高崎うなぎビッグ3
(2021年07月31日)
うなぎを食べに街に出よう!
江戸時代からみんな大好きうなぎの蒲焼
店先を歩くと漂ってくる、うなぎの蒲焼を焼く香り。この甘く香ばしい匂いに江戸時代の人々も夢中で、安永2年(1773)の小咄本「坐笑産」にはこんな小咄が載っている。
『鰻屋の前を毎日通るたびに、「さてもうまい匂いじや」と、嗅いで通りければ、大晦日に、鰻屋から呼び込み。「毎日の嗅せ代、六百文でござる」「それは安いものでござる」と、ふところより六百文投げ出し、「これ、この音を聞き給え」』と、なかなかに洒落がきいている。
蒲焼を焼く香りは、蒲焼店にとって有効なセールスプロモーションであり、往来に面した1階を仕事場にして、2階を客間にする店舗が多かったという。文政10年(1827)の書物には、高崎の南町にあるうなぎ蒲焼店の紹介がされている。また本稿で取り上げる魚仲は明治14年(1881)に田町で創業した。高崎のまちなかでも、江戸時代からずっと蒲焼の甘い香りが漂っていたのだろう。今も高崎市民の食欲を刺激するお店を訪ねてみた。
魚仲 140年間継ぎ足した秘伝のタレ
元禄三年(1690)に田町に開設された高崎絹市場。明治14年にその絹市場内でスタートした魚仲は創業140年を超える高崎最古のうなぎ料理店だ。創業当初はフナやコイ、アユといった川魚を扱う昼飯屋で、当時から蒲焼を提供していた。明治20年には、九蔵町にある今の場所に移り、割烹料理を中心にした今のスタイルになった。
タレは創業当時からの継ぎ足しで、切り落としたうなぎの頭や骨なども入れて作る秘伝のタレだ。辛めの味付けで、うなぎ本来のうまみが引き立つ。うなぎはニホンウナギのみを使用している。さっぱりとした脂の質や、焼いた後の美しさを考えた上でのこだわりだ。写真は特選うな重、うなぎ1.5匹を贅沢に使った一品だ。
コース料理もあり、白焼き、蒲焼、肝焼きと、うなぎをさらに堪能できる。白焼きはわさび醤油で、刺身感覚であっさりと食べることができるので、蒲焼はちょっと胃に重たい、という方にもぴったりだ。140年前の高崎の人たちも舌鼓を打った一品をぜひ味わってほしい。
魚仲
高崎市九蔵町17
Tel.027-322-2428
暢神荘 優しい味わいのひと時を
椿町に静かに佇む暢神荘。家一軒が建つほどの広い日本庭園を擁する高崎を代表する料亭だ。
蒲焼は、身はやわらかく外側はサクッと香ばしく、甘めのタレで、だれもが美味しく食べられる。ウナギはすべて浜名湖から取り寄せている。また、お米は粒たちがよく、タレが染みてもスッキリ食べることができる。湯葉入りの肝吸いにはフレッシュな三つ葉も入り、口にすると食欲がわいてくる。写真のうな重膳のほかにも、半うな重と料理4品、お吸い物、香の物とセットになるうな重懐石膳がある。色々な味を楽しみたい方には、こちらがおススメだ。
暢神荘は、もともと高崎の素封家、須藤清七氏の別荘として明治33年(1900)に建てられた。有栖川宮が宿泊した際、「暢神」の2文字を書いた扁額を贈られた。「暢」は「のどかなる、のびのびする」という意味で、神様ものんびりしてしまう屋敷が暢神荘という訳だ。庭園の姿は建設当初からほぼ、変わっていないという。由緒ある庭を見ながら、うなぎをゆるりと楽しむ時間を過ごしてほしい。
暢神荘
高崎市椿町33
Tel.027-322-4511
さんぷく ひょいと立ち寄れる愛される味
高崎神社の入口向かいに店を構える、うなぎ処・割烹料理 さんぷく。カウンター席も備えた店内は、ふらりと立ち寄りやすい親密さあふれる空間だ。取材中もご近所さんや親子連れ、サラリーマンなど、色々な方が次々と入店する。
カウンターに座ると、うなぎの脂とタレが混ざり合った香ばしいにおいが漂ってきて、期待がどんどん高まってくる。
うな重は甘みを抑えた、辛めの味付けで、身はふっくらやわらかい。一緒に頂いた肝焼きは、コリコリとした触感で味付けは少し甘めで、肝の苦みとのハーモニーがたまらない。お酒が進む一品だ。
さんぷくは、川魚問屋業も営み、愛知県と三重県産のうなぎを問屋ならではのお値打ち価格で提供している。
毎年土用の丑の日は、2階の店舗は閉め、普段は駐車場として使っている1階の屋外スペースで、蒲焼を豪快に焼く。この試みは例年大人気で1000人前近くのうな重を売り上げる。7月28日のゑびす通りには、香ばしくも甘い蒲焼の匂いが充満するだろう、ぜひ足を運んでみてほしい。
ここまで3店舗を紹介してきたが、どの店舗もうな重のお弁当を扱っている。こちらもぜひ利用してほしい。まだまだ続く暑い夏、うなぎを食べて精をつけてはいかがだろうか。
さんぷく
高崎市嘉多町1
Tel.027-322-2920
高崎商工会議所「商工たかさき」2021年7月号