復活する「高崎に遊びに行く」現象

(2017年12月31日)


ビジネス、ショッピング、文化やエンターテインメントなど、高崎のまちは人々を誘引する力がある。ザワザワとした人の流れが高崎駅からまちなかへと拡大しているようだ。高崎という都市そのものを楽しむ「高崎に遊びに行く」現象で、まちのにぎわいが生まれてきた。

 

 

 

 

■若者が高崎のまちに見るものは?「群馬にないもの」が高崎にある

 

●「高崎に遊びに来たい」若者たち

駅前や中心商店街のにぎわいは都市の顔であり、そのまちを初めて訪れる人の印象を決め、市民にとってもシンボルとなる。

高崎駅周辺が大きく変化したことにより、今、「高崎に遊びに行く」現象が新たに発生し、大きなにぎわいが生まれている。

東京で、若者に人気があるスポットを見ると、何をしに来たのかわからないような若者が、駅前や通りに大勢あふれている。お目当てのショップがあるのかもしれないが、彼らは渋谷に遊び来た、六本木に遊びに来たのであり、来ることが目的だ。通りを歩きながら話題店の前で、スマホで自撮り(自分の写真を撮ること)をして、SNSに上げて楽しんでいる。

高崎でも、同様のことが起こっている。漠然と遊びに来て、思いつきであちこちの商業施設に立ち寄ってみる若者の回遊性が生まれている。何をしに来たのかわからないが、楽しそうな若者たちでにぎわいを見せている。「高崎に遊びに行く」という都市観光が顕在化してきたと言えそうだ。

 

●5日間で22万人。群馬にないものが高崎にある

高崎オーパが10月13日(金)に開店し、前夜からの泊まりも含め、開店前には雨の中に約3千人の列ができた。高崎オーパから高崎市への情報で、プレオープンの11、12日と開業後の13日から15日の計5日で、来館者数が約22万人だったことが高崎市議会に報告された。

高崎オーパでは、グランドオープン後の週末には最大9万人規模の来館を当初見込んでおり、高崎髙島屋は入館者7割増、高崎駅ビルモントレーも2割増となっている。高崎オーパ開店に合わせて、高崎髙島屋、高崎駅ビルもリニューアルや新規店舗の出店など、高崎駅西口は活気づいている。

これまで群馬になかったファッションや飲食が高崎駅を中心とした商業施設にお目見えし、話題となっている。毎日がイベントとも言えるにぎわいで、高崎の集客力を大きく底上げしている。

高崎駅周辺の変化について、若者の反応をSNSなどで見ると、「群馬ではないみたい」、「東京のような都会感」「東京のファッションがある」などで、若者が洗練されたセンスやワクワクする期待を高崎に寄せている書き込みが目に留まる。「高崎オーパに行った」「まだ行ってない」が話題となっている。オーパの開店によって「高崎に遊びに行く」現象が拡大した。

 

■まちなかイベントでにぎわいと回遊性創出

 

●秋の高崎はイベント盛りだくさん

高崎のまちでは年間を通じて様々なイベントが行われているが、特に秋はイベント盛りだくさんで、週末は複数のイベントが行われている。今年は天候不順で、開催に影響を受けたイベントも多かったようだが、9月から10月にかけて予定されたイベントは9頁の通りとなっている。

10月だけで10以上のイベントが予定され、こうしたイベントに加えて、社会への影響が大きい出来事として衆議院選挙(10月10日公示・22日投票)もあった。10月31日には上野三碑のユネスコ「世界の記憶」登録のうれしいニュースも重なった。

えびす講の行われる11月も高崎の中心商店街の集客シーズンだ。11月4日(土)第4回高崎菓子まつり、12日(日)キングオブパスタ、18日(土)・19日(日)高崎えびす講市・農業まつりなど、大きな集客が期待できるイベントが続く。

 

●にぎわいを「まちなかに溢れさせる」

高崎のまちなかで開催されるイベントは、市内外から人を呼び込み、にぎわいと回遊性の創出をめざしたもので、高崎が持つ集客力と各イベントの魅力・集客力との相乗効果を狙っている。

高崎駅西口の変化による集客増をまちなかに回遊させることが次の重要なステップとなる。商業施設の中が、どんなににぎわっていても、建物の中なので外からは見えない。目に見えるにぎわいとは、施設と施設を移動するために通りを歩く人々、施設からあふれ出た人々と言える。集まる交流人口が多ければ多いほど、まちに溢れる人口も多くなり、溢れる範囲も拡大する。

まちなかのイベントは、にぎわいの滞在時間を伸ばす役割も持っている。開催されているイベントを目的に高崎に来る人もいれば、高崎に遊びに来たら、たまたまそのイベントが行われていたので、興味を引いて足を止めたという人もいるだろう。この偶然の出会いがまちの面白さである。様々なイベントがまちなかで行われ、多くの来街者でまちなかがにぎわえば、多くの新しい出会いが生まれることになる。

 

●新たなイベント・新たなスペースも

観音山ファミリーパークで行われていた「美スタイルマラソン」が、高崎の中心市街地に会場を移し、今年で2回目の開催となった。まちを走ることがショーのように演出され、沿道からの応援によってランナーと観客が一体となって盛り上がる。単に走るのであれば、陸上競技施設などを使えばいいのであって、まちなかを交通規制してまで実施するには、理由と目的があるはずだ。その理由こそ、まちなかイベントの魅力を説明してくれるはずだ。

