49.高崎新風土記「私の心の風景」
春告げ鳥
吉永哲郎
「春告げ鳥」とは、「うぐいす」のことで、高崎市の市の鳥です。以前は旧市内でも鳴き声をよく聞くことができましたが、高層ビルが林立する市街地になってからは、耳にすることは難しくなりました。それでもと思い、春になりますと、鳴き声をもとめて郊外へでかけます。
この鳴き声を求めるのは、日本人ならではと思います。万葉集に「春さればまづ鳴く鳥のうぐひすの言先立ちし君をし待たむ」(春になると、まずはじめに鳴くうぐいすのように、一番はじめに私に言葉をかけたあなたを、私は待ちましょう)という歌があります。この歌からうぐいすは、春一番に鳴く春告げ鳥として、万葉人に親しまれていたのです。
日本の南西諸島の与論島方言に「ウグヒ・ウグヰ」という古い語があります。よくさえずるものという意味で、鳥をさす語です。転じて上手く歌をうたう人という意味にもなります。また、うぐいすの「ス」は、「カラス・ホトトギス・カケス」の「ス」と同じ鳥を表す語です。「うぐひす」は美しい鳴き声でさえずる鳥という意味になります。ロマンを感じさせる鳥の名です。
さて、春は希望にあふれる季節ですが、その反面、大伴家持の「春の野に霞たなびきうら悲しこの夕かげにうぐひす鳴くも」の歌のように、春愁の気特が心の隅に巣くう時でもあります。例年、私は、春の到来のきざしと、春告げ鳥の鳴き声を求めて、観音山のひびき橋に行きます。もしかして待っている人がいるかと・・・。
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