座談会 キングオブパスタを語る 今だから言える舞台裏
(2018年11月30日)
左から清水実行委員長、青島会長、井上事務局長。優勝店に贈られるキングオブパスタの記念だるま。
キングオブパスタへの思いを実行委員会の青島真一会長、清水大助実行委員長、井上幸己事務局長に語り合ってもらった。
キングオブパスタの始まり
■青島:2007年の第33回高崎まつりで「テイストオブたかさき」の企画が始まり、その年がB級グルメ、翌年の第34回はスイーツがテーマでした。第35回高崎まつりの実施本部長が事務局長の井上幸己さんです。「テイストオブたかさき」は高崎青年経営者協議会が担当し、その部門長が私でした。
自分としては、やるならパスタしかないと考えていましたが、真夏にパスタということで、会議での感触は悪かった。
■井上:私は青島さんに思いきりやってくださいとお願いをしていたので、青島さんからキングオブパスタの企画を聞いて、いいなと思いました。ただ、最初は、行政からはスパゲティはゆでるのに時間がかかるとか、前例がなくできるわけがないという意見もありました。
■青島:そこで裏付けを作るため、パスタ店を回って協力をお願いしました。お願いするには、まずパスタを食べてからでないと失礼になると考え、食べてお願いをしようと一日3店舗、全部で70店を回りました。
準備期間は限られていたのでお昼に2店回ってパスタを食べたこともありました。そうする中で10数店に参加してもらえると約束ができました。更にセーブオンに行って、もしかしたらパスタのイベントをするかもしれないので優勝店のメニューを商品化してもらえませんかと直談判したところ、快諾してくれました。
■井上:青島さんが出店を決めてきて、お店が出てくれるというのだから、やるしかない。
■青島:実施本部のみんながとても協力的で、これは絶対に成功するなと強く確信していました。お店の方も楽しんでくれて、お金儲けというよりも高崎パスタを盛り上げるという気持ちで参加してくれました。
■井上:「テイストオブたかさき」も3回目となり、この年の企画が鳴かず飛ばずならやめようということになっていた。もう最後だと思っていたので、青島さんに「次はないから自由に思いきりやってください」と任せたのが良かった。開催場所も、他の部門との関係で、それまでの音楽センター横から、もてなし広場に移ることになりました。
■青島:当日は小雨でしたが、大盛況で食券もあっと言う間に売り切れました。この時は高崎まつりの補助で価格も安くて、10店舗のパスタが400円で食べられたのです。二日間で1、800食が出ました。
最初は「仮称キングオブパスタ」だったのですが、会議で何度もキングオブパスタと言っているうちに、しっくりと口になじんで正式名称になりました。1回目からチラシやポスターのキービジュアルに私が使われています。今だから言えるのですが、時間がなくて実施本部長の決済を得ずに印刷してしまったのです。
■井上:青島さんに任せていましたから。
第2回は高崎青年会議所の事業に
■井上:キングオブパスタは、本来からするとその年だけのイベントでした。キングオブパスタはお祭りの部門としては規模が大きくなりすぎたので、翌年の高崎まつりから切り離されました。受け皿となる団体もないので、キングオブパスタは実施しないということになったのです。
ところが高崎市役所から「市民から今年はいつやるんだと要望が来ている。どうにか実施してほしい」ということに。そこで高崎青年会議所(以下高崎JC)が一回だけ助け舟を出すことになって、高崎JCの例会として第2回キングオブパスタが行われた。その時の委員長が清水大助さんです。
■清水:高崎JCの活動で、観光を考える委員会の委員長となり、高崎の観光って何だろうと考えていました。前年の第1回キングオブパスタを外から見ていて、食観光の大切さも感じていました。高崎は観光の最終目的地になりにくく、温泉に行く道中で高崎に降りてもらって、お金を落としてもらう仕組みがあればいいと考えていました。「パスタは観光資源」という視点で、第2回を実施しました。イベントの中身はできていたので、どう発信していくかを重点にしました。
まちづくりの思いが結実した第3回
