都市戦略の先陣「高崎アリーナ」開館
(2017年05月2日)
夢と交流を創る高崎アリーナ
待望の高崎アリーナが4月1日にオープンし、市民のスポーツ拠点、そしてスポーツを通じて全国、海外の人々が高崎で交流する拠点として機能を発揮し始めた。
●抜群の利便性と高水準な施設
高崎のシンボルとなるアリーナ
高崎アリーナ開館に先立ち、3月25日に完成式典が行われ、スポーツ、観光、産業の団体代表や、国会議員、県会議員、市議会議員が参列し、各界から大きな期待が寄せられた。
高崎アリーナは国際レベルの施設水準を持った体育館で、市民スポーツを推進するとともに、世界のトップアスリートがパフォーマンスを繰り広げる舞台であり、市民、子どもたちに夢を与え、高崎を発展させる力となる。
高崎は人々が集まり交流する都市として発展を続けており、高崎アリーナは高崎を訪れる人を更に大きく増加させる。
高崎アリーナは、高崎駅直近の立地で、新幹線から在来線に乗り換えなしでアクセスできる。これほど便利な施設は全国にも少ない。バスケットボール4面、観客席最大6,000人のメインアリーナなど、施設の規模、充実度においても全国の類似施設と比べて遜色ない。
新幹線から見える高崎アリーナの外観、夜間のライトアップは目を引き、新しい高崎を象徴する都市景観となっている。
●弱点を強みに変える新たな交流拠点
新たな交流人口の創出は、高崎の都市戦略の重要な柱となっている。
高崎の交流人口は年間2,500万人と推計され、商業とビジネスが交流の中心機能となっている。一方、スポーツでは施設不足が指摘され、富岡賢治市長は「高崎は高校生の県大会も開催できないまちだった」とし、新体育館の構想を描いた。高崎アリーナは、これまでの高崎の弱点だったスポーツ分野で新たな交流人口を生み出すものだ。
また高崎を訪れる外国人客は、増加していると言っても決して多くはなく、高崎の弱点の一つと言えた。高崎アリーナでは、数多くの国際大会が開催決定しており、海外から高崎に訪れる人々が激増する。高崎アリーナは、高崎の弱点を強みに変え、これまでになかった新しい交流・集客を創り出す。そして新たな交流の創出は、高崎に多様な波及効果を与えることになる。
高崎アリーナ、高崎駅東口の高崎文化芸術センター(仮称)、高崎駅西口の高崎オーパによって、高崎の交流人口は年間4,000万人に及ぶと見込まれている。高崎アリーナは高崎の都市戦略の先陣となる施設であり、新しい高崎の姿を予感させるものだ。
●親子で遊べる芝生広場も整備
鉄道ファンのスポットにも
高崎アリーナの来場者や近隣の人たちが憩える場として、親子で遊べる芝生広場が敷地内に整備されている。遊具やお弁当が食べられるベンチなども設置されている。広場には、高崎中央ライオンズクラブが寄贈した時計塔が建てられており、アリーナの成功を願う市民の期待が寄せられている(フラッシュページ参照)。
JRと上信電鉄の線路にはさまれた立地は、行き交う電車を間近に眺める絶好のスポットで、鉄道ファンが集まる名所になるかもしれない。
●アリーナシャトルも運行
高崎アリーナが開館した4月1日から、シャトルバスが定期運行されている。ボディはシルバーメタリックを基調に、高崎アリーナのロゴデザインなどを用い、アリーナ行きバスであることが、わかりやすいデザインになっている。使用するバスは中型で、乗客数は定員60人。
近隣住民の足としての機能を持ち、運行コースは、高崎駅西口、高崎アリーナ、新後閑町、城南野球場、和田町、南町十字路、あら町を経て高崎駅西口に戻る。午前8時から午後9時30分まで、15分間隔で一日に55便運行される。運賃は100円で小児は半額となっている。
スポーツ観光が高崎の産業に
●東京五輪のキャンプ誘致に手応え
高崎市は、全国大会、国際大会の誘致に並行し、2020年の東京オリンピックの事前キャンプ国の誘致に取り組んできた。高崎市はポーランドを候補に絞り、昨年男子バレーボールの2016リオ五輪の予選合宿の誘致を成功させた。その後、ポーランドオリンピック委員会が高崎市の競技施設を視察し、事前キャンプ地にしたい意向を公式の場で示すなど、信頼関係を築いている。
