うずらの卵ビジネスが拡大中
(2021年09月29日)
高崎クエイル
うずらの卵生産で全国2位のシェア
うずらは英語で“quail”。有限会社高崎クエイルは、うずらの卵の生産、その加工品の製造・販売を行う企業だ。全国のうずらの飼育数は約350万羽、高崎クエイルではそのうち55万羽を占めており、生産量は全国ナンバー2の企業だ。生産される卵の7割を加工メーカーに供給し、残りを3割が小売店に出荷する。
「スーパーで一般消費者向けに販売される、うずらの卵の約20%が高崎産です。関東以北で大規模にうずらを飼育している農家はほかにはなく、東日本でのシェアは当社がトップです」と、代表取締役の串田幹雄さんは話す。
うずら飼育に新技術を次々と導入
同社がここまでビジネスを拡大できた大きな理由は、うずら業界に鶏卵業の技術や手法を次々と持ち込んだからだという。「高崎クエイルの前身は1952年設立の串田養鶏場です。以来40年近くは養鶏を中心に営業し、1991年にうずらを専門にする高崎クエイルとして再スタートしました」と串田社長。
鶏卵の市場規模は年間4,800億円。一方のうずらの卵は約70億円と大きな差があり、鶏卵業の方が飼育技術で進んでいる点も多い。「農場は高崎、赤城、倉渕の三か所に分散しています。伝染病などでうずらが一度に全滅したり、自社農場ではなく近隣農場で疫病が発生した場合に出荷制限の地域に含まれ、すべての出荷が止まってしまうリスクの軽減が目的です。各農場は約30㎞以上離しています」。
さらに、オールイン・オールアウト方式と呼ばれる飼育方法を採用。これはうずら舎のなかの、うずらをすべて一度外に出して、清掃・消毒を行い、衛生管理を徹底し、病気の発生などのリスクを抑える方法だ。「業界後発でありながら、ナンバー2の位置にあるのは、こうした業界初の試みを続けてきたからです。現在も養鶏業界の技術のリサーチを欠かしません」。と串田社長は話す。
また、同社はふ化から飼育・採卵、商品化まで一貫生産体制を整えている。さらに、全国で7名ほどしかいない、うずらの雄雌鑑別士が社内に2名在籍している。うずら農家は全国に26軒しかなく、その多くが小規模農家だ。スーパーや、焼き鳥店、中華料理店で当たり前のようにうずらの卵が並んでいるのは、高崎クエイルの存在が大きい。
うずらの卵を使ったプリンを直営店で販売
高崎クエイルは、産みたてのうずらの卵とスイーツのお店「う玉屋」を高崎駒形線沿いに2020年にオープンさせた。きっかけは、一般の人たちにとって、うずらの卵をもっと親しみのあるものにしたい、という思いからだ。「日本人のうずらの卵の消費量は年間約13個程度で、鶏卵は約360個。まだまだ伸びる余地はあると思います」と串田さん。
商品ラインアップは、プリン、カステラ、チーズケーキ、ジェラートなど。特に濃厚な味わいのプリンは人気が高い。
ショップを始めるにあたり、同社は高崎市の6次産業化等推進事業補助金を活用している。「まったく未知の分野なので、なかなか思い切れないところを、補助金に後押ししてもらいました」。
創業以来、B to Bビジネスを続けてきた高崎クエイル。B to Cビジネスに参入以来、様々な気づきがあったそうだ。「お店では生のうずらの卵も販売しています。お客様から食べ方についてよく質問を頂きます。正直、ここまでうずらの卵が食卓に浸透していないとは、思ってもみませんでした」と串田さんは話す。
コラボ商品も続々開発中。広がるうずらビジネス
現在、下仁田町の玉こんにゃくの中にうずらの卵を入れたコラボレーション商品や、一粒100円のスペシャル卵などのオリジナル商品を開発中だ。「このスペシャル卵はエサにとことんこだわり、濃厚さが段違いです。私が一番おいしいと思う、卵かけごはんで、ぜひ味わってほしい。近いうちに発売予定です」。
また、県内の回転ずしチェーンの軍艦巻きにも採用されるようになり、活用される場所が徐々に広がっている。
「こういった協業の話を頂くようになったのも、お店をオープンしてからです。これまでは、生卵の販売が主でしたが、加工品や他社とのコラボに意欲的な企業だと認知されはじめています」。
以前は頼まれた数を作れば、卵は必ず売れる、という意識がどこかにあったという串田さん。「直接お客様に販売するようになると、どうやったら喜んでもらえるか、という視点で試行錯誤するようになりました」と話す。日本の食文化のなかで、うずらの卵が存在感を増す日が近いのかもしれない。
有限会社高崎クエイル
代表取締役社長 串田 幹雄さん
高崎市新保町388
TEL:027-373-5590
高崎商工会議所「商工たかさき」2021年5月号