第31回高崎映画祭授賞式

(2017年03月27日)


映画がつくる出会いと絆

 第31回高崎映画祭授賞式が26日に群馬音楽センターで行われ、登壇した豪華な受賞者の顔ぶれが、満場の来場者を沸かせた。
 授賞式には15人(代理含む)と、映画や高崎映画祭に対する思いを語った。受賞者を祝って飛び入りで2人の監督が登壇し、高崎映画祭ならではの授賞式を盛り上げた。
 また授賞の特別プレゼンターをソフトボールの宇津木妙子元日本代表監督、宇津木麗華日本代表監督、上野由岐子選手がつとめ、映画祭に華を添えた。
 第31回高崎映画祭は、3月25日(土)に開幕し、4月9日(日)までの16日間の日程で59作品が上映される。
受賞者のコメントの要旨は次の通り
 
●最優秀新人男優賞 吉澤太陽さん「海よりもまだ深く」
 今回の賞は自分だけの受賞ではなく、是枝監督をはじめ、映画に携わってくれた全ての方々のおかげと感じており、感謝しています。ぼくにとって初めての賞で、すばらしい賞をいただきありがとうございます。
 
●最優秀・新人女優賞 伊東蒼さん「湯を沸かすほどの熱い愛」
 私は「湯を沸かすほどの熱い愛」がすごく好きです。この映画で賞をもらえたことがすごくうれしいです。私がこの賞をもらえたのは、この映画で共演したみなさん、スタッフさんがいつも近くにいて応援してくださったからです。本当にありがとうございました。
 
●新進監督グランプリ 小路紘史監督「ケンとカズ」
 「ケンとカズ」に、そしてぼくにこのような賞をいただき本当にありがとうございます。本当にたくさんの応援と協力があって、今日、ここに立てました。ケンとカズ役のカトウ・シンスケ、毎熊克哉が同じ映画祭の賞をいただけるのが一番うれしいです。本当にこの賞は光栄です。ありがとうございました。
 
●最優秀新進男優賞 毎熊克哉さん「ケンとカズ」
 こんなすばらしい賞を与えてくださってありがとうございます。高崎での上映に来てくださったお客様、ありがとうございます。この映画は長い歳月をかけて大事につくった映画です。正真正銘の自主映画なので、密に話し合って濃厚な人間関係を、この映画に関わったみんながつくってきました。3人そろって高崎に来られたのが本当にうれしいです。また高崎に帰って来られるようがんばります。
 
●最優秀新進男優賞 カトウ・シンスケさん「ケンとカズ」
 まさか個人で賞をもらえる日がくるとは思っていませんでした。「ケンとカズ」に関わってくれた皆様、観に来てくれた皆様のおかげでいただけた賞だと思います。
 ぼくは未熟な人間なので個人で賞をもらったことがなく、みんなでつくる映画や演劇をやりながら生きているんだなと実感しています。役者をやっていると孤独なんだな、世の中みんな敵ではなないかと感じることがあり、孤独であるからこそ現場ですばらしい役者さんやロケーションに新鮮に出会え、賞をいただけるパフォーマンスができたのではと思います。この年になって恥ずかしいですが、今日は会場に母親が来ています。賞をいただいて大勢の前に立つこともないと思いますので、日頃、言わないことを言います。ほんとうにいつもありがとうございます。
 
●最優秀新進女優賞 杉咲花(すぎさき・はな)さん「湯を沸かすほどの熱い愛」
 「湯を沸かすほどの熱い愛」は私を含め、映画に携わられた全ての方々が心から作品を愛して、お互いを愛し合って、みんなで苦しんで、乗り越えて、そうやってできた作品が、今度は心から愛してくださるすてきなお客様に恵まれて、本当に幸せな映画だと思います。すばらしい作品に携われたことを再確認できる機会をくださり、今日は本当にありがとうございます。
 私の大事な妹を演じた伊東蒼さんが受賞して、自分のこと以上にうれしくて、記念すべき日に立ち会えて、すごく幸せに思います。人を尊敬するということは年齢に関係ないのだなと感じさせてくれた蒼さんとの出会いは、かえがえのないものになりました。これからも、もっともっとがんばります。今日は本当にありがとうございました。
 
●ホリゾント賞 のんさん「この世界の片隅に」
 このような賞をいただけることに心からうれしく思います。この映画は、たくさんの誠実な人たちの愛情が集まってできたと思っています。この映画を観てくださった皆さんがSNSなどで宣伝してくださって、私自身、感動していました。あたたかく、すばらしい作品に参加できたことを心から誇りに思います。ありがとうございます。
 本当にすずさん役に選んでくださった監督に心から感謝いたします。観てくださる人の中でも、私の中でも、ずうっと大切な映画として残っていくと感じています。今日は本当にありがとうございました。
 
