職場環境改善事業を活用(3)
(2021年09月29日)
サトキン・町田ギヤー製作所・長井精機
株式会社サトキン
株式会社サトキンは、難易度の高い砂型鋳造品を製造しており、鋳物の余熱排気や砂型による砂塵対策を踏まえた環境整備が必要となっていた。
「商店に対してはリニューアル補助金があり、好評となっているようです。工業系の事業所に対して職場環境の支援制度が創設され、ぜひ使いたいと考えてきました。働く環境を整備することの大切さをわかっていても中小零細は余裕がなく、足踏みしがちだったのではないでしょうか」と大塚康幸社長は語る。
大塚社長は、これまでも工場内の暑さ対策を検討してきた。鋳造プロセスでは、金属が1,000度以上の高温となり、既設の換気扇では夏の工場内はかなりの暑さだったという。
工場は天井が高く、場内も広いのでエアコンでは室温が下がりにくい。また工場内を移動しながら作業することが多いので、局所的に冷風を送るスポットクーラーなどでは対応できない。可搬式のクーラーは熱風を排出するので工場内の温度が上昇する。砂塵により空調機のフィルターが目詰まりして故障するなど、課題が多かったそうだ。
大塚社長は大型送風ファンの導入を検討し、高崎市の「職場環境改善事業補助金」を活用した。工場の天井に大型換気扇を5基設置し、新鮮な外気を取り入れて涼風を生成し、作業エリア全体の空気の流れを作りだした。屋根には遮断熱塗装を行い、室内温度への影響を軽減させた。「設置後は工場内に風ができて温度が約6℃も下がりました。従業員からも、働きやすくなったと好評です」と大塚社長は事業の効果を実感している。
熱中症対策として、梅干しや冷水、補水飲料、ファン付きのジャケットなども活用している。「昔は親方から暑くても我慢しろと言われてきました。近年の暑さは昔とは大違いです。他社ができない高精度の鋳造が当社の強み。従業員が働きやすい職場環境づくりを目指していきます」と話す。
株式会社サトキン
高崎市吉井町塩309-8
TEL.027-320-3655
株式会社町田ギヤー製作所
株式会社町田ギヤー製作所は1945年の創業以来、各種歯車の試作から量産まで手がけ、国内メーカーのものづくりを支えてきた。
顧客ニーズを社員一人ひとりが考えて、工夫して製品を作っていくために、社員が集中して働けるような職場環境は非常に重要だ。
「近年の温暖化で、真夏には工場内の気温が45℃近くになることもあり、社員の健康を守るためにも、製品の質を上げるためにも対策を考えていました」と町田和紀社長は話す。
高齢の社員も多く、町田社長は熱中症対策に頭を痛めていた。工場への遮断熱塗装の施工や扇風機の設置、水分や塩分の補給など対策はしていたが、思うように効果が上がらないのが現状だったそうだ。
町田ギヤー製作所は高崎市の「職場環境改善事業補助金」を活用し、ゾーン空調機15台を導入した。一般的なスポットクーラーは熱が工場内にこもりがちだが、このゾーン空調機は室外機を屋外に備え熱風を工場外に排出し、作業エリアに冷えた空気を集中して送り込む。
社員からも好評で、昨年の夏は熱中症を一人も出すこともなく営業を続けることができたそうだ。「コロナ対策のために、社員はマスクを着用して働いています。余計に暑さを感じることになり心配していたので、効果があって本当によかったです。社員からも好評です」。
このゾーン空調機は冷暖房の切り替えや室内の温度設定も可能だ。そのため暖房機能は冬の寒さを和らげる点も喜ばれている。同社にはベトナムなど海外から入社することもあり、高崎の寒さはこたえるそうで、ゾーン空調機に助けられているという。
出身の国や年齢など、様々な社員が、快適に働き職場に定着するために職場環境の整備は重要だ。「生産設備への投資に比べて、直接的に生産に関与しない空調設備などに投資するのは、かなり悩みました。ですが、長期的にビジネスを続け社員さんに働いてもらうことを考え、制度に後押ししてもらい、投資に踏み切りました」。
人材を新しく募集する際にも、職場環境は重要視されるポイントだ。「リクルーティングの際にも、職場環境が過酷だと、なかなか入社につながらない。製造業の現場を見て考えられた良い補助制度だと思います」と町田社長は話す。
株式会社町田ギヤー製作所
高崎市上豊岡町530
TEL.027-324-0045
株式会社長井精機
株式会社長井精機は、発電所などに使われるタービンブレードをメインに製造している。
工場は本工場と北工場の2棟あり、約60台のマシニングセンタが稼働している。高精度でスピーディな加工技術を持つ。
長井精機では、マシニングセンタの油煙など、工場内の空気洗浄や排気のため、換気扇・扇風機が設置されているが、「職場環境改善事業補助金」を活用し、大型換気扇を設置した。効率の良い排気が可能となり、工場内の室温を5度ほど下げることができたそうだ。
長井宏幸社長は、2年前から暑さ対策も兼ねた整備を検討してきた。施工費用を見積もると2千万円超だった。
高崎青年経営者協議会の会員仲間が暑さ対策の設備を導入していたので見学させてもらうことができた。青経の会員同士ということで、詳しい情報交換もでき、1千万円ほどの施工規模で十分であることもわかったという。高崎市の職場環境改善事業補助金を活用すれば費用の2分の1が補助されるので、自社の負担額は当初考えていた2千万円の4分の1となった。
この大型換気扇の施工に合わせ工場内の通気性を高めるために、マシニングセンタを移動するなど配置換えも行い、この事業を通じて社員の意識も高まったそうだ。社員の発案で研磨部門を囲い、金属粉と油煙の排出を分離したり、屋根の断熱塗装を自分たちで作業したりするなど、職場環境改善のアイデアが出されている。「ものづくりのチームワークの強みが発揮されています」と長井社長は語る。
長井社長は熱中症対策、コロナ対策、BCP(事業継続計画)でも青経の情報を積極的に生かしている。
今年3月から工場屋根で太陽光発電を行い、VPP(バーチャル・パワー・プラント=仮想発電所)にも取り組んでいるそうだ。「次の一手を考えていきたい」と受注体制、収益体制を整え、新棟建設も視野に入れているそうだ。
株式会社長井精機
高崎市上豊岡町561-23
(八幡第二工業団地)
TEL.027-343-5881
高崎商工会議所「商工たかさき」2021年5月号