群馬を内陸随一の国際拠点県に

(2015年10月6日)

群馬県コンベンション施設計画


 群馬県は、高崎競馬場跡地のコンベンション施設整備について、基本計画の改訂を行い、8月末にメイン施設の面積を1万㎡(将来的に2万㎡)、平成29年度着工、平成31年度中の完成、平成32年度のオープンをめざす案を示した。
 コンベンション施設を起爆剤に群馬のものづくり、観光、文化を発展させ、群馬県が北陸、信越、北関東の中心県として飛躍していくことが期待されている。

■整備計画改訂までの経緯

 高崎競馬が平成16年12月に廃止された後、群馬県は、跡地利用の方向性を検討していたが、平成24年5月に高崎競馬場跡地にコンベンション施設を整備する方針を定め、平成25年3月に施設の基本コンセプト、施設の内容や規模などを取りまとめた「コンベンション施設整備基本計画」を策定。産業界や識者で構成する「群馬県コンベンション推進協議会」が今年2月に、施設規模は第一段階として1万㎡とし、2020年の東京オリンピックまでに開館させることが望ましいなどの意見を提言し、これまでの議論を踏まえた「群馬県コンベンション施設整備基本計画改訂版(案)」が策定された。

「商工たかさき」 2015/9号より

■高崎の経済界・行政も積極的に支援

●高崎の交流人口が1,500万人増加

 高崎市の交流人口は、現在、年間2,500万人とされ、広域的な拠点性を持っている。高崎市は新たな交流人口を創出する都市集客施設として、新体育館と高崎文化芸術センターの建設を進めている。更に、北関東屈指の産業拠点をめざす高崎スマートIC産業団地、新たに発表された市総合卸売市場周辺の大型流通団地、イオンモールが高崎駅西口に計画している商業施設、群馬県のコンベンション施設が完成すれば、高崎市の交流人口は、年間1,500万人増加し、最低でも4,000万人台になると考えられている。
 高崎市の発展は群馬県の発展でもあり、高崎の産業界からは県のコンベンション計画の推進を歓迎する声が聞こえている。高崎商工会議所も高崎市とともに、県のコンベンション施設計画への連携をはかっていく。
※高崎駅東西の集客施設の予定
・高崎市新体育館(平成28年度開館)
・イオンモール高崎駅前(平成29年秋開館)
・高崎文化芸術センター(平成30年度開館)
・県コンベンション施設(平成32年度開館)

■コンベンションは新しい群馬のシンボル

●群馬・高崎に不可欠な施設

 これからの群馬県にコンベンションは欠かせない機能といえる。全国的に見て、現状の群馬県のコンベンション機能は、他県と比べて見劣りするのが実情だ。コンベンションは重要な企業戦略に位置付けられていることが多く、同じ誘致条件であれば、コンベンションなどビジネス環境が整った県が選択されることも想像できる。
 コンベンションという切り口で都市を見ると、政令指定都市、地方拠点都市は、コンベンションシティと言える。高崎市は「コンベンション施設は、高崎市がめざす広域交流、ビジネス拠点の形成に必要な機能」としており、これからの高崎にも不可欠な要素となる。

●内陸最大・エリア最大規模の施設

 コンベンション施設では「東京国際フォーラム」、「東京ビッグサイト」、「幕張メッセ」などが国際的にも有名だが、大きなコンベンション専用施設は7〜8万㎡で東京と大阪に限られている。展示場・会議場の複合施設としては、横浜、名古屋、神戸、福岡などの施設が知名度が高い。
 現在、群馬県内のコンベンション専用施設は、展示面積2,000㎡の「ビエント高崎展示会館ビッグキューブ」だけだが、前橋競輪の「ヤマダグリーンドーム前橋」は5,000㎡のアリーナ部等があり、コンベンションやイベントの利用にも力を入れている。群馬県内のコンベンション施設は、この2つだけで、群馬県は「本県のコンベンション開催基盤は極めて脆弱である」と考えている。
 群馬県が計画した展示場面積1万㎡は、全国の中でも高水準で、県が将来計画として示している2万㎡が実現すれば、展示スペースとしては、現在の「パシフィコ横浜」に匹敵するので、全国的にも指折りの施設になりうる。専用施設では近県にとどまらず埼玉以北、内陸部で最大級とも言えるものだ。

