次の目標に照準・高崎の発展に確かな手応え
(2019年01月28日)
高崎商工会議所2019年新春鼎談
内山充・上毛新聞社社長
富岡賢治・高崎市長
児玉正藏・高崎商工会議所会頭
まちを発展させる力を実感
■富岡賢治市長:あけましておめでとうございます。2018年は高崎の街が劇的に変わっている手応えを感じた年でした。みんなが力を合わせれば街は変わることを実感できた年でした。
■児玉正藏会頭:あけましておめでとうございます。私は6月に高崎商工会議所の会頭に就任しました。高崎がどんどん変わり、今年も非常に楽しみです。高崎は、全国的に見ても飛び抜けた発展を遂げている街であると感じています。
■内山充社長:あけましておめでとうございます。私も6月に上毛新聞社第9代社長に就任しました。上毛新聞社の創刊は明治20年11月で、2代目の篠原秀吉社長が高崎中学(現:高崎高校)出身で、高高出身の上毛新聞の社長としては私が二人目ということになります。読みやすい新聞、子供からお年寄りまで手に取ってもらえる新聞をめざして社員とともにがんばっています。
ビジネスマンが評価する高崎の実力
■富岡市長:私が市長になったばかりの頃に大阪の食博覧会に高崎市が出展しました。大阪ですから高崎を誰も知らない。「高崎はいいまちですね。猿山が人気がありますね」と言われて唖然としました。今では高崎市が全国的に認識されてきています。うれしいことです。
■内山社長:転職情報のDODA(デューダ)が調査した「働きたい街(駅)ランキング(※注)」で高崎が20位に入りました。20位ってたいしたことないなと思うかもしれませんが、東京、新宿、品川などの都内や、その近郊都市である横浜、埼玉新都心、千葉、大宮とともに高崎が入っているのですから、びっくりするとともに、高崎生まれ、高崎育ちの私は誇らしい気持ちになりました。
■児玉会頭:働きたい街、住みたい街に選ばれる理由は色々あると思います。高崎は都市開発が加速し、インフラが整備され、「ヒト・モノ・情報・文化」が行き交う街として発展しています。郊外においては豊かな自然環境を保持している街でもあります。
■富岡市長:高崎は街の活力があって、めきめき伸びてきていることをビジネスマンは知っているということですね。
■児玉会頭:働き盛りのビジネスパーソンに高く評価されて大変ありがたい。
■内山社長:高崎市は私の出身地ということもあり、入社した当時からずっとウォッチングを続けています。高崎市の発展は私にとっても大変な喜びです。
■富岡市長:この勢いを官民が力を合わせて進めていきたいと心から思います。
■児玉会頭:更に上位をめざしましょう。
※(注)働きたい街ランキング2018(DODA調査)。20歳代から50歳代のビジネスパーソン15,000人に調査。ディズニーランドがある舞浜と並んで高崎が20位にランクイン。北関東では唯一トップ20に入った。
魅力づくりが成功し歩行者回復
■内山社長:私は学生時代にまちなかの喫茶店「あすなろ」に通いました。あすなろの隣に学陽書房という書店があって、本を買ってから、あすなろの一番奥にあった音楽鑑賞室に行き音楽を聞きながら本を読むというのが楽しみでした。
■富岡市長:かつては埼玉県北部の人も高崎に買い物に来ていました。ところが今では高崎の人も、高崎ではなく大宮に買い物に行くと聞いて高崎市長としてはなんとかしてやろうと思いました。
■児玉会頭:高崎アリーナが竣工し、高崎オーパが開店し、高崎髙島屋や高崎モントレーも改装され、駅の周りがにぎやかになっています。
■富岡市長:若者たちは、魅力のあるまちに集まってきます。例えば渋谷に行こうという感覚で、高崎に行こうと若者を引きつけるまちにしていきたい。その努力がかたちになって、ここが高崎かと思うほど魅力的なまちに変わってきたと思いますが、いかがでしょうか。
■児玉会頭:高崎は飛躍的な発展を遂げています。高崎を訪れる方々が高崎駅に降りて、洗練された都市だと感じていただけるのではないかと思います。
■富岡市長:とてもうれしいです。高崎はきれいなまちとよく言われます。特に東京の経済人、海外のアスリートが「まちが美しい」「ビューティフル」と言うのです。風光明媚なすごい観光名所があるわけではないし、最初はとても不思議だったのですが、路地に入ってもごみが落ちていなくてきれいだと言うのです。確かに高崎まつりの花火大会の翌日にも、まちにはごみ一つ落ちていない。市民やボランティアの学生がきれいにしてくれています。そういうことが経済界でも話題になっているのでしょう。