■青島:JCの応援もこの第2回だけなので、終わりにして幻のキングオブパスタになってもおかしくなかった。2011年の第37回高崎まつりの時に、第35回高崎まつりの実行委員メンバーで飲み会をしました。その時、井上さんや酒井裕次さん(故人)が私のところに来て「キングオブパスタをやらない? 全面協力するから」と言うのです。この飲み会にいた第35回高崎まつりのメンバーや、清水さんたちにも加わってもらって第3回キングオブパスタの実行委員会を立ち上げたのです。その年の高崎まつりが終わってから準備をすることになりました。
■井上:よく考えると実行委員会に飲食業のメンバーが一人もいなかった。
開催日は単純に食欲の秋ということで、イベントとしても盛り上がりそうなので11月3日にしました。もてなし広場も空いていて、先延ばししても冬は寒いので。
■青島:実行委員会の初めての会議が8月末でしたから、実質2カ月しかなくて、そこからが急ピッチでした。この2カ月間は濃かったですね。
■清水:今思えばよく開催できたと思います。
■青島:会議が午後7時から始まって、終わるのが午前2時。
■井上:家に帰ったら新聞の朝刊が配達されていたり。
■清水:パスタ店回りも忙しかった。
■井上:地図を広げてローラー作戦でパスタ店を回り、お昼にパスタを食べて協力をお願いし、名刺を置いてきました。
■清水:動いてつながりを作る中でスポンサー企業の協力も広がってきたと感じました。
■井上:全員のノウハウが総動員でしたね。
■青島:この第3回で作った仕組みが、それ以降に受け継がれています。
行列がもてなし広場を一周
■青島:3回目の当日、お客様の列がもてなし広場をぐるっと回った時は、恐ろしかったです。3時間待ちの方もいて申し訳なかったです。
■清水:この日は、ゲートに立って一日中、頭を下げて謝っていました。
■青島:本部にもクレームが来ました。
■井上:行列ができて歩道をふさぐと歩行者が通れなくなるので、対応してくれと区長さんに言われました。
3回目が終わってすぐに、第4回のことを高崎市役所に相談したら、もてなし広場が土日曜、全部埋まって空いてない。高崎競馬場跡地は広くて駐車場もあっていいのではないかと関係者に相談したら、できそうだということになった。場外馬券の主催者と協議を重ね、協力も得られて、第4回は競馬場跡地の開催となった。
■青島:すると、今度は何でまちなかでやらないんだと怒られました。
■井上:高崎市がまちなか活性化として開催してほしいということも受けて、第5回からもてなし広場に戻りました。今後ももてなし広場に集まる1万人の来場者がまちなかを回遊するよう、商店街と連携していきたい。
パスタのまち高崎の象徴イベント
■清水:最近は、高崎のパスタが全国に浸透してきたと思います。
■青島:最初は「高崎ってパスタなの? 知らないよね」という反応でした。否定的な意見もありました。それが徐々に変わって第6回くらいになると「高崎はパスタのまち」と市民が発信してくれるようになり、浸透してきたなと実感できるようになりました。
■清水:メディアの取り上げも増えました。
■井上:「パスタのまち高崎」というキーワードは、キングオブパスタよりも前からあって、一部の地元経営者たちの間で定期的にパスタを食べる会が行われていました。キングオブパスタを継続することによって、「パスタのまち高崎」のわかりやすい象徴になったと思います。「パスタのまち高崎」を定着させたのは、キングオブパスタの力だと思います。
■清水:第10回は感謝祭の意味も含まれていますので、本当に楽しんでほしいです。11回からどうしようか考えるとキリがないのですが、イベントが目的ではなくて、パスタのまちとして動き出す仕組みを投げかけ、広がりのある活動ができればいいなと思っています。
■井上:今までキングオブパスタに足を運んでくださった方にも、初めての方にも来てほしいと思います。感謝の思いでお迎えします。11回目以降のキングオブパスタにつながるよう、この第10回を盛り上げていきたい。
■青島:ここまでやってこられた感謝の気持ちで、第10回に臨んでいます。無理とも思えるチャレンジをやってきたので、これからもチャレンジ精神を発揮したい。来場者も、我々も楽しく、しかも驚かせるようなキングオブパスタにしていきたいと思っています。
高崎商工会議所『商工たかさき』2018年10月号