挑戦する老舗企業(2)金澤屋商店
(2017年08月8日)
眠る道具としての寝具を提案
●時代の変化で既製品が主流に
天保7年(1836)に創業。初代・本木庄次郎氏が本町で綿打ち商を始め、今年で181年を迎える。代表取締役を務める本木毅さんは7代目。
「かつて、布団は買うものではなく家で作るものでした。綿打ち商は綿打ち職人を家庭に派遣し、その場で必要なサイズや数に合わせて布団用の綿を打っていました。原綿を仕入れ、手でほぐしながら品質によって混ぜ合わせる。その割合は企業秘密でした」と説明する。
昭和30年頃になると、合繊綿の入った安価な既製布団が徐々に出回るようになり、手間暇かけて綿の打ち返しをするような家庭は減っていった。こうした流れを受けて、同店では昭和46年より卸売業に力を注ぐようになった。
しかし、「色や柄などで選ばれることが多く、布団の中身についての知識がなくても既製品は売れました」と言う。本木さんは寝具の製造販売を手がける大手企業に5年ほど勤め、商品の見せ方や売り方などマーケティングの知識やノウハウを学び事業を継いだ。
●原点回帰で「あつらえる寝具」
しかし、モノがあふれる時代、家業を継承するに当たって、本当に必要なものを必要な数だけ作り、必要とする人に提案していきたいという想いを強くし、製造小売業という業態への転身を進めた。
「住環境の改善に伴い、掛布団よりも体を支えるマットレスやベッド、枕などに目が向けられるようになりましたが、個々の年齢や筋肉、関節など身体的な状態により、寝具に求められる機能は人それぞれです」という認識から、顧客一人ひとりに向き合う“お誂え”という創業の原点に立ち返り、“眠る道具としての寝具を提案する”というコンセプトを明確にした。
●眠りを体感できる専門店に
海外にも定期的に足を運び、モノづくりの姿勢に触れ、優れた機能をもつ製品を調達。また、志を同じくする小売店を募り、共同輸入によるコスト削減の道をさぐる。“あったらいいな”をオリジナル商品化するなど、良きセレクターとしての存在価値に磨きをかけている。
「自分たちで考え行動することでワクワク感が膨らみ、それを発信していく拠点がショップ。若い世代にカッコいいと思ってもらえるようなショップ運営でないと生き残りは難しい」。
古くからの建物を改築した店舗に靴を脱いで上がり、明かりや湿度をコントロールした環境のもと、寝具に体を横たえて「眠る」を体感できる空間が広がる。
「起きている間の3分の2の暮らしを充実させるために必要な休息」。眠りを支える道具を扱う寝具専門店として、その役割を果たしていく。
代表取締役 本木 毅さん
株式会社 金澤屋商店
創業:天保7年(1836)
高崎市本町65
TEL:027-322-3571