109.高崎新風土記「私の心の風景」

タンポポの花

吉永哲郎

 春の散歩の楽しみは、様々な花が見られることです。私は道端や野原に点々と咲く、小さな草花に惹かれ、とりわけ花の名が気になるタンポポに目を奪われます。
 秋になると帰化種のセイタカアワダチソウの繁殖力の旺盛さに驚きますが、この旺盛な現象は春のタンポポにもうかがわれ、帰化種が在来種を圧倒しているといわれています。この二つの種を区別するには、花を支える萼(がく)の外側にある突起が、まっすぐなのが在来種、反りかえっていれば帰化種です。在来種の象徴的なのはシロタンポポで、四国や南九州ではこの種だけしかないところがあります。黄花タンポポだけが目につくために、タンポポといえば黄色と長い間にすりこまれてしまったようです。
 タンポポは漢字では「蒲公英」と書きますが、中国の『本草書』からの引用だといわれています。英国ではタンポポの葉のギザギザから連想して「ライオンの歯」、フランスでは葉が利尿剤として用いられることから「ピッサンリ(寝台に小便をする)」といいます。
 日本では「鼓草」と別名があるように「タンポポ」とは鼓を打つ音で、狂言『磁石』に「たんほほ・ふりつづみ」と、小さい現具の鼓を表す語があります。タンポポの咲く野道を歩きながら、タンポポの物語をあれこれ思います。
 私の人間回復の大切な時間です。

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