■児玉会頭:商店街も商店リニューアル補助金を活用して特色を出していますし、まちが活気を取り戻していると実感しています。
■富岡市長:高崎には6,200店もの商店がありますが、調査したら半分が「もう商売をやめたい」という答えでした。では何をしたら続けられるのか聞いて回って創設したのが商店リニューアル補助金です。改修して店が明るくなったら、今まで電球しか買いに来なかったお客様がテレビなども買ってくれるようになったとかビジネスチャンスにつながっているそうです。チャンスが生かせる店づくりを応援することが大切だと思います。
■児玉会頭:市街地でのイベントや当所が高崎市から委託を受け実施している「高チャリ」や「高カフェ」など、大小さまざまな取り組みが相乗効果を生み出しています。昨年10月に実施した最新の通行量調査では、前回よりも3割増加しているそうですね。
■富岡市長:市街地の通行量調査を2年ごとに行い、中心市街地42カ所を定点観測しています。戦後、一貫して通行量は減少してきましたが、この数年、反転して通行量が増えてきました。今は昭和50年と同じ水準になっています。色々なことを仕掛けてきた結果と思っています。
■児玉会頭:この流れを定着させるには、行政と商工会議所、商店街や商店主が一体となって、魅力ある街づくりに取り組まなくてはなりません。高崎に行くと心地いいよねと言ってくださるような都市にしていきたいですね。
高崎のまちが劇的に変わる
■富岡市長:交流人口を増やし、元気な高崎にするための施策がスポーツと文化です。2020年の東京オリンピックに向け、高崎アリーナには国際大会が次々に入っています。今年、テレビの全国ネットで放送される全国大会だけでも既に6大会が入っています。新幹線の乗客が大会の観戦者ばかりだったという話が聞こえるほど、高崎のまちが劇的に変わっています。
■児玉会頭:高崎アリーナが高崎駅至近にできたことで、交流人口が増加し、高崎市への経済効果も大きい。これをビジネスチャンスと捉え、高崎市の都市ブランド力向上や、地域経済の活性化につながることを期待しています。
■内山社長:昨年の12月5日に上毛新聞の一面に「高崎芸術劇場が9月20日に開館」という記事がありました。私は高崎芸術劇場の立地場所近くで育ちましたが、昔の東口はさびしい所でした。私の家の周りは田んぼで、夜になると真っ暗で恐い感じでしたが、そこが大きく変貌し、隔世の感があります。
■児玉会頭:高崎駅東口から高崎芸術劇場が望め、ペデストリアンデッキで直結されるので、高崎の新たなランドマークとして認知され、都市イメージの向上につながるでしょうね。
■内山社長:高崎芸術劇場の記念演奏会として、群馬交響楽団と高崎第九合唱団がベートーヴェンの交響曲第9番、歓喜の歌が演奏されるというので、私はとても感動しました。ぜひ私も演奏を聴きたいと思っています。
上毛新聞社の社長が群響の副理事長を務めることになっていますけれど、それとは別に、一人のファンとして群響を聴いています。群響は地方オーケストラの草分けで、群響を題材にした映画『ここに泉あり』は岸恵子さんが主演し、音楽と映画が高崎の代名詞となりました。昭和36年、「ときの高崎市民之を建つ」と群馬音楽センターができ、その延長線上に高崎芸術劇場ができるのだと私は思っています。高崎芸術劇場が更なる文化発展の礎になることを期待しています。
■児玉会頭:高崎芸術劇場は、群馬音楽センターの歴史を継承して、市民文化を育み、高崎を発展させると思います。
■富岡市長:高崎に群馬交響楽団があることで、「音楽のある街・高崎」を標ぼうしてきましたが、まちなかに音楽があふれているとは言い難い面もありました。高崎芸術劇場によって、本当に、音楽が日常的にあるように仕掛けていこうと考えています。高崎にトップアーティストが来れば、若者の刺激となり、文化的な活動が活発になってほしいという一心です。
■児玉会頭:市街地通行量調査が示すように、高崎の中心市街地は集客力が高まっています。ここに高崎芸術劇場が加わりますと、駅の東西エリア両方の回遊性がこれまで以上に広がっていくでしょう。