●ホリゾント賞 片渕須直監督「この世界の片隅に」
 控室で、杉咲花さんと伊東蒼さんが映画の中の姉妹のように手をつないでいるのを見て、すごく心があたたまりました。映画をつくるために集まる仲間って、こういうことなのだろうと思います。わずか何十分かの映画をつくるために、何カ月か出会った人たちが、すごく大事な絆を築いて、それがスクリーンに映し出されていくのではないかと思います。ぼくらの場合は、のんちゃんでしたし、原作のこうの史代さんでしたし、スタッフやキャスティングの皆さん、お客様たち、今でも支えてくださっているたくさんの方々のおかげだと思っています。そういうものが、真っ白なホリゾントに絵を描くのだろうと思っています。これからも、そういう出会いを期待して、信じて、やっていこうと思います。今日はありがとうございました。
 
●最優秀助演男優賞 斎藤工さん「団地」
 皆様、「五分刈り」です。「団地」をご覧いただいた方には伝わると思います。とぼけた異星人を演じさせていただきました。人間でない役で賞をいただくのは初めて、個人賞を頂くのも初めてで、自分らしいと思います。阪本順治監督の先見の明だと思います。団地と同じく、藤山直美さん主演の「顔」という阪本作品に刺激され、今、この世界に身を置かせていただいだいていると言っても過言ではありません。阪本組で受賞できたことに心から光栄に思います。日本映画のかゆいところに手の届く映画祭、高崎映画祭。一映画ファンとしても本当に感服しておりました。同じ助演で受賞されたリリィさん。本当にあこがれの存在でした。何度か共演させていただいたのですが、リリィさんにしか出せない色、唯一無二の存在でした。リリィさんと受賞できたことを心から光栄に思います。ご冥福をお祈りいたします。ありがとうございます。
 
●「団地」阪本順治監督
 のんちゃんに会えると聞いて来ました。斎藤君は俳優だけではなく、シネマバードという名で被災地などに映画を届けていて、尊敬しています。斎藤君をなぜキャスティングしたかとよく聞かれるのですが、女性誌で抱かれたい男ナンバーワンということで、一回おれも抱かれてみようかなと。斎藤君が受賞したということは、ぼくも受賞したというつもりでいます。本当にうれしいです。
 
●最優秀・助演女優賞 りりィさん「リップヴァンウィンクルの花嫁」
代理宮川朋之プロデューサー
 岩井俊二監督からメッセージを預かっていますので代読させていただきます。
 「20年ほど前、俳優の豊川悦司さんが自ら監督したドラマがありました。彼がリリィさんがすばらしいと絶賛していたのでドラマを拝見しました。そこで初めて演じているリリィさんを見ました。独特の雰囲気ですっかり魅了されてしまいました。それからずっと、いつかご一緒したいと思っていました。それがようやく実現したのが数年前。なぞの転校生で王妃役を演じていただきました。王妃が亡くなるという長いシーンがあり、そこに最終話直前の一話を全て費やし、全話を通しても印象に残る回になりました。
 「リップヴァンウィンクルの花嫁」ではCOCCOさんの母親役を演じていただきました。この母親には個人的体験がありました。あの時期、黒木華さんと綾野剛さんのスケジュールを合わせるのがなかなか難しく、2回のスケジュールが変更になり、リリィさんには大変ご迷惑をおかけしました。ご本人が時間をかけて役を準備しているという話を聞いていただけに、そのたびに気持ちをリセットするのは、きっと大変だったのだと思います。小さな居間で、スタッフもいられない場所で行われた撮影は濃密でした。その後、クランクアップ後の打ち上げにお越しいただき、そこで少し会話できたのが最後になってしまいました。実はもう一作、リリィさんのために作品を用意していました。それが実現しなかったことが今も心残りではありますが、思えば、リリィさんはぼくの作品の中に永遠に生きているのです。なので、ぼくはリリィさんにお別れを言う理由がないのです。ですから、リリィさん、これからも一緒によろしくお願いします、という思いです。岩井俊二。」
 この高崎映画祭は、本当に映画を愛する方々によって運営されている映画祭で、今日、この会場にうかがう前から丁寧にご説明いただいて、本当にあたたかい映画祭と思います。この映画祭でリリィさんが受賞できたことは、リリィさん本人もとても喜んでいらっしゃると思います。天国にいらっしゃるリリィさんにこの賞を届けたいと思います。ありがとうございました。
 
●最優秀主演男優賞 三浦友和さん「葛城事件」
 高崎映画祭、うれしいです。映画の出来、良し悪しというのは脚本で8割方決まると私は思っています。脚本の出来が悪いと、どんな名監督がやっても、いいスタッフ、俳優が集まってもいいものにはなりません。今回の脚本に出会った時にやりたいなと思って、やらせていただきました。試写会の時に自分で観て、自分が出ているとなかなか客観的に見にくいのですが、すごいものができちゃったなと思いました。ただ、これは、こういう華やかな場所に出る作品ではない、ヒットしないだろうなと思いました。フタを開けたら色々な映画祭で評価されて、本当にうれしい限りです。
 この高崎映画祭も本当に映画を愛する方たちが立ち上げた映画祭で、こういう方たちに支持されることはとても光栄です。本当にありがとうございます。
 
