2050年 カーボンニュートラルの実現に向けて(2)

(2021年05月31日)

2030年が地球環境の分岐点

台風で増水した利根川(片亀さん撮影)

なぜ、カーボンニュートラルに向けた取り組みが必要なのか。群馬県地球温暖化防止活動センター長の片亀光さんに聞いた。

 

温暖化ガスの排出量を差し引きゼロに

温暖化ガスの排出を完全にゼロに抑えることは現実的に難しいため、排出してしまった量については、同じ量を「吸収」または「除去」する、CO2排出量を森林や海洋など自然界が吸収できる量に抑制することで、差し引きゼロにするのが「カーボンニュートラル」の取り組みです。

「カーボンニュートラル」は、将来にわたって地球環境の保全をめざす国際的な取り組みのひとつで、EUや米国、英国、中国などが次々とカーボンニュートラルを目指す中、日本も「2050年までに温暖化ガス排出ゼロ」を表明し、官民を挙げた取り組みが本格化しようとしています。

 

 

産業革命から続く温暖化

産業革命から今日まで、人類は石炭や石油などの化石燃料を燃やし続けてきました。エネルギーを得て、経済成長を遂げた結果、大気中のCO2濃度は、産業革命前に比べて40%も増加したことが、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書(2014)で報告されています。

その報告では、人類が有効な温暖化対策を取らなかった場合、21世紀末(2081年~2100年)の世界の平均気温は、2.6~4.8℃上昇、厳しい温暖化対策をとった場合でも0.3~1.7℃上昇する可能性が高いとされました。

京都議定書に続く、2020年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みとなる「パリ協定(2015年合意)」では、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して、なんとしても2℃より低く抑える、1.5℃に抑える努力が必要と取り決められました。

なおIPCCの第6次報告書が2021年4月から順次公表される予定になっています。より精度の高い将来予測が示されると思いますので、注目していきたいです。

 

 

地球温暖化の影響は深刻

今年はサクラの開花が多くの地点で観測史上で最も早かったということですが、地球温暖化による気候変動の影響を身近に感じられました。サクラの開花は、風情の問題で済むかもしれませんが、気候変動は生命や健康への現実的な脅威となっています。

地球温暖化による気候変動の影響により、世界を見ると、洪水被害の他、森林火災や砂漠化なども深刻です。日本でも大きな災害が発生しています。史上最大級など強い台風や今まで経験したことのない局地的な豪雨による洪水、土砂崩れなどは毎年のように大きな被害を出しています。五十年に一度、百年に一度と言われるような豪雨が、毎年のように発生していると思います。

また、気温や気候の変化は海の水位、生態系にも影響を与え、農作物の栽培や収穫、漁獲量にも影響しています。

 

温暖化進行を食い止める最後の時

point of no returnがすぐそこに

地球温暖化により、北極の海氷が溶けたり、ヒマラヤの氷河、シベリアの永久凍土が溶けているという記事を読んだことがあると思います。氷が解けることにより、氷中に封じ込められていたガスが爆発し、クレーターのような痕跡が見つかっています。長い時間、閉じ込められていたガスが一度に噴出すると、地球温暖化を加速させると考えられています。温暖化だけではなく、未知のウイルスと人類が接触することにもつながり、新たな感染症につながると心配されています。

また、熱帯雨林の喪失も深刻で、自然がCO2を吸収する力が弱まります。

IPCCの報告者が提言している「1.5℃」は、「point of no return(ポイント・オブ・ノー・リターン:後戻りできない分岐点)」と言われています。1.5℃を超えると、温暖化対策を行っても気温上昇が2℃を超えることが避けられないと考えられています。極地方の氷の融解、アマゾンの熱帯雨林の喪失など気候変動に歯止めがかからず、社会への影響が深刻な状況になります。

この10年の対策をどのようにとるかが、地球の未来を決めると言えます。地球の未来に対して、今、私たちは、本当に重大な責任を負っているのです。

 


 

 

 

群馬県地球温暖化防止活動センター

片亀光センター長

 

高崎商工会議所「商工たかさき」2021年4月号

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