36.高崎新風土記「私の心の風景」

雪山遠望

吉永哲郎

 晴れた冬の朝、市街地のビルの谷間から雪山の姿が見え、目の錯覚でしょうか、その山容が大きく感じます。郊外にでますとこの雪山は谷川連峰であることを知り、そのほかに浅間山、白根山、武尊山などの白い山も見えます。この雪山を眺めていますと、「雪よ 岩よ われらが宿り おれたちゃ 町には住めないからに」と口ずさんでしまいます。『雪山讃歌』の冒頭ですが、作詞者は初代南極越冬隊長西堀栄三郎で、鹿沢温泉で作られた歌です。「町に住めない」という詩句を批判する人もいますが、山を愛する者の愛唱歌であることに違いないと思います。
 山の愛唱歌といえば「娘さんよく聞けよ 山男にゃ惚れるなよ 山で吹かれりゃよ 若後家さんだよ」という『山男の歌』があります。この頃はこうした仲間とともに歌う姿を見かけなくなりました。時代といえば時代なのでしょうか。
 さて雪山を遠望していますと、もう一つ「おれとおまえはザイルで結ばれた 若い仲間さ 励ましあって雪渓のぼれば 向こうの尾根で山の女神が手を振るぜ」という『ベルク・ハイル』の一節が口をついてでてきます。作詞者は北アルプスの雪山を愛し、信州安曇野に憧れていた牧いづみ、作曲は梅山五郎です。二人とも親しい友人でした。ともに群馬の高校の教師でした。
 今はふたりとも安曇野の風になってしまいました。「ベルク・ハイル」とは登山用語で「山よ 万歳!」という意味です。

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