●「葛城事件」赤堀雅秋監督
 ぼくも、のんちゃんに会えるというので飛んできました。監督、脚本をやらせていただきましたが、脚本を書くのが遅くて、本当にクランクインできるのか綱渡りのような状態で進んでいきました。主演の葛城清の役は三浦友和さんしかありえない、もし三浦さんに断られたら、この映画自身が飛んでしまうという覚悟でお会いしました。快諾していただいて、その時点で映画が成立したと思います。賞を取るために映画を撮っているのではありませんが、いろいろな映画祭に評価していただけました。葛城事件という映画は、三浦さんそのものでもあります。僕自身は賞をいただけませんでしたが、僕自身が受賞したという思いです。
 
●最優秀主演女優賞 筒井真理子さん「淵に立つ」
 映画を愛する方々によってつくられた高崎映画祭で賞をいただけることがとてもうれしいです。心からうれしく思っています。以前から、高崎映画祭は、いつまでも忘れたくないような映画に光を当ててくださると思っていました。今回は作品賞もいただき、皆で祝えることが何よりの喜びです。深田監督の才能とスタッフの方々の努力と、まさに役を生きた浅田忠信さん、古舘寛治さんのすばらしいパフォーマンスがあったから、私も安心して身をまかせて、そこにいることができました。
 最優秀助演女優賞をリリィさんがお取りになったと聞いて、いっしょにこの会場に来られるのだなと思って、とてもうれしかったです。
リリィさんと同じ高崎映画祭の賞をいただけたことを本当に光栄と思っています。リリィさんのようなステキな女優になれるように精進してまいります。本当にありがとうございました。
 
●最優秀監督賞 中野量太監督「湯を沸かすほどの熱い愛」
 今、プレゼンターの宇津木妙子さんに3回見ましたと言われ、とても光栄です。監督の仕事って何だろうなと考えることがあります。ぼくにとって、これが商業デビュー作でした。名もないぼくの商業デビュー作です。
 今回、必死にやるしかありませんでした。真摯に、うそをつかずに、ズルをせずに、一生懸命やることしかできませんでした。そうしたら周りがぼくを応援してくれ、監督のやりたいことをやらせてやろう、と周りがぼくを引い上げてくれたような気がします。指示するのが監督の仕事ではなく、こいつのためなら何とかやってやろう、こいつの夢を実現させてやろうという存在でいることが監督の仕事なのかなと、ぼくは思いました。今回、一緒に受賞した宮沢りえさん、杉咲花さんと伊東蒼さんは本当にぼくを引き上げてくれたと思います。花と蒼、ありがとね。この二人は最強の姉妹だと思います。
 「湯を沸かすほどの熱い愛」にリリィさんに出演してもらいました。リリィさん、本当にありがとう。
 
●最優秀監督賞 森義隆監督「聖の青春」
 めちゃくちゃうれしいです。「聖の青春」は企画を立ち上げたのが29歳の時で、村山聖が亡くなった年齢と同じ時でした。実現に時間がかかり、撮影できるまで7年をかけました。時間をかけただけあって、自分の中でも死生観が変わったり、村山聖を多面的に、自分が思う村山聖を映画に込められたと手応えがありました。賞を取るのではないかと思っていて、松山ケンイチ君がもらい、東出昌太君がもらい、脚本賞、録音賞をもらい、あれ、「おれは」って思っていました。高崎映画祭に賞をいただきました。片淵監督、中野監督と同じ場所で受賞でき、ありがとうございました。
 
●最優秀作品賞 深田晃司監督「淵に立つ」
「淵に立つ」という映画が、市民の皆さんが運営するあたたかい映画祭で作品賞、主演女優賞をいただけたことは光栄でうれしく思っています。2006年に最初に脚本を作ってから10年かけてようやく完成した作品です。映画は一人ではつくれません。多くのスタッフに押上られて作れるものだと思っています。この映画に関わってくれた皆さんに感謝したいと思います。
 私は出不精で、普段は旅をしません。映画をつくると、映画が連れて行ってくれて色々な国を旅してきます。「淵に立つ」も監督孝行で、色々な国に連れていってくれました。1月にフランスでの公開が始まり、上映に立ち会ってきました。海外に行くと気づくことが多くあります。私たちは不平等の中に生きていると思うことがあり、その一つは、東京に生まれるか、地方に生まれるかで、どれだけ映画を観られるか、変わってしまう。高崎映画祭のような映画祭が地方の映画文化を支えている。地方の映画文化の多様性を支える、ものすごい大きな役割を果たしていると思っています。こうした映画祭、ミニシアターが映画文化に果たしている役割は、ものすごく大きい。
 この映画祭に、次の作品、次の次の作品でもいいから戻ってきたいと思っています。ありがとうございました。

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