ビジネスパーソンにお薦めするこの1本 82

ラヂオの時間

志尾 睦子

1997年 1時間43分
監督:三谷幸喜 
出演:唐沢寿明/鈴木京香/西村雅彦

諦めない限り、希望は掴める

 ここ数年の劇的な変化を経ての、新しい年。色々な意味での我慢を経験した時間を振り返りながら、新しいスタイルでの生き方をさらに模索し充実させていきたいなと思っています。全ての人が生きやすく、豊かな人生を過ごせる社会にするために、平和と祈りを込めて生きることを諦めない。それでこそ、新しい時代は作られていくのだろうと思う年の初めを迎えています。
 さて、新春にご紹介するのは、そこまで地球規模の大きなことではないですが、一つの目的を明確に思い描いていれば、紆余曲折を経ても新しい扉がきっと開かれる、そう思わせてくれる面白くてハッピーな作品です。
 舞台はあるラジオ局のスタジオです。時刻は夜10時を回ったところ。0時から始まるラジオドラマ生放送のため、リハーサルが行われています。初めて書いたシナリオが採用された新人脚本家・鈴木みやこは、本番に向けて意気込んでいました。リハーサルも順調、に思えたものの、主人公・律子を演じる千本のっこが、突然名前が気に食わないから変えて欲しいと言い出します。プロデューサー以下、説得を図るもののうまくいかず、名前を変えることに。なぜか、パチンコ屋で働いていた律子は、ニューヨークの女弁護士メアリー・ジェーンになっていました。渋々その変更を了承したみやこでしたが、気づけばベテランの脚本家が呼ばれていて、物語の設定も大きく変更されてしまうのでした。刻一刻と放送開始時間が迫る中、マシンガンの音でスタートする物語になったものの、肝心のマシンガンは、急すぎて効果音が手配できないと分かり現場は大騒ぎに。
 そんな中、生放送は始まってしまうのです。皆で知恵を絞り出し、守衛さんがかつて効果音のスタッフだったことを聞きつけたディレクター・工藤は生放送中のスタジオを飛び出し、守衛さんに協力を仰ぎます。なんとかマシンガンの音を再現させることができたものの、これは迷宮入りの序の口で、次から次へと難題が降りかかってくるのです。何せ主人公の設定が変わってしまったのですから、のちに続く展開も辻褄を合わせるためにどんどん変わってしまいます。いったいこの放送はどうなってしまうのか……。
 信念を持って仕事をするためには、信頼と勇気が必要であることも見えてきます。はちゃめちゃな出来事の連続ながら、無事に生放送を終えるという目的のため、それぞれが最大出力の仕事をする。そこにプロフェッショナルの真髄が見えました。

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。

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