■富岡市長:高崎には芸術文化に対する市民の飽くなき情熱があります。市民展は83回で戦前から続いており、シティギャラリーの申し込みも希望者が多くて抽選になり、大変なようです。こんな地方都市は、そうはないと思います。
■児玉会頭:立派な器ができれば、器を求めて優れた演奏家が集まってくると思います。
交流人口・就業人口を定住人口に
■富岡市長:高崎市の交流人口と定住人口をバランスよく伸ばしていきたいです。高崎の交流人口は増えています。商工会議所ががんばってくださっていることもあり、毎年、高崎の就業人口が2千人も増えています。こんな地方都市はありません。高崎で働いている人で、住まいが市外の人が7万人いますが、前橋から1万7千人、藤岡と伊勢崎がそれぞれ5千人、埼玉からも毎日2千人が通勤しています。横浜や東京など首都圏から高崎に赴任している人もいます。
■児玉会頭:高崎市は交通の要衝であるとともに、医療・福祉などの社会インフラも整備され、企業にとっては、正に好立地となっています。目立った自然災害もなく安心して工場を作れる環境にあります。また市長自らトップセールスを活発に行っていただいており、企業が高崎を選ぶ理由の一つになっているのではないかと思います。
■富岡市長:就業者が増えれば人口も増えると思っていたのですが、期待通りの定住人口に結びついていません。郊外の方が地価が安く、若い人が高崎に住まないこともありますが、高崎に住むようにしていきたい。医療や教育の充実も必要です。経済の拡大と交流人口の拡大は予想を超えて実現できました。高崎に住んでもらうために何ができるか、平成という時代の反省であり、課題として取り組んでいきます。
官民で高崎独自の工夫を
■富岡市長:高崎は、これまで一貫して交通拠点性を強みとしてきました。しかし交通拠点性だけでは不十分だと私は考えています。
■児玉会頭:高崎アリーナや高崎芸術劇場のようなハード、高崎映画祭や榛名山ヒルクライムのようなソフトの両面で人が集まる仕掛けが必要です。
■内山社長:32年前、上毛新聞創刊100周年記念として、今は作家になっている横山秀夫さんと私が「21世紀への道」という長期連載を書いたことがありました。その時に関越自動車道、上信越道、北関東道の十字軸構想を書き、実際にそうなりました。上越新幹線に続いて北陸新幹線が開業し、高崎はその分岐点になりました。新幹線の分岐点になっているところはミニ新幹線を除き、日本の中で大宮と高崎だけです。日本列島のど真ん中、十字軸の真ん中に高崎が位置し優位性が強まっています。
■児玉会頭:その強みを活かすためにも、高崎のブランド力の向上が必要です。東京オリンピックも来年に迫っています。知恵を絞ってほしいと市長からも言われていますので、今までにも増してがんばりたいと思います。
■富岡市長:高崎には一日行程の観光地がありません。ですから知恵を出す方向も、他の観光地と高崎は違うと思います。アリーナや芸術劇場と組み合わせる必要がある。
インバウンドや宣伝も今までの手法ではダメで、パンフレットを置いていても読んでもらえません。SNSを使った手法や高崎独自の工夫をしないとだめだと思っています。商工会議所にも無理を承知でお願いをしていることもあります。
アグレッシブな都市が反応を呼ぶ
■富岡市長:市政の全分野を見直し、やれることは何でもすぐにやろうと思っています。高崎はすごいな、アグレッシブだなというイメージを出していくと人も来る。やれば反応がある。
■児玉会頭:活力ある都市として高崎が全国に発信していく条件が整いつつあります。ビジネス都市高崎は、これまで以上に期待が寄せられるでしょう。当所も市長に負けないスピード感をもって、高崎市と連携をとりながら取り組んでいきたいと考えています。
■内山社長:今年はイノシシ年です。12年に一度、統一地方選と参議院選が重なる年です。選挙は民主主義の基本ですから、報道に社の力を結集していきたい。高崎支社は商工会議所の近くにあり、高崎市のまちづくりにつながるようなイベント、事業をしかけてもいいのではないかと思っています。高崎市民とともに高崎市を盛り上げていきたいと考えています。
高崎商工会議所『商工たかさき』2019年1月号