4月1日に行われた高崎アリーナのオープンニングセレモニーに来賓として出席したポーランドオリンピック委員会のアンジェイ・クラシュニツキ会長は「2020年のオリンピックに向けポーランドの選手がここで練習できるようになったことを感謝したい」と話し、ポーランドオリンピック委員会と高崎市の今後の協力や、2020年東京オリンピックでの事前キャンプに期待を寄せた。高崎アリーナの開館を記念し、ポーランドオリンピック委員会から高崎市に絵画が贈られた。
●夢を育み感動と出会うアリーナ
世界に開かれたスポーツ都市に向けて、高崎市は様々な事業を実施している。JOCパートナーシップ協定により、オリンピアン(五輪選手)が高崎市内の小中学校を訪問して行うスポーツ教室や、オリンピックデーランなどのイベントは、子どもたちや市民がトップアスリートと直接交流し、世界を身近に感じさせる絶好の機会となっている。また、高崎アリーナで行われる世界大会等では、歓声と拍手に包まれて躍動する選手の姿が子どもたちに大きな夢を与えることだろう。
●国際合気道大会の経済効果は5億円
昨年9月26日から10月2日まで、第12回国際合気道大会が、正式オープン前の高崎アリーナで開催された。70を超える国と地域から約1,000人が参加する予定とされ、連日にわたり2,000人を超える来場者を集め、講習会や演武会が盛大に行われた。
大会期間中は、高崎アリーナと高崎駅周辺の宿泊施設を結ぶ道路や、中心商店街は外国人参加者でにぎわいを見せた。飲食店や商店でも多くの外国人の来店があり、言葉の壁を越えて商店街も好反応だった。高崎アリーナの近隣では「毎日とてもにぎやかになった。まるで外国にいるみたいです」との声があった。
高崎市では、この大会の経済効果を5億円と試算している。高崎アリーナの開館初年度となる平成29年度から、全国大会や国際大会が数多く予定され、高崎への大きな経済効果が期待できる。
●高崎のスポーツ観光を創出
高崎は自然、歴史文化にも恵まれ多くの観光資源を持っている。自然や神社仏閣など従来型の観光に加え、スポーツやコンサートなど、高崎の魅力を倍加させる都市観光として、高崎アリーナや高崎文化芸術センターが位置付けられている。
高崎アリーナは、スポーツ観光の分野を開拓し、高崎の新しい魅力を創造する、新しい価値を生み出す施設である。
観戦の前に腹ごしらえをしたり、終演後に余韻を楽しむなど、飲食の魅力づくりも重要だ。また、昨年の国際合気道大会では、高崎駅からアリーナに通じる街路に万国旗が飾られ、参加者は自国の旗を見つけて喜んでもらえたそうだ。まち全体として、大会ムードを盛り上げて、参加者をもてなすことが大切だ。ポーランドの男子バレーボールチームが高崎に好意を持ったのも、市民のもてなしがあったからこそだろう。
●宿泊施設の不足が心配
全国大会、国際大会によって高崎の宿泊者数が増加し、宿泊施設の不足が懸念されている。
昨年の国際合気道大会では、1,000人の外国人客が宿泊し、高崎市内の宿泊施設は満室状態となった。
高崎市の宿泊者数は、年間66万人で推移し、その9割の59万人が県外客となっている。県外宿泊者のほとんどはビジネスマンで、一日平均で1,800人から2,000人。宿泊施設は高稼動で推移し、大規模大会の時は部屋不足となる。また高崎スマートIC産業団地をはじめ、高崎のビジネスの動きが更に活発になるので、ビジネスでの宿泊需要も増加する。
大規模なバンケットや、国際大会で国賓級のVIP迎える施設等を課題として指摘する旅行関係者の声もある。
高崎のブランド戦略が着実に進展
●スポーツとビジネス・文化が一体
東京五輪のキャンプ誘致への期待が高まるポーランドについては、当所の八木議廣副会頭を実行委員長として2015年に東欧で実施した高崎ものづくり海外フェアも架け橋の役割を果たしている。高崎映画祭のポーランド特集、高崎音楽祭のポーランドミュージシャン招へいなどがキャンプ誘致に並行して行われた。ポーランド国民の目を高崎に向け、高崎に対する幅広い支持につながったことも背景として考えられる。
またシンガポールで行われた高崎ものづくり海外フェアをきっかけに、シンガポール映画界を牽引する映画監督エリック・クー監督に、高崎映画祭と高崎フィルムコミッションの活動が認められ、第31回高崎映画祭に合わせてクー監督が来高し、高崎を舞台にした映画制作が発表された。(本誌グラビア参照)
経済交流と文化交流を複合して創り出せる都市力を高崎が持っていることが実証されている。産業、文化、スポーツ、芸術が連携した取り組みやシティプロモーションは高崎ならではの強みであり、これからも大きな可能性が期待できそうだ。