進化と深化で新しい高崎を創る 新春鼎談2017
(2017年01月20日)
人・モノ・情報が高崎に集積
(右)高崎商工会議所会頭 原浩一郎 (中央)高崎市長 富岡賢治 (左)日本銀行前橋支店長 神山一成
「商工たかさき」 2017/1号より
都市の魅力は集積! 高崎に一極集中
■富岡賢治市長:
あけましておめでとうございます。今年も高崎がもっともっと元気になるように市民の皆様と協力してがんばっていきたいと思います。
■原浩一郎会頭:
あけましておめでとうございます。村上鬼城の句に「元旦や赤城榛名の峰明り」という句があります。「峰明り」のように今年が明るい年になるようにがんばって参りたいと思います。
■神山一成支店長:
あけましておめでとうございます。昨年は国際金融市場に大きな風が吹き回した一年でした。世界景気はいい動きになっていますので、この流れにしっかり乗り、今年はいい年にしたいと思います。
■富岡市長:
地方都市では一般的には、中心商店街の通行量が減少しています。しかし、高崎市では、まちなか通行量調査を2年に一度実施していますが、戦後、一貫して減少してきた通行量が増加に転じています。
■原会頭:
通行量の調査結果はうれしい話です。前回調査の平成26年に比べて20.8%増えています。4年前と比べると33.6%の増加です。こういう都市は群馬県にはないでしょう。高チャリ、オープンカフェなど、様々な施策が効果を上げているのではないでしょうか。
■富岡市長:
地方都市というと、まちなかを人が歩いていない、商店街のシャッターが降りているというイメージがあるかもしれませんが、高崎は違う。そういうまちにはしないと私は固い決意でやっています。高崎駅周辺の飲食店に聞きましたら、売上が伸びており、通行量の増加が売上にも好影響しています。うれしいことです。
■神山支店長:
高崎に人が集まっていることは、他の市町村からは、本当にうらやましく見えると思います。都市の魅力は集積であり、高崎に一極集中することによって色々な効果が生まれてきます。周辺の市町村にとってもありがたいことが、これから生じてくると思います。
会議所提案で中小企業が主役の施策
■富岡市長:
高崎は一社の企業城下町ではなくバランスのとれたまちとして発展しています。高崎では98%が中小企業や零細、働いている人の8割が中小零細に勤めています。
■原会頭:
中小企業に光が当たらない限り、経済が明るくなったということにはなりません。地方創生と言いますが、地方創生イコール中小企業の活性化に置き換えてもいいのではないでしょうか。
■神山支店長:
群馬県全体の景気は他県に比べてしっかりとした状態にあると見ています。リーマンショック後、経済活動が激しく落ち込み、戻っていない地域が多い中で、高崎を含め、群馬県の経済活動はしっかりと、リーマンショック前の状態を上回っているようです。しかし景況感は、まだ非常にいいということにはなっていません。
■富岡市長:
中小企業に仕事が回り、雇用が確保されるためにはどうしたらいいか、市長に就任後、経営者の方々に聞いて回りました。住宅や商店のリニューアル補助金は、そうした経営者の声で創設しました。地元が潤う手法を取り入れ好評です。
■原会頭:
小口資金融資制度の信用保証料の全額補助制度は商工会議所がお願いしました。資金繰りが大変な経営者がお金を借りるのに、保証料を負担しなければならないのはおかしいと前から考えていたのです。市長に話の半分くらいは聞いてもらえるかなと思っていたら保証料が全額補助になって、融資利用者が大幅に増えました。
■富岡市長:
私は商売の経験がないので、信用保証料がいくらなのか知りませんでした。原会頭に言われ、そうかと思って、それならインパクトのある施策にしようと全部市が負担することにしました。また若い起業家はお金がありませんから、融資の利子を5年間高崎市が負担する制度も創設しました。若者にチャンスをと口で言いますけれど、端的な手法を示さないとダメなので、商工会議所と力を合わせていきたいです。
販路・顧客の開拓と推進
■原会頭:
高崎の中小企業8千社を対象に高崎商工会議所がアンケートを行いました。困っていること、力を入れていくところを聞きましたら、意外な結果になりました。1番の課題は資金調達と思っていたら、資金の問題は3番目。課題の1番は自社製品の販売先、顧客の開拓・拡大でした。2番目が人材の育成・調達。高崎商工会議所は、その結果を受け、富岡市長に協力をいただき、販路の拡大として、物産展・商談会を東京駅、新宿駅、船橋のショッピングモールで開催しました。年々、来場者が増えて良い傾向です。