●群馬の国際化を推進

 大規模なコンベンション開催では、東京、大阪、横浜など6大都市クラスが群を抜き、ロケーションも沿岸部が好まれる傾向がある。こうした都市は、もとより知名度がありコンベンションシティとしてもブランドと実績を備えている。異国情緒の横浜、アジア圏とのつながりが深い福岡は、都市イメージに加えコンベンションによって国際都市としてのブランド力を高めている。
 かつて晴海(東京都)と言えば見本市の代名詞で、幕張(千葉県)という地名はコンベンション施設によって全国に知られるようになった。また、見本市ではないが、学術的な蓄積の大きいつくば市(茨城県)では、会議施設の充実も合わせ国際会議のブランド力が高い。つくば市は、都内からの時間距離にすれば高崎と変わらない。
 コンベンションは、外部からの集客を主とするので、感度の高い都市としてのブランド力を自ずと高める働きがあり、ブランド力が更に人を集める。高崎市が内陸最大のコンベンションシティとしての都市ブランドを高める大きなチャンスとなる。

●群馬と高崎の経済・文化圏の求心力向上に寄与

 産業見本市の開催は、地方経済圏の中心都市、流通の中心都市としての力を示すもので、ビジネス都市高崎の求心力を高めることが期待できる。
 エンターテイメントについても同様で、芸術・文化の中心都市として、これまで蓄積した高崎の都市ブランドを更に高めることもできる。また、若者文化や映画、アニメなどのサブカルチャーにおいても、高崎は注目されている。サブカルチャー系のコンベンションは多様で、コアなファンが全国から集まってくる。

●新幹線に直結した多様な大型交流拠点施設

 高崎市の新体育館、高崎文化芸術センター、県のコンベンション施設は、全て高崎駅新幹線改札から徒歩圏内の最高の立地にある。新幹線に直結し、スポーツ、芸術、ビジネスの3つの大きな交流拠点施設を備える都市は全国でも少なく、イベント誘致や集客の上で大きな力を発揮できる。広い床面積を要するコンベンション施設は郊外に建設されることも多いので、新幹線から徒歩圏内の高崎競馬場跡地の立地は、全国的にも利便性の高い施設となる。

■北陸・信越・北関東の拠点県に

●群馬県の発展と都市の発展は一体

 県のコンベンション施設計画は、施設を群馬県全体の活性化につなげるもので、広域的、全国的に集客できる規模のイベントが期待されている。
 群馬県は、コンベンション施設建設の背景として、高速道路と新幹線、東毛広域幹線道路の全線開通と高崎玉村スマートICのオープン、JR高崎線上野東京ラインの開通など、交通拠点性の向上を挙げており、これは高崎市の都市集客戦略、ビジネス拠点戦略と大きく重なっている。また、コンベンション施設計画には高崎市の新体育館、文化芸術センターとの連携もうたわれており、相乗効果の期待もふくらむ。

●群馬の活力で広域競争力を高める

 コンベンション施設の利用形態として最も期待されるのは、産業見本市や学術会議で、商取引や技術のマッチング、新産業の創出など、ビジネスに直結する分野である。群馬県内には、グローバル企業や優れた地元企業が集積し、群馬の基幹産業として県の発展を牽引している。コンベンション施設は、こうした県内企業を成長させるための役割を担う。
 群馬県は、「これから50年の群馬県をはばたかせる社会インフラ」とコンベンション施設を位置付けている。群馬のはばたきが北陸、信越、北関東の発展に寄与し、広域的な役割を担う拠点県として力を発揮することが望まれる。

■群馬の交流人口の増大と集客サービス産業の活性化

●オリンピックイヤーに開館

 群馬県が8月に示した「群馬県コンベンション施設整備基本計画改訂版(案)」によれば、中心となる多目的展示施設は、まず1万㎡で建設し、後に拡張して2万㎡にすることが示されている。1万㎡は「ビエント高崎展示会館ビッグキューブ」の5倍の面積となる。
 併設する会議施設では1千人規模のメインホールの他、大中小の3会議室を備え、駐車場は2千台となっている。
 2020年の東京オリンピックまでに開館させる考えで、平成29年度着工、平成31年度中の完成、オリンピックイヤーの平成32年度のオープンをめざす。コンベンション施設のイメージ図については今後となり、今回示された基本計画改訂版には掲載されていない。
 概算事業費は約280億円。運営収支は年間収入額約5億600万円、支出額約4億1,200万円で9,400万円の黒字を試算した。
 整備手法では、改訂前は、民間活力を導入したPFI方式(民間が事業主体として資金やノウハウを活用して公共事業を行う方式)も検討されていたが、改訂後は設計、建設など段階ごとに群馬県が事業者に発注する従来型の整備方式とされた。

