響を受けました」という妻の千穂さんが、佐々木印のデザインやクオリティを担う。「やりたいことが沢山あって」と創造意欲も旺盛だ。
「味わいのある古着には、古い蔵がよく似合う」と、かねてから東京の下町や川越、栃木で物件を探していたところ、昨年5月に百年ほど前に建てられた蔵を見つけ、二階の太い梁が決め手となり高崎に決めた。藤岡出身の千穂さんの出産も控えており、実家も近くて好都合。千穂さんの父親と叔父が蔵のリノベーションを請け負ってくれ、千穂さんも現場監督と施工を務めた。
昨年9月に下北沢の店を閉め、11月に高崎に「佐々木洋品店」をオープン。大都会から高崎の住宅地の生活感漂う路地で再出発した。
「運命に導かれるような自然な流れに乗った感じです。特に心配事や大きな決断などはありませんでした」と、思い通りの古い蔵の店舗に落ち着き、これからへの希望の方が大きい二人。歴史とストーリーをまとった空間と古着やアンティーク雑貨等、好きなものに囲まれる幸福感と、発信したい強いメッセージが伝わってくる。
佐々木洋品店
佐々木 貢さん・千穂さん
住所:高崎市台町8
TEL:027-381-6526
営業時間:11:00〜19:00(不定休)
駐車場:有