■神山支店長:
人口減少によって地域の人口が減っていくことを考えますと、原会頭のお話のように販路を開拓し、外に出て行かなければいけない状況だと思います。
■富岡市長:
販路開拓の経営者ニーズは、私の心にも強く響き、東京の丸ビルなどで高崎のシティプロモーションを4年間行ってきました。原会頭に力添えを頂き、東京商工会議所では、高崎が有名になりました。更に外国にもアピールしようとシンガポールや東欧で高崎のものづくりを紹介し大きな反響を得ています。
■原会頭:
国、県、市の中小企業政策、振興策は、これまでにないほどきめ細かくやっていただいていますが、その情報がなかなか隅々まで届いていないのです。多くの事業所に使ってもらえるよう、会員企業に制度を紹介し、説明していくことが会議所の仕事であり力を入れていきたいと思っています。
■神山支店長:
補助金など色々な制度が拡充されていますが、余りにも拡充されすぎて、全てを把握するのが大変です。金融機関がプロとして、制度の利用をアドバイスできると思っています。金融機関の力をぜひ、生かしていただきたいです。地域の金融機関は、地域のことを良く知っています。全国的なネットワークもあり、しっかりしたサポートが可能です。
群馬の経済を牽引する高崎
■富岡市長:
高崎市は戦後、交通拠点都市として発展してきました。しかし、待っていれば、自然に高崎が元気になるとは思っていません。高崎でできることは何でもやろう、できるだけ早くやろうという決意で市長の職をつとめています。手立てを尽くして、やることをやれば高崎の経済は確実に活性化すると私は思っています。その流れをみんなで協力して引き続きやっていきたい。
■神山支店長:
成熟した先進国である我が国において、政府が経済の方向性を決めてしまうというのは無理があります。地域ごとに成長の方向性を考え、地方創生の動きになっていることには必然性があると考えています。
■富岡市長:
地方は地方で、自分のまちはこうしていこうという方向を持つことが重要だと私も思っています。
■神山支店長:
ぜひ、県経済を引っ張っていただきたいと思います。
子育て支援が都市力を強くする
■神山支店長:
私は一昨年5月に家族とともに赴任し、7月に次男が生まれ、その際に一週間育児休暇をとりました。我々のような転勤者は、近くに頼れる人がいませんので、男性の育児参加は絶対必要です。
高崎には子どもOKのカフェがたくさんあります。子どもを広いスペースで遊ばせておいて、自分たちはゆったりとした時間を過ごしています。そこで出会うお母さんたち、お父さんたちから高崎市の子育て支援策が充実していると伺っています。最近、妻から、私が東京に転勤になったら、高崎に家を借りて新幹線通勤したらと言われます。
■富岡市長:
大変うれしい話です。ぜひ実現してください。私が市長になった時、数字上は待機児ゼロでしたが、実際にはお母さん方は、保育所に入れるためにとても苦労していたのです。例えば倉渕の保育所に空きがあっても旧市内のお母さんが子どもを預けて出勤することはありえません。本当の意味で待機児童ゼロにしようと取り組み、実現しました。
■神山支店長:
待機児童数をどのようにカウントするか、ようやく全国で議論になっています。そこに早くから問題を感じられて対応されてきている。子育て対策は、細かいところまで見て、初めて現実の対応ができるので、本当にありがたく思います。
■富岡市長:
女性が社会進出することは当たり前のことです。仕事だけではなく、買い物をゆっくりしたり、コンサートを聴いたり、ボランティア、地域活動に参加したりするには、赤ちゃんを抱えてはできないから、対策をきちんとしないといけません。子育てと仕事を両立させるため、ワンストップ相談サービスの「子育てなんでもセンター」を4月に開設します。少子化対策の基本は経済対策です。仕事が安定しなければ、結婚も子どもを産む気にもなりませんから。
人口減少・人手不足に対応
■神山支店長:
女性、高齢者の活用ということと併せて、設備投資による生産性向上をはかるなど、人手不足への対応を、この機にしっかりと図っていかなければいけないだろうと思います。世の中、不確実なことがたくさんありますが、人手不足は確実なものですから、機を逃さずに対応していくことが望まれます。その際にも金融機関はしっかりとサポートさせていただけると思っています。
人口流出で若手が少なく、人手を確保できない。経済活動は順調で事業を拡大したいのに、対応する人材がいなくて縮小せざるをえない企業も、ここにきてかなり目立っています。
■原会頭:
日本中が人口減少の問題を抱えていますが、高崎の人口は維持され、更に定住人口の増加が見込まれています。本社は東京にあって高崎に支店、支社を持っている会社がたくさんあります。今年は高崎に赴任している支店長さん、支社長さんに声をかけて、集まりを持ちたいと考えています。高崎をもっと良く知ってもらうことも必要ですし、高崎で定年になった人は、そのまま高崎に住み続けてもらえるようにしていきたいです。
■富岡市長:
若い人に胸を張ってものづくりに入ってほしい。高崎のものづくりの技術、技能のすごさを示していけば、若い人に将来をかけてもらえるようになるでしょう。時間はかかりますが、やっていく価値はあると思います。
高崎の都市力が全国ランクに
■富岡市長:
高崎は全国ランキングでいい数字が出るようになってきました。卸小売業の都市別ランキングで高崎は14位、中核市では第1位、20市ある政令市を含めても真ん中ですごいことです。全国2万人の働く人たちが選んだ活力のあるまちとして高崎が全国約800の都市の中で29位、幸福度ランキングで中核市の47市の中で3位です。
■原会頭:
幸福度ランキングは、健康、文化、生活、仕事、教育などの項目を評価したもので、1位が豊田市、2位が長野市、3位が高崎です。文化度を見ますと高崎は第2位です。高崎商工会議所は商工だけでなく、農、観光、文化、スポーツも幅広く考えています。高崎市の力を自分たちで感じるだけでなく、客観的な統計に表れてきたので、うれしいですね。
■神山支店長:
地域が競わされる時代の中での地方創生ということです。一様に人口が減っていくということではなくて、大きく減るところもあれば、減らないところもある、増えていくところもある。高崎市が増えていく都市に入っていくのだろうとしっかりと感じとりました。
■富岡市長:
まちが発展するためには、ビジネスだけではなく、色々なものが組み合わさらないとまちが発展しません。高崎商工会議所は文化やスポーツ活動にも力を入れています。
バランスのとれた発展のために貴重な役割を果たしています。高崎農工商文化スポーツ会議所と原会頭は話していますが、正しい考え方だと思います。人が集まるためにはビジネスプラス、文化やスポーツ。福祉や子育て、環境、衛生、保健・医療が組み合わさらないとまちは発展しないと私は思います。
■神山支店長:
富岡市長、原会頭からお話しがありました通り、高崎市には群馬県における経済、経済だけではなくて、文化、スポーツの中心として、既に集積があり、その積み重ねを更に積み重ねていくという明確な方向性を持っておられます。今年もその動きがたくさんあるということで、大変心強く感じています。
群馬ナンバーワンの一歩先を行く元気な都市高崎
■原会頭:
高崎は群馬県のナンバーワン都市だと思います。高崎駅周辺の集客施設と高崎スマートIC産業団地の整備は、一体的な都市戦略として市長も力を入れておられます。今年の秋にオープンする高崎オーパは集客力があり、高崎駅周辺だけでなく中心市街地に誘導するために、会議所の役割も大きいと思います。数年前から考えていることですが、今年も「進化と深化」をキーワードにしていきたいと思います。進化は変身していくこと、深化は一つのことを掘り下げ、そこから新しい芽をみつけていくことです。
■神山支店長:
今年は景気回復の動きが、しっかりとしてくる年だと考えていますが、個々の経済主体である企業や家計の前向きな経済活動により、景気回復が実現します。今年も市長、会頭の強力なリーダーシップのもと、一歩前を行く高崎市の姿を期待しています。
■富岡市長:
今年は神山支店長から一層のご指導をいただきたいです。原会頭のご協力で、高崎は市役所と商工会議所がとてもうまくいっていると全国から言われています。くすんだ地方都市ではなく、元気のある高崎を見てもらいたいという気持ちでいっぱいです。
(商工たかさき・平成29年1月号)