●県内観光消費を2%押し上げる

 コンベンション施設で開催される催事では、展示会・見本市や学術会議に加え、大規模コンサートなども含み、これまで群馬県で開催できなかったイベント需要の創出をめざす。新たな需要により群馬県の交流人口を増やし、県の活性化に結び付けていく狙いだ。
 群馬県の試算で、コンベンション施設の年間来場者は96万7千人、県内への経済効果は、直接効果が82億5,700万円、間接効果が45億2,200万円で、合計127億7,900万円が示された。
 コンベンション施設の年間来場数96万人は、県内への年間観光入込客数6、150万人(平成25年度)の約1.5%、高崎市の観光入込客数535万人の18%に相当する。
 また、経済波及効果では、直接効果の内、来場者の直接支出として49億円が試算され、県内の年間観光消費推計額1,891億円の約2%となる。県が試算した経済波及効果から、高崎だけの波及金額を見ることは難しいが、観光入込客数の伸び18%を高崎市内の観光消費推計額167億円に当てはめると30億円となるので、数十億円程度の波及効果の可能性がある。見本市などによって企業のビジネスチャンス拡大に加え、コンベンションに関わる業態はすそ野が広いため、新規雇用の創出も期待できる。

●県内の文化や産業、観光リゾートのブランドを融合

 県では、経済のグローバル化が進展し、国際的な展示会、国際会議などのコンベンションは、群馬県が進める国際戦略に資するものとしている。また、コンベンションやコンサートの開催で来県者が増え、群馬のイメージアップ、知名度の向上につながることが期待されている。開催されているコンベンションが全国メディア、海外メディアで紹介されれば、大きな宣伝効果が期待できる。
 群馬県の産業力は全国に誇るものであり、草津・伊香保・水上の三大温泉や高原リゾートが持つ観光の魅力も極めて大きい。コンベンション施設は、こうした群馬の力を融合し、増幅させるもので、また、そのように機能させていかなければならないだろう。

■高崎の街中をエキサイティングに演出

●都市景観や防災力=高崎の責任も重大

 大きな集客に伴い、安心安全な都市基盤整備がより一層求められることになる。万が一に備えた消防、救急、避難者の救援など、集客施設を見守る高崎市の役割も重みを増してくる。
 また、新体育館、高崎文化芸術センターも含め、イベントやコンベンションの来場者は、非日常の空間を楽しみに来るので、少なくても高崎駅と会場までの景観演出は、非常に重要だ。コンベンション主催者によっては、施設内にとどまらず、まち全体で歓迎を演出する要望もあるだろう。高崎映画祭や高崎音楽祭の季節はシンフォニーロードにフラグを掲げ、高崎駅東西にイベントの看板が置かれて、にぎわいを演出している。話題性の高いイベントであれば「まちが○○で一色に」といった盛り上がりが来場者の心を躍らせ、高崎のイメージアップになる。逆に何も無いと、来場者を落胆させるかもしれない。フラグや看板、誘導サイン、フラワーポットの設置など、主催者の要望に応じていくこともコンベンションの街として必要だ。

●横浜に並ぶコンベンションシティをめざせ

 コンベンション施設建設は、群馬県で初めてのことであり、県も需要調査を行ってきたが、数字については厳しい見方も出ている。これまでにない需要を創出する施設であるので、「鶏と卵」の議論を思わせる感もあり、着地点を見出すために時間を要した。
 もちろん適正な施設規模と運営計画は必要だが、極論すると、コンベンション施設は、県のブランド力を示す存在であることが重要だ。
 その上で、主催者にも来場者にも選ばれるコンベンションシティとなるためには、宿泊施設や交通の便、周辺観光、市民の協力体制など多くの要件が加わると言われる。海外客を受け入れるための人材確保、コンベンションを支える産業の育成、集客を県内に波及させるための仕組みづくりなど、やるべきことが山積している。
こうした課題をクリアする過程で“都市力”、“市民力”が高まり、高崎の魅力が一層輝くと言える。コンベンションはビジネス都市として高崎が求めてきた機能であり、成功させるためには横浜などと並ぶほどの意気込みが必要だろう。

(商工たかさき・平成27年9月号)

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