雷舞フェスティバルでは、高崎市外、群馬県外から参加する団体がとても多く、高崎のまちを舞台に踊ることが参加のモチベーションになっている。

高崎マーチングフェスティバルは、これまでの城南球場から高崎アリーナにフロアドリルの会場を移し、パレードコースも変更され、高崎駅周辺とまちなかの流れが期待されていたが、雨のためにパレードが中止となるなど、10月の週末がことごとく雨にたたられ、各イベントの持ち味を十分に発揮できなかったことが残念だ。

まちなかで長く開催されているイベントに加え、今年から始まった「たかさきハロウィン」は、雨に降られたものの高崎オーパ前のペデストリアンデッキを会場に参加者を集め、若者やファミリー層に好評となっていた。

3年目となるアートプロジェクト高崎は、まちなかを会場に現代アートを展示する試みで、意表を突くような面白さにあふれている。力のあるアーチスト、クオリティの高いアート作品を集め、展示方法も工夫した。まちなかでの現代アートは、地域創生の手法として増えているが、山田かまち展や生け花作家のパフォーマンスなどとも連動し、高崎ならではの展開がはかられている。

イベントとコラボした高崎おとまちプロジェクトのストリートライブが毎週末に開催されており、高崎駅西口のペデストリアンデッキ、タカレイパーク前、タブの木広場など、ミニイベントに使える場所も整備されている。

ターゲットを「狭く深く」掘り下げ、ファンにとって質の高いイベントは、高崎の都市クオリティを高め、広範囲な集客に結び付く。

 

■高崎の交流人口が倍増1千万人超。

クルマ依存の群馬県民が歩く楽しさを発見

 

●東口駐車で東西回遊

オーパ開店による周辺の交通渋滞などが心配されたが、事前に高崎市が高崎駅前広場などの整備を実施し、市と高崎オーパが対策本部を設置するなど、周到に準備したことが奏功し、周辺駐車場への入庫待ちはあったようだが、交通の流れはスムーズだった。

全国の地方都市で中心市街地の衰退が叫ばれて久しく、多くの地方都市がなんとか中心市街地に人を呼び込もうとしているのに対し、何万人もの来街者が訪れ、交通渋滞の心配をしなければならないのは、ぜいたくな悩みと言えるかもしれない。

交通渋滞が緩和された要因として注目されるのが、高崎駅中央コンコースから西口に流れてくる人の流れだ。JR乗降客と東口方面の駐車場を利用し、まちなかを回遊する人の流れが顕著となっている。

東口方面の駐車場というと、出張などビジネス利用のイメージが強いが、SNSの書き込みを見ると、東口方面の方が駐車料金が安く、駐車場に入庫しやすいと評価されている。駐車場が満車になるのも東口方面の方が早い。

目的地の前までクルマで乗り付けると言われる群馬県民を歩かせたのである。まちを歩いて回遊するという人の流れが高崎駅の東西から生まれているのである。

 

●新たな都市観光で交流人口が2倍以上に

群馬県が推計した平成28年の観光入込数によれば高崎市への年間の観光客数は約630万人で、月別に高崎市の観光客数を見ると、高崎まつりの行われる8月が132万人で最も多く、春のゴールデンウィーク、秋のイベントシーズンの集客が多くなっている。

高崎の観光客の実態は、高崎のビジネス拠点性を反映したもので、ビジネス客がベースとなっており、県外客は年間212万人で群馬県内で最多、県内の宿泊客数は59万人で県内都市部で群を抜いている。

高崎オーパは年間に800万人の集客を見込んでいると報じられている。また高崎アリーナで開催される国際大会の集客力、経済効果も大きい。

商業施設への集客数が観光客の統計値に加算されるかどうかは別にしても、高崎の観光客数の630万人と合わせて、今後の交流人口は今までの2倍以上、1千万人超に拡大していくと見られる。

 

●「高崎で遊ぶ」もう一つの意味

年輩者には、昭和の記憶として、高崎のまちに対して特別な思いが心に刻まれている。

高崎のまちには「非日常」があった。「高崎に遊びに行く」、「まちに遊びに行く」と、バスや電車に乗って出かけ、大人も子どもも高崎のまちを楽しんだ。高崎に行くときは、それなりに身支度をして、女性はお化粧も入念だった。

「遊びに行く」と言うものの、特にはっきりとした目的はなく、買い物であったり、飲食店であったり、映画や音楽であったり、高崎のまちそのものが楽しいエンターテインメントであった。バスや電車に乗って出かけることも、高崎を楽しむための重要な過程であった。

田舎の子どもたちには、高崎のまちは、おっかなびっくりの都会であり、中学生くらいの年ごろになると、友だちと一緒に、あるいは一人で高崎のまちに来るのが大人へのステップであった。高崎は10代が背伸びをして来る場所であった。

表現が悪いかもしれないが、「郊外の田舎から高崎の都会に出て来る」という都市構造が歴史的にあり、その構造は今の若者たちにも意識されているのではないだろうか。

『商工たかさき』平成29年11月号

 

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