全国814市の制覇が目標 中里スプリング製作所

(2018年10月29日)

たかさき産業祭2018ものとぴあ特集

スプリング一筋に70年

 

産業祭では毎回個性あふれる展示で来場者を楽しませてくれる中里スプリング製作所。スプリングを使ったアート作品等の展示が印象的で、同社のブースが記憶に残っている人も多いのではないだろうか。今回も家族連れで楽しめる展示を準備しているそうで、中里良一社長は「ぜひ当社のブースに立ち寄ってください」と笑顔で話している。

中里スプリング製作所は社名のとおりにスプリング、バネの専門メーカーで、1950年(昭和25)の創業以来、スプリング一筋に歩んできた。自動車、医療、玩具、精密機器など、あらゆる分野にスプリングは使われており、製造しているスプリングは年間に2万種類に及ぶそうだ。

本社を高崎市上中居町、工場を甘楽郡甘楽町に置き、地域産業の発展に貢献。中里社長は「日本一楽しい会社」「日本一の町工場」をテーマに全国で講演を行い、個性派中小企業として新聞やテレビなどメディアにも数多く取り上げられてきた。甘楽町の工場・ショールームには遠方からの商談や見学者も多く、中里スプリングの知名度は高い。

 


 

 

100年企業へ 全県制覇から全市制覇へ

中里社長は大学を卒業後、都内の商社に就職。営業マンとしてやりがいを感じていた矢先、父から同社の経営を手伝ってほしいと呼び戻され、33歳で同社の経営を引き継いだ。単価を叩かれ、経営は苦しくなっていた。この時の経験で「設備力を使った大量生産では大手と勝負にならない」と考え、「がんばった社員は嫌な取引先は切っていいようにしよう」と個性的な経営に打って出た。新たな取引先の開拓と収益性の改善に取り組み、メーカーとして「中里スプリング」ブランドの確立をめざした。

顧客のニーズに応えるアイデアと技術力、企画力で〝中里〟の評価が広がった。それまで標準的な規格が無かったスプリング分野に、24タイプ1万2千種の規格製品を投入するなど、同社ならではの経営戦略と製品コンセプトを打ち出している。顧客からの特注品は、形状や弾性などの要望に応じ、最適なスプリングを提案できる技術力が中里の強みだ。工場内は機密保持のために非公開となっている。

中里社長は、47都道府県全てに取引先を開拓することを目標に積極的に事業を展開してきた。都道府県制覇の目標を達成すると、全国814市区の制覇を次の目標に掲げた。全国に顧客展開する経営メリットは、地域や業種・業態を多様化させ、一社への依存度を低減して経営リスクの分散をはかることにもある。現在434市に取引先を持ち、中里社長は全市制覇の達成を子息の3代目中里保史常務に託している。

「戦後の町工場からスタートした中里スプリング。2050年には創業100年となり、地域の老舗企業の仲間入りをしていきたい」と社長と常務は次のビジョンを描く。

 

 

遊び心を通じて技術力アップ

甘楽町工場1階にワイヤーアートのショールーム「ばね鋼房」が開設されている。同社の社員が制作した知恵の輪やキーホルダーなどワイヤーを使った小物やアート作品が展示されている。同社では社員の創作活動を奨励しており、敷地のあちこちに思わず笑ってしまうような楽しい作品が置かれている。制作には工場設備を自由に使える。制作を通じて技術の向上、新技術への挑戦ができ「多能工の育成や世代間の技術継承につながっている」と中里社長は語る。スプリングで作った「書きづらいボールペン」は中里常務イチオシの傑作。

産業祭への出展作品も、こうした創作活動の中から生まれたアイデアを生かしている。中里社長は社員数を28人までと決めており、今後もこの方針で経営していきたいという。「社長に就任する時に自分の欠点を書き出したら28項目あった。社員一人ひとりが私の欠点を補ってくれる存在として考えている。清水次郎長も28人衆です」と笑顔で語る。自分の欠点を補ってくれる社員だから、人事評価は減点法ではなく加点法と決めている。ちなみに中里社長は巨大フィギュアを作るほど鉄人28号の大ファンでもあることも影響しているそうだ。

「非量産型の製品に特化したことが良かった。これからも愚直なものづくりを続けていきたい。現場にヒントがいっぱいある」意欲いっぱいの中里社長・常務親子である。

 


 

有限会社中里スプリング製作所

■中里 良一社長

■本社 高崎市上中居町315   TEL.027-323-2814

■白倉工場 甘楽郡甘楽町白倉393  TEL.0274-74-4156

 

